はじめに
本記事は、西大和学園高等学校で行われているアントレプレナーシップ教育、AIP(アクション・イノベーション・プログラム)についてのインタビュー記事です。
後編では、西大和学園高等学校教諭で、アントレプレナーシップ教育推進主任である冨髙雄介先生への取材を基に、AIPにおける先生と外部講師の役割、これからの展望、生徒や先生方へのメッセージをご紹介します。
本記事は、2024年11月8日に行った取材を記事化したものです。
AIPについて
※詳細につきましては、前編記事も合わせてお読みください。後編記事では、重要な部分のみ抜粋してご紹介します。

AIPは、西大和学園高等学校で授業の一環として行われているアントレプレナーシップ教育プログラムです。
学校の単位として扱われますが、希望制の授業のため、卒業単位には含まれません。毎週土曜日に2時間半から3時間の枠で行われており、年間で30コマの授業があります。
AIPには2つの軸が設定されています。生徒たちが自分のアイデアを形にすることを目指し、「こんなことをやってみたい」「これを作ってみたい」という思いを実際のプロジェクトとして具現化する「事業創出」(以下、マイプロジェクト)と、企業や自治体と連携して、実際の課題解決に取り組む「PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)」です。
AIPの運営について
AIPは、私を含めて15名程度の先生のチームで運営しています。
私は全体の統括を担当しています。他の先生方は、高校1年生の部署、高校2年生の部署、ルワンダやネパールを訪れる海外研修ツアーの企画、助成金に関わる三菱みらい育成財団とのやりとり、研究発表会などの企画と根回し、外部講師の選定、授業計画の作成、事前打ち合わせなど、AIPを活性化させるための多岐にわたる働きをしています。
また、先生方にはメンターとして実際に生徒たちのビジネスプランの壁打ち相手になってもらい、その時間中は部屋の中で徹底的に生徒への個別対応をしています。
先生の役割① 生徒への個別対応
個人のプロジェクトは、各自のペースで進めているため、進度が異なります。そのため、どのようなサポートやアドバイスをするかを検討したうえで、しっかりと寄り添いながら個別に指導しています。
声かけの方法や時間を適宜変えながら対応していますが、やる気があってよく質問をしてくれる生徒や、自主的に進めている生徒を中心に対応する場面が多くなります。ですから、あらかじめ生徒たちに、自分から積極的に情報を取りにいったり、質問を投げかけたり、アクティブに動くことが大切だと伝えています。また、外部講師と事前にミーティングを行い、各生徒を進捗フェーズごとにグループ分けし、各グループについて教員が対応するか、外部講師が対応するかを事前に打ち合わせています。
先生の役割② 外部講師の選定
「自分の想いをカタチにする」ことがこのプログラムのポイントです。
生徒が自分の想いをカタチにしやすいよう、学校の先生だけでなく、外部講師の方にもAIPに関わっていただいています。外部講師の皆様の専門性や関わり方も様々で、学校間連携や事業連携先、事業者の方々、インターンシップや海外プログラムの場を提供してくださる方々、単発での講演やワークショップ、審査員などで関わってくださっている方もいます。
こうした様々な外部講師の皆様には、主に、どのような社会的インパクトを生み出せるのかという観点から生徒の活動を見ていただいています。
私を含め、先生方の多くはビジネスのプロではなく、起業した経験があるわけではありません。プラン段階の場合は先生が中心となって携わっていますが、例えば、プロジェクトマネジメントやマーケティング、マネタイズといった面になると、より専門性が必要になります。そのため、外部講師の方に関わっていただき、専門的知識のサポートや、生徒と1対1の対話の中でアドバイスをしていただいています。
この外部講師の選定、特に年間でAIPに関わっていただく方に対して私が重視しているのは、外部講師が教育的観点を持っているかどうかです。
私にとって、この教育的観点とは、「わかりやすく生徒に伝え、生徒の中に落とし込めているのか」「本当にアクションを起こすエンジンがかけられるか」「本当に生徒たちの人生・将来を考えたアドバイスができるか」ということを指します。ビジネスの文脈における「業績」という面よりも、AIPを受講する生徒に対してどのようなまなざしを持ってくださるのかを大切にしています。
目指したい教育環境と今後の展望について
「挑戦」がすぐそばにある学びの空間へ
私は、起業家をはじめとして、アクティブにチャレンジされている方々が周りにいる環境を作ることが大事だと思います。チャレンジする人たちが周りにいれば、生徒は、挑戦することへの憧れや「自分もやってみたい」という思いを育んでいくと思います。だから、起業に限らず、夢中になって世の中を楽しみながら事業や活動をされている方々がたくさんいて、チャレンジにあふれている学びの空間を作り続けたいと思っています。
さらなる成長を支えるファンドを
これからの展望としては、生徒たちにとって、もっと結果を出したりチャレンジしたりしやすいプログラムに設計していきたいです。
その枠組みの1つがファンド(基金)の設立です。生徒たちがチャレンジしたいときに、少額給付ができるようなファンドがあれば良いと思っています。
例えば、「このビジネスのプロトタイプ・試作品を作りたい、でも試作品を作るには資金が必要だ」となった場合、学校や企業などと一緒に立ち上げるチャレンジ基金や、現在行っている校内研究発表会で資金提供の枠組みがあれば、生徒のチャレンジをもっと加速させられるのではと考えています。
生徒たちには、大きな売り上げや社会的インパクトを生むことを中高生の間に経験してもらい、社会を自分で切り開いていけるような学びや活動ができる自信と、それを実行できる術を身に付けていってほしいと思います。
最後に
私は、社会に出て自分のやりたいことがその枠組みの中にない場合、生徒には、「諦める」のではなく「自分で作る」という選択肢を持ってほしいです。アントレプレナーシップ教育を通して、世の中が、自分のやりたいことや取り組んでいることに夢中な人であふれる社会になれば良いのではと思っています。
プロフィール
冨髙雄介 西大和学園中学校・高等学校 アントレプレナーシップ教育推進主任/社会科教諭
2014年、西大和学園中学校・高等学校に入社。2020年、高校3年生の担任・教科担当として、過去最高の合格実績に貢献する。2021年、アントレプレナーシップ教育推進主任に就任。「AIP(Action Innovation Program)」の立ち上げ、責任者としてプロジェクトマネジメントを行う。2023年、他校へも価値提供の幅を広げるべく、外部講演活動等も精力的に行う。2025年、NIKKEI THE PITCH SOCIAL ソーシャルインパクト賞受賞。
編集後記
「挑戦」を生徒にとって身近にすることで、生徒自身が大きな成長をつかめる環境を作り続けている先生方の取り組みを知り、もっとアントレプレナーシップ教育について学びを深めたいと思いました。私自身も自分がやりたいことがないから諦めよう、ではなく、「その場所にないのならば、自分で作っていこう!」と行動できる人に成長したいと思います。 (編集・文責:EDUPEDIA編集部 下園絢音)
今回の記事作成を通して、自分のやりたいことが既存の枠の中に見つからないとき、「諦める」のではなく、「自分で新たに作り出す」という姿勢の大切さを学ばせていただきました。前例がない状況においても、必要だと感じたことに対して主体的に取り組む姿勢が、今後ますます求められるのだと実感しています。この考え方は、今後の自身の活動にも参考にしていきたいと思います。 (編集・文責:EDUPEDIA編集部 横井叶葉)

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