月の満ち欠けを実感する ~楽しい理科実験 vol.3

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月の満ち欠けは難易度が高い

6年生で月の満ち欠けの実験をしました。月に見立てた球に同じ方向から光を当てて、それが地球に見立てた自分からどんな形に見えるのかを確かめます。下の図を見ただけで、地球に見立てている人にとって月がどんな形に見えるのかを想像できる子供は少ないです。

図から考えて地球の視点に立つことはけっこう難しいです。特にD~Fの位置にある月が「右が光っているのか、左で光っているのか」を考えるのは難しいです。小学校の教科書(学習指導要領)はまだ地動説を唱えているわけでもないので、そこはぼやかせながら、月の様子が変化することを分からせればよいのだろうと思います。天体について詳しく深く入り込んでいくと、たいへんな知識や時間が必要になり、苦手な子供が置いてきぼりになります。ただ、実験はやってあげてください。実験をせずに↑の図だけで授業を終わらせると、実感が乏しいため理解が浅くなります。ですから是非、下記の実験をやらせてあげて下さい。 

 実験準備もたいへんだけれど

この実験は準備にけっこう時間もかかります。場所も取ります。でも、一度準備をしてしまえば、次年度からはそのセットを使えばよいだけです。

1. 懐中電灯を使って、暗くした教室でピン球を照らします。これは、教師がデモでやるといいでしょう。月が太陽から半分を照らされて、もう半分は暗闇であることを理解させます。小学校の教科書では詳しく書いていませんが、月は自分から光を放っておらず、太陽に照らされていることを話しておかないと何のことかわからない子供が出てきます。私は惑星(地球)も含めて、太陽に照らされて光っていることを説明しました。ネットにたくさん画像がありますので、惑星の様子や片側が光る地球の様子を見せてあげるといいと思います。

2.半分が暗闇であることを理解できたら、今度は大きめのボールの半分を黒く塗りつぶしたものを用意します。これを教師が持って、教室の外側を教師がぐるっと一周して、見方によっては光っている部分の形が変わることを理解させます。小学校の教科書では月の時点に関して詳しく説明されていませんが、月は地球の周りをまわっていることは話しておかないと理解ができません。


3.今度は半分を黒く塗ったピン球を用意します。班に1個を準備ぐらいでいいと思います。これを見ながら、見方によって月が満月に見えたり半月に見えたりすることを理解させます。


月の大きさを一定にした方が良いかなとも思いましたが、提示の仕方がなかなか難しいです。下記の記事も是非ご参照ください。

地球・月・太陽の関係(大きさの比較・月の満ち欠け) ~楽しい理科実験 vol.4 | EDUPEDIA


4.実際に自分を地球と仮定して、その周りに月を回す実験です。「3」で終わって後は教科書で理解させるという流れもありかと思いますが、それでは想像力のたくましい数%の子供しか理解できません。実際にやってみるのが一番です。

※ 以上のことを理解させた上で、実際に自分の周りで球を自転させる実験をした方がよくわかると思います。

5.暗幕で真っ暗にできる教室があるなら、そこを使うのがベストです。

6.試験管の先に、両面テープで引っ付けたピン球を用意します。

7.太陽に見立てるための光源は教科書では懐中電灯としています。ところが、懐中電灯では光が弱いです。したがって、プロジェクターを使うか、スポットライトを使うのがいいと思います。古いプロジェクターは廃棄せずに残しておくといいですね。プロジェクターやスポットライトは光源がまぶし過ぎるので、光源を見つめないことをくれぐれも指導してください。なんなら、教師が光源の近くにいて、子供が光源の方を向いたら体ごとさえぎるぐらいがいいと思います。スポットライトは体育館にあることが多く、鎖などで固定されていることも多いし、ギャラリーから平場へ降ろすのもたいへんですね・・・。私の勤務校では理科室に1つスポットライトがあったので、利用が楽でした。

8.プロジェクターにしてもスポットライトにしても、一度に体験させることができる人数は、教室なら3人が限界です。プロジェクターを複数台用意すれば、実験できる人数は増えると思います。教室で自習させながら、光源の前の椅子に3人、理科室内に用意した控え椅子に3人、理科室の外に置いた椅子に3人を座らせて回しました。

9.実験している子供たちはゆっくり反時計回りに回転させます。ゆっくり回るように指示してください。なんなら、回転する方向も含めて、回り方を模倣させてもいいです。教師が「今どんな形?」と尋ねると、「三日月になった」「半月になった」「満月だ」と言っています。満月の時に、自分の頭が陰になって月食状態にならないように、光源は子供の頭より高く設置し、子供には試験管についたピン球は頭より上に掲げさせます。

10.理科室内に用意した控えの椅子に座っている子供は、実験している子供たちの様子を見ることができます。この椅子はこの席を「宇宙席」と名付けました。光源と「9」の子供を結ぶ線に対して、直角の位置に宇宙席を設置しておきます(上の写真の子供の後方)。すると、「9」で子供たちが「三日月になった」「半月になった」「満月だ」と言っていても、宇宙席ではすべて半月に見えます。つまり、月が照らされながら自転している状況を俯瞰して見ることができます。

苦労した甲斐があった

準備にも実験にもけっこう時間をとってしまい、負担感がありました。ただ、子供たちにはけっこう好評でした。真っ暗な理科室に光るピン球は少々幻想的でもありましたし。テストで間違う子供も少なかったです。
2クラス以上であれば、協力して準備すればいいですし、準備したものは次年度にとっておいて共有してゆけばいいと思います。物も情報も、共有が大切です。その時にはぜひ、この記事を参考にしてもらうように、次年度の6年生スタッフに申し送りをしてください。

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