本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、10000までの数についてその意味や表し方を理解し、図や式を用いて考えることができる能力を養う。また、既習範囲の数の表し方についての理解を深め、その良さに気づき今後の生活や学習に活用しようとする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:4桁の数について、3桁の数と同様の理解、扱いができる。
- 思考・判断・表現:数のまとまりに着目し、既習範囲の数の表し方から考えたり、数の相対的な大きさを考えたりすることができる。
- 主体的に取り組む態度:数のまとまりに着目して数を捉えることのよさに気付き、日常生活や学習に積極的に活用しようとする。
「4けたの数」の重要性
教員が本単元の授業について真剣に悩むのは、1年後の3年生で学ぶ「大きい数のしくみ」を教えているときではないだろうか。本単元の授業では特につまずきもなく終えたつもりになっていたが、万億兆を教えようとしたときに、一十百千の理解ができていないことに気付くのだ。当然それでは万の位以降の学習は進まない。万の位以降の数には一十百千の位が内包されるからだ。

だからこそ、この時期に4桁の数までの理解を深めておく必要がある。
しかし、本単元において教員は淀みなくテンポよく授業を進めてしまい、児童を置き去りにすることが多い。本単元の難しさは児童がつまずくポイントに、教員が気付けないところにある。「4けたの数」で反復演習を行う時間は勿体なく感じ、「かけ算」のように分かりやすく難しい単元では、たくさんの反復演習の時間をとるべきだと感じる教員は少なくないだろう。数の仕組みについて細かく教えすぎて演習の時間をとることができない教員もいる。
本単元を教える際に最も大切なことは、児童がなぜつまずくのかを理解することである。必要なのは、闇雲に演習の時間ではない。児童のつまずくポイントを理解し、そのつまずきに合わせた授業の展開と効率的な演習を行うことだ。
児童が「4けたの数」でつまずく理由
児童がつまずく理由は以下の2つに尽きる。
- 数の構成を知らない、または理解できていないから。
- 考え方に慣れていないから。
この2つはそれぞれ対処が異なるので、混ぜて考えてはいけない。それを体感するために、以下2つのことを考えてみてほしい。
1. 数の構成について

「3進数って何?」と感じた方でも、数の構成が分かっているからこそ、答えが大きい順に③①②だと分かったのではないだろうか。数の構成をもう少し掘り下げると以下のことが分かる。
- 各位の数は0から順に数が入り、一定の数を越えると繰り上がる。そのとき、もとの位の数は0へ戻る。
- 位の数は左にあるものほど大きい。
③が大きいのは桁を比較すれば分かる。①は②に比べて下3桁目が大きいのでどちらが大きいのかを判断することができただろう。つまり、児童も数の構成がつかめれば、よくわからない数でも大きさ比べをすることができる。
ちなみに、3進数とは、3で繰り上がる数のことである。


2. 理解していても慣れるまでは難しい

(1)は、九の位が2、三の位が1、一の位が2なので、18+3+2=23。
(2)は、3進数で考えると1200は100が12個分である。3進数の12は三の位が1、一の位が2なので3+2=5(個分)。3進数のルールは3で繰り上がるというだけだが、それなりに難しい。(2)は直感的に12個分と分かるが、3進数だと他に配慮すべきことがあるのかと不安になった方もいるのではないだろうか。指折り数えれば簡単にわかることだが、直感的な理解となると、慣れるまでにしばらくはかかるものだ。ましてや、数の構成が理解できていないうちから相対的な大きさの把握までするなど、至難の業である。
つまずきの乗り越え方
本記事は、数の構成をスムーズに理解させるための4ステップを記す。
- 1000を「100のかたまり」ではなく「999の次の数」と理解させる。
- 口で読ませ、位の感覚を体に刻む。
- 相対的な大きさの把握をする。
- 1000を「100のかたまり」ととらえて考える。
それぞれを細かく見ていこう。
1. 1000を100の塊ではなく999の次の数と理解させる。
3進数で体感してもらった通り、数を理解する順番は「繰り上がりの仕組み」→「位の数」である。そのおかげで、位の数が理解できていなくても、数の大小を大まかに理解できる。つまり、カウントアップをすることで数の構成を理解するのが最適である。この際、1000が「100のかたまり」であるという認識は無くても良い。
1万までのカウントアップ動画(https://www.youtube.com/watch?v=UsuaLwjYyK8)
2. 口で読ませ、位の感覚を体に刻む。
口で読むことで位の数を意識できるので、時間をとって全員に読ませることを強く勧める。アラビア数字から漢数字への変換は口頭で読んでいるものをそのまま書くだけである。より詳細な理由や教具に関しては、hiroshimatui先生の記事が大変参考になったので、以下のリンクより参照すると良い。

3. 相対的な大きさの把握をする。
今度は数直線上で大きさを比較する作業を行う。この際、視点の切り替え(一メモリの大きさの切り替え)を意識させることが重要である。ここでは、以下の手順で学習を進める。
- 1231と1235の比較。(一メモリ1)
- 1230と1250の比較。(一メモリ10)
- 1200と1500の比較。(一メモリ100)
と順に「虫の目(ミクロな視点)」から「鳥の目(マクロな視点)」に変化させていくことで、自然と10のまとまり、100のまとまりに目を向けさせる。数直線を見ながら、カウントアップする数も1刻みだったものを10刻み、100刻みと視点に合わせて変化させていくことで定着が早まる。
4. 1000を100の塊ととらえて考える。
3の延長線上で、100ずつ増えるカウントアップを行うことで1000が「100のかたまり」でできていることは理解しているので、ここで初めて和の練習や2300が100何個分かを考えさせる。
1~3の手順は新しく教わることがほとんどなく発見的に学べるため、授業の進度は普段より早いだろう。それにより最後に時間を余らせ、反復演習にも時間をかけることができる。
教えやすい順番ではなく、学習者が納得しながら進める順番で授業を構成することが重要である。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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