レディネスが整わないまま
1年生から4年生まで続く「大きな数」の授業は数が大きくなるほど認識が難しくなります。前の学年の授業内容が頭に入っていなければ現学年の授業はかなり厳しいものになります。
1年生・・・百までの数(◎十◎)、最大百
2年生・・・千までの数(◎百◎十◎)、最大千。その後、万までの数(◎千◎百◎十◎)、最大一万。
3年生・・・億までの数(◎千◎百◎十◎万◎千◎百◎十◎) 、最大一億
4年生・・・兆までの数(◎千◎百◎十◎億◎千◎百◎十◎万◎千◎百◎十◎)、最大一兆
と、機械的にレベルがあがってゆくのですが、子供の発達段階は様々です。2年生になっても「16の一つ前の数(15)」や「一つ後ろの数(17)」がすっと出てこない子供もいますし、3年生になっても2桁の数の操作が難しい子供もいます。
前学年の内容が十分に習得できていない子供にとって「大きな数」の学習はとても苦痛です。4年生になって兆を習う頃には既に諦めムードの子供が続出します。
それでも日本の学習指導要領、ひいては教科書は無慈悲に学年に応じて億や兆を子供に教えることになっており、教師も子供もお手上げになるシーンはよく見かけられます。「レディネス」が整わず、発達段階に合っていない学習や前年度の習熟度が十分ではない状態で億や兆を学習させるのはかわいそうです。
ポイントになるのは2年生
2年生は第一段階で千までの数、第二段階で万までの数を学習します。どの学年の学習も大事なのですが、「大きな数」においては2年生でどれだけ頑張ることができるのかがポイントになると思います。理由の1つ目は「1年生と2年生の発達段階の差があるから」です。2つ目が「3年生・4年生の基礎となる4位数(4桁の数=千の位)の理解・習熟が大切だから」です。
以下に書かれていることは、主に万までの数(◎千◎百◎十◎)についてですが、千までの数(◎百◎十◎)も同様のポイントを押さえて指導してください。千までの数を理解・習熟させることが万までの数を理解する大切な基礎となります。
1年生と2年生ではレディネス差がとても大きいです。2年生の間にきっちりと1年生の「大きな数」を復習しつつ2年生の「大きな数」の学習にはげめば、その後の3・4年生の「千兆」までの大きな数を理解することができるようになります。
2年生の「大きな数」を学習する前にやるべきこと
とは言っても、2年生だって3・4年生と比較して少しはゆったりしているだけで、十分に時間があるわけではありません。短い時間で有効に力をつける指導をしなければなりません。1年生の「大きな数」、つまり2桁の数を理解・習熟させるには以下の指導が有効です。
百ます計算の導入
そこで、4月当初から百ます計算を導入します。1年生で百ます計算する場合よりも、2年生は発達段階ぐんとアップしているので、とても成長して快適度が増します。詳しくは下記リンク先をご参照ください。
百ます計算で成果をあげる方法Ⅰ ~少しユルめの百ます計算指導の実際【教材】 | EDUPEDIA
2年生では2桁+2桁のたし算・引き算(2桁の筆算)がありますので、それまでに2桁の筆算で十の位へ繰り上げる作業と十の位から繰り下げる作業を百ます計算でスピーディーに楽にできるようにしておきます。
2桁の筆算の精度を上げる
百ます計算によって繰り上げ、繰り下げが楽にできると「2桁の筆算」のメカニズムの理解や習熟が進み、計算することが楽になってきます。また、2桁の筆算の授業の精度を上げます。楽しくリズムよく、スモールステップを大切に授業をすることで、1年生の時には発達段階の遅れで理解ができていなかったり、しっかり習熟できていなかったりして2桁の数の認識力もレベルアップしてゆきます。
詳しくは下記リンク先をご参照ください。
「2桁の筆算」近日公開
3桁・4桁の「大きな数」の学習
大事なので何度も言います。4桁の「大きな数」、つまり2年生の「大きな数」の学習は3年生の億、4年生の兆を学習するにあたってたいへん重要になってきます。日本の数字は「万→億→兆→京」の位の間が「一→十→百→千」と4桁区切りでアップしてゆく構造になっています(下図)。
例えば「345689053207」は4桁の大きな数がしっかり理解できていないと、とても読みにくいです。子供たちにとってとても苦痛な学習です。そこで「3456,8905,3207」と、4桁区切りにカンマなどを打って区切ります。あるいはさらに「3456億8905万3207」と書いてしまえばよいのです。4桁の数がしっかり読むことができていれば桁数が多くなってもそれほど苦痛ではなくなります。詳しくは下記リンク先をご参照ください。
難関「大きな数」は4つ区切りを徹底して | EDUPEDIA
4桁の数を十分に理解しておくことは、教師が思っている以上にとても重要なのです。各学年で十分に繰り返して練習させることです。もしこれが十分でなければ3年生の億、4年生の兆の学習の理解はかなり難しくなります。2年生ではまず、3桁の数を先に学習します。3桁も4桁も以下のように丁寧に指導し、十分に習熟させてください。
口で読ませる
まず、口で読ませることが大事です。これに関しては、別の記事に書いていますので、ぜひご参照ください。
「大きな数」は声を出して読ませる ~十の位から千億の位まで【教材】 | EDUPEDIA
エクセルで作ったランダムで十~千億の数字を提示するファイル↓↓↓がありますので、是非ご活用ください。ありそうでない、けっこうシュアなファイルです。
大きな数 ランダム表示 2桁(十)~16桁(千兆).xlsm
スモールステップで
プリントを使って、「アラビア数字を漢数字に直す」「漢数字をアラビア数字に直す」を何度もやってあげてください。これはしんどいので子供たちは嫌いですし、私も子供の時はこれが大嫌いでした。しかし、ちゃんと4桁区切りで「万→億→兆」と位が進んでいくことを理解できれば、それほど苦ではなくなります。
しんどい学習であるから、一度にたくさんの問題数をするのは悪手です。①同じパターンの問題(特に後述する空位のパターン)を少しずつやって②教師がすぐに丸を付けてあげて③何回もやらせれば、子供たちが波に乗り、どんどん力をつけていきます。
エクセルでスモールステップになるように作ったミニプリントがありますので、よろしければご利用ください。
詳しくは下↓↓↓の記事をご参照ください。
難関「大きな数」は4つ区切りを徹底して | EDUPEDIA
空位を理解させる
2桁(◎十◎)と3桁(◎百◎十◎)・4桁(◎千◎百◎十◎)の差など大人になれば大したことのないように思えても、2年生の子供にとっては大変です。例えば親と声に出して「十まで」あるいは「百まで」を一緒に数える練習をした経験がある子供はいるかもしれません。しかし「千まで」や「万まで」を一緒に数える余裕は親にもないでしょう。「百まで」「万まで」では、一気に扱う数が
万÷百=100(倍)
になるのですから、子供も親も大変です。
また、空位(ゼロ