地球・月・太陽の関係(大きさの比較・月の満ち欠け) ~楽しい理科実験 vol.4

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目次

地球・月・太陽の関係

理科の中で天体に関する分野は非常に難しく、専門的に学習をした人や天文マニアでない限り小学生に対してでも正確には教えられないと思います。月・地球・太陽の動きだけでもかなり難解です。私自身、分からないことだらけです(中学校で天体を教えた経験はあるのですが・・・)。

小学生にいちいち正確に説明しようとすると話がとても長くなって子供たちが混乱するだけなので、ある程度はざっくりとした話でごまかしながら授業を進めざるを得ません。正確すぎる難しい話より「宇宙は謎に満ちて面白い世界なんだ」ということで興味を持ってもらう方が得策だと思います。

その場で子供たちの「なぜ?」に応えているとたいへんな時間がかかるし、理解させることは無理なので、全授業終了後に、アンケートを集めてまとめて書面で答えました。答えるために色々調べて考えて、たいへんな時間がかかりましたが、自分も勉強になって楽しかったです。分からないことに対しては「ゴメンね、先生もわからないんだ」と、素直に降参しました。

地球・月・太陽のスケール

 小学校では地球・月・太陽のスケールや位置関係、それぞれの動きについて詳しく学ぶ機会はありません。教科書にもそれらは載っていません。例えば、教科書では下の写真で「太陽は月の光っている方向にある」と位置関係についてとても簡単に説明しています。

これ↑↑↑を見るとまるで太陽と月が同じ平面上にあるかのように思えてしまうかもしれません。しかし、三日月なので西の方に沈んだ太陽は本当は三日月のずーーーっと奥の方にあり、そこから三日月を照らしているはずです。

それは地球と月・太陽の距離の違いに由来します。太陽がとてつもなく遠いからですが、上の写真を距離の違いに絡めて説明しても子供たちは混乱するだけだろうから、そこは流せばいい(流すべき)と思います。

いくらかは、流して、いくらかはこだわるように塩梅を考えて教えなければなりません。子供が「ほほー」となるようなトピックを取り上げながら授業を進められるように努めました。

地球・月・太陽の直径・距離・比率は下図を参考にしてください。(いろいろ計算しているうちに自分でもわからなくなってきました。間違いがあったらご指摘ください。)

教師にとって、それぞれ知っておけばいいざっくりした数値です(天体は完全な球体ではないし、軌道も完全な円ではありません)。

 大きさ(直径)をモノで例える

上の表を元に、地球・月・太陽のそれぞれの大きさ(直径)の違いについて、教科書プラスαで教えてみました。細かい数字で表しても6年生には難しいので、あくまでざっくりとモノで例えてみました。

理科準備室にちょうど直径1cmの鉄の球があったので、油粘土で直径2.5mmの月を作りました。地球は美しく青色に塗りました。

学校にあったフラフープで1番大きいのが直径1m弱だったので、これを直径1cmの地球に対する太陽としました(正確ではなく、だいたいで。上の表の値から考えると1m9cmの球があればよかったのですが・・・)。下の写真、定規の所に鉄球の地球と油粘土の月が写っているのが分かりますか?

フラフープは廊下に置いておいて、

「地球がこれ、1cmだとすると、太陽はどれぐらいの大きさになるかな。①ピンポン玉 ②ソフトボール ③ドッジボール」

と、クイズを出すと、①は0人、②が3人ほどで、ほぼ全員が③を選びました。

「全員外れです。正解は・・・」

と言って、隠しておいたフラフープを出してきます(子供たちからはブーイング)。

「だいたい、直径1mのボールになります。こんなに大きなボールはないので、フラフープにしますね。だいたい、こんな大きさです。」 ←←←そんなにきっかりと表現はできないのであくまでだいたいを強調

と話すと、選択肢に正解がなかったことに子供たちはブーイングです()

距離を例える

地球←→月の距離・・・地球の半径の約30
地球←→太陽の距離・・・地球の半径を1cmとすると約117

です。地球を直径1cmの球に例えると、月は30cm離れたところにあることになります。なんだか月は近いようにも思えてきます。

月を針に刺して、30cmの間隔をとって公転させながら、

「月は約30日をかけて、地球の周りを1周しています」

と話すと、子供たちは分かったような分からぬような感じで聞いていました。

「地球と月は、こんな感じね。じゃあ地球がこの大きさ(鉄球)で、太陽がこの大きさ(フラフープ)なら、太陽はどれくらいの距離の場所にあると思う? ①30cm ②5m ③100m

と聞くと子供たちは③あるいはまた騙されるのかと思ってもっと遠くを言い始めます()

