本単元で身に着けたい資質・能力
本単元では、面積の比較などの活動を通して、身の回りにあるものの面積について任意単位などにより比較できる能力を養う。また、それらを日常生活や学習に生かそうとする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:面積についての基礎的な意味や比較方法を理解し、直接比較や任意単位による測定等によって、身の回りにあるものの面積を比べることができる。
- 思考・判断・表現:身の回りにあるものの面積に着目して、比較方法を考えたり、任意単位により面積を数値で表したりできる。
- 主体的に取り組む態度:身の回りにあるものの面積に関心を持ち、比較の方法を工夫した考え方の良さに気づき、それらを日常生活や学習に生かそうとする態度を育む。
本記事のねらい
本記事はクイズをどんどんと出していき、正解不正解を児童に発見させる活動のみで授業を構成する。教員は必要であればヒントを出し、できうる限り児童の力で解決できる支援をする。
クイズ実践
1. ルール
今回の授業では「どちらがひろい」をテーマにしたクイズを行うことを伝える。
ゲームのルールは以下の通りである。
- 実際のものが提示される。
- その中で最も広いもの、または「くらべられない」を選ぶ。
- 選択は他の人と重なっても良い。
- どちらが広いのかは児童の説明をもとに教員が判断する。つまり、教員が納得する説明ができなかった場合には、「くらべられない」が正解となる。
2. 実際のものでの直接比較
まずは直接比較できるものを提示する。はじめのうちは「くらべられない」の選択肢を忘れてしまうような答えが明確なものから順に提示する。
例:黒板と教科書、机と下敷き、教科書とノート、児童全員の教科書ノートと黒板
始めは端をそろえるなどができていなくても指摘しなくても良い。例の最後のクイズでは、児童全員が教科書ノートと黒板に重ねた際、乱雑においてしまってははみ出る児童がいる。その際、「もっとそっちいって」等のやり取りが想定される。このやりとりについて話し合わせ、直接比較をする際には端をそろえることで比較しやすくなることを理解させる。
3. 実際のものでの任意単位による比較
動かすことのできないものを利用し、任意単位による比較が必要な問題を提示する。
例:前面黒板と背面黒板、外側の窓と教室側の窓
任意単位による比較を説明できる児童がいない場合には、「くらべられない」が活躍する。直接比較できるものを織り交ぜながら、任意単位による比較が必要な場合に「くらべられない」を選択できる児童が過半数を越えるまでゲームを続ける。
過半数を越えたところで一度手を止め、上手く比較できない原因についての話し合いを行う。その後、「児童全員の教科書ノートと比べるとどちらが大きいのだろうか?」と、ヒントを出し、考えさせる。それでも最終的に分からないなら、ここの結論は「直接比較ができないからわからない」でも良い。
4. マス目(タイル)による任意単位の比較
ここからは、実際のものではなく、「広いエリア」を選んだ人に加点をする。
以下の画像において、エリアが大きい所を短い制限時間で選ばせる。

画像を見せているだけなので、直接比較はできないが、同じ大きさのタイルが使われていることから、簡単に大きさの比較ができるだろう。ある程度続けて広さの感覚を身に着けた後、4をヒントに3について再度話し合いをさせる
「マス目があれば比較できる。」という言葉を引き出すことができれば、3についても問題なく考えられる。もしも児童が任意単位で「正方形」にこだわるようであれば、4で扱う問題の中に、長方形(ノートや教科書と同じ形)を1マスとした問題を入れておくことで、3へのつながりをより強くできる。
5. 陣取りゲーム
以下の画像を共有し、ペアで陣取りゲームを行う。

ルールは以下の4ステップ
- ペアでじゃんけんを行う。
- 勝った方が自分のマスのとなり1マスを選び、色を塗る。
- これをどちらかがぬれなくなるまで繰り返す。
- 最後にマスを多くぬることができた人の勝ち。
ここでは、各自が塗ったマス全体がひとつの長方形や正方形にならなくとも、塗ったマス目の数で比較できることを再確認する。4は簡単な図形の広さ、5は複雑な図形の広さの比較ができるようになることを目標とし、4との明確なすみ分けをすると良い。ゲームはペアで、どちらが広かったのかという結果発表は全体で行うことで、全体で多くのデータを比較でき、複雑な形の比較に触れる機会を増やせる。
余裕のある児童には、じゃんけんに勝った回数=塗られたマス目の数=任意単位になっていることまで理解させられると良い。
最後に
ゲーム実践をしているときに、不用意な強制は逆効果になることが多い。生徒に任せるとき、ある程度の誘導は必要だが、教員が手綱を握りすぎてはいけない。だからこそ、児童の失敗を想定して先回りし、目標が達成できるような補助発問を用意しておくと良い。端をそろえる、任意単位による比較をする等は、必要性があるから生まれた考え方なのだ。であれば、それが必要に迫られる環境をゲーム実践で作れれば、児童は自ら発見して学ぶことができる。本提案がその一助となることを願う。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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