はじめに
「生物の構造と機能」に関する内容の中でも、授業が盛り上がる単元である。本単元で児童たちは自分自身の体を教材として、普段は意識しない体が動くしくみについて探求する。筋肉や骨、関節という言葉を使いながら、関節が曲がるしくみを説明できるようにしたい。
本単元で身に付けたい資質・能力
人や他の動物について、骨や筋肉のつくりと働きに着目し、関係付けて調べる活動を通して次のことを身に付けられるようにする。
- 次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。
- 人の体には骨と筋肉があること。
- 人が体を動かすことができるのは、骨、筋肉の働きによること。
- 既習の内容や生活経験を基に、人や他の動物の骨や筋肉のつくりと働きについて、根拠のある予想や仮説を発想し、表現すること。
単元の評価基準
知識・技能
- 人の体には骨と筋肉があることを理解している。
- 人が体を動かすことができるのは、骨、筋肉の働きによることを理解している。
- 観察、実験などに関する技能を身に付けている。
思考・判断・表現
- 既習の内容や生活経験を基に、人や他の動物の骨や筋肉のつくりと働きについて、根拠のある予想や仮説を発想し、表現している。
主体的に学習に取り組む態度
- 人の体のつくりと運動についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。そこで学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
本単元の難しさ
- 体が動くしくみの説明
「何を、どうする」と「何が、どうなる」という因果関係をていねいに言葉にしていく必要がある。児童はつい主語を省略したり、学んだ言葉を使わなかったりすることがある。例えば「うでを曲げると、腕の内側の筋肉が縮んで外側の筋肉がゆるむ」といったように、分かりやすく言えるように助言したり、ノートにまとめさせたりしていく。
- 骨と筋肉の関係
児童に関節が曲がるしくみを考えさせるとおもしろい。関節の両側の骨同士がつながっていたら関節は曲がらないはずだが、骨がつながっていると考える児童がほとんどである。レントゲン写真を観察したり、骨のどこに筋肉がついていたら曲げられるかを考えたりすることで、動かすために便利なつくりになっていることを実感させたい。
単元開始までの準備
- 人体模型を探しておく
理科準備室には骨格模型だけではなく、本単元のために関節が曲がるしくみを説明するための模型が購入してある学校も多い。本単元でしか使わないのであまり存在感はないが、使うと便利なので探しておきたい。
単元の展開【全6時】
第1次 うでが動くしくみ
第1時 うではどのようにして物を持ち上げているのだろうか。
- 重い物を持ち上げている腕がどのようになっているか観察する。
- 腕が曲がるときには、何が動いているのか調べる。
- 腕の中がどうなっているのか知りたいという思いから、次時の問題をつくる。
※ダンベルなどを用意して持ち上げてみせたり、数名の児童に持ち上げてもらったりして腕の様子を観察する。
第2時 うでの中はどうなっているのだろうか。
- 自分の腕を観察しながら、腕の中がどのようになっているか予想する。
- レントゲン写真を観察して、骨のつくりを調べる。
- 筋肉がどのようにして関節を曲げているのか分からないことから、次時の問題をつくる。
第3時 関節はどのようにして曲がるのだろうか。
- 筋肉がどのように動いたら腕が曲がるのか予想する。
- 模型を使って、筋肉が関節を曲げるしくみを調べる。
- 関節が曲がるしくみについてまとめる。
- 関節は腕だけではなく全身にあることに気付かせ、次時の問題をつくる。
第2次 からだ全体のつくりと動き
第4時 全身が動くしくみを考えよう。
- 自分たちが動くのは全身に関節があるからだという気づきから、全身の関節を調べる活動をする。
- 関節がどこにあるか調べることを通して、関節が全身にあることはもちろん、細かな動きをする手や足には特に多くの関節があることを確かめる。
- 全身が動くしくみについてまとめる。
- 人間以外もおなじように関節があるか考えることで、次時の問題をつくる。
第5時 人間以外の動物も、同じようなしくみで動いているのだろうか。
- 動物も同じように筋肉と骨があり、関節を曲げて動いているのか予想する。
- 動物の骨格標本などを調べ、関節があることを確かめる。
- 手羽先で鳥の関節の様子を観察し、人間と同じつくりになっていることを確かめる。
- 動物の体のつくりと動き方についてまとめる。
※学校にウサギなどの飼育動物がいれば、体を触って観察するとよい。
※博物館から骨格標本を借りることができればそれを観察するとよい。関節の学習からは離れるかもしれないが、いろいろな動物の骨を比べることで生物の多様性や共通性についての基礎となる考え方を養うことができる。
※手羽先は、関節や筋肉の様子を観察するのにちょうどよい教材となる。児童にさせるのは難しいが、大型テレビに映しながら解剖すると、実際の骨や筋肉の様子がよく分かる。
参考:国立教育政策研究所,”「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する指導資料【小学校 理科】”, p.37, 東洋館出版社, 令和2年, https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/hyouka/r020326_pri_rika.pdf
※授業の流れは、東京書籍の単元構成をもとに筆者がアレンジしたものである。
執筆者プロフィール
Cana
元小学校教諭。学年主任・研修主任などを経験後、家庭の事情で退職。現在も非常勤講師として小学校で授業をしながら教育系Webライターとして活動中。学生時代は理科教育を専門に勉強し、大学院で小学校教諭専修免許を取得。理科では、本物にかかわることや、心を動かす授業にこだわっている。
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