「正解は、③です。もう少し正確に言うと117mで、ここから運動場の1番端っこよりもう少し遠い○○辺りです」

と言って、運動場の1番端っこに置いておいたもう一つのフラフープを指さします。学校の広さによるのですが、地球を直径1cmとすると太陽を117m離すのは難しいです。あくまで「だいたい、こんな感じ」と表現してください。子供たちは窓から運動場の隅っこのフラフープを眺めながら、月に比べて太陽がずいぶんと遠いことが何となく分かったようです。何となくでいいと思います。

「この距離を半径として地球は1年をかけて太陽の周りを公転し、その間に月は地球の周りを約12回公転しています。」

これ↑↑↑は話すのを割愛しました。太陽に対する月・地球の公転の話までし始めるとあまりにも難しいですから。何を話して、何を話さないかを選択するのが難しいです。地球・月・太陽のスケールを考えただけでも天体はかなり壮大な動きをしていることが分かります。不思議過ぎて私自身がなんだか混乱してきます。

地球のちっぽけさ

このように地球・月・太陽のどれか1つの直径を決めると他の直径と、「地球←→月」「地球←→太陽」の距離が決まってきます。今回は地球を1cmにしたので、地球と月は小さすぎたのですが(月は地球の4分の1なので2.5mm)、太陽はなんとか教室で見せられる大きさ(フラフープ)になりました。運動会の大玉を太陽に見立てると地球と月はもう少し大きく表現できますが、そうすると地球と太陽(大玉)の距離が100mよりも大きくなるので学校のサイズには収まらなくなります。まだ小学生なので頭の中で自由自在にそれぞれを拡大・縮小するイメージを作るのは難しいと思い、地球の直径は1cmにしました。想像力には発達度によってかなり差があると思いますので、中学校や高校でも実物模型を見せながら想像させる機会を持たせてあげてほしいです。自分たちで作らせてもいいかもしれません。

実際にこうして表して地球のちっぽけさ(≒自分のちっぽけさ)を改めてイメージしてみると、何だか気が遠くなるような感覚になりました()。天体について考えるたびに、私は妙な感覚になります。

表現しきれない「宇宙のスケールの大きさ」

子供からは、

「じゃあ、太陽に行くことはできるの?」

という質問が出ました。

「この鉄の球が地球なら、人間はの上に乗っかっているほこりよりももっともっと小さくなります。月にさえ、もう50年以上誰も行けていません。月に行けた人はたった12人です。」

と、答えておきました。自分でそう答えながらも、月でさえあまりに遠いことに混乱します。アポロの月面着陸からもう半世紀以上が経っているのです。

地球・太陽・月の学習をしながら、隙間時間に下の動画も見せました。子供も私も目を白黒させながら見ていました。

天文学的数字というものは、なかなかイメージがしにくいので、映像や具体物で説明してあげることが関心を引き出す入り口になると思います。

天動説?地動説?月は公転しているの?

小学校の教科書では天動説や地動説について触れていません。あくまで「地球から見て天体はこのように見えます」というストーリーで語られています。つまり、小学校で教える内容は天動説で通している感じです。

実際は、

地球から見た1日における太陽・月の動き・・・地球の自転による

地球から見た1か月における月の満ち欠け・・・月の公転による

なのですが、月の公転(月の満ち欠け)と地球の自転(1日における月の動き)に関しては混同されがちです。

小学校では6年生で月の満ち欠けを学びます。下のリンクが、月の満ち欠けに関する実験です。

月の満ち欠けを実感する ~楽しい理科実験 vol.3 | EDUPEDIA

この段になると本来なら「月の公転について話す必要性」を感じます。月の満ち欠けに関して、月の公転に触れずに教えるのは違和感があります。それでも、教科書では何となく「教えない感じ」で記述されています。

下↓↓↓は、教科書の挿絵です。月の満ち欠けの実験では、公転する月を追って、地球である子供が月を手にしながら向きを変え、1回転して眺めます。

月の公転周期は約30日なので1日に約12°(360°÷30日)、月は公転軌道を進みます。この実験で子供が自分で月を持つと30日に1回地球が回転してそれで月が満ち欠けしているかのようになります。月の公転と地球の自転は別個です。

月を動かすのは他の人に任せて、月が1日に12°公転して進むごとに子供が1回自転すると、正確なイメージに近づくでしょう。月が満ち欠けする30日間に地球も30回転するのですから(だからと言って、そんなことを理解するのは中学生でも難しいだろうから小学生に説明する必要はないと思いますが・・・)。

私も授業をしながら、またはこの記事を書きながら常時混乱してしまっています。天体に関して人に教えることはとても難しいですが、自分の勉強にもなってけっこう楽しいです。

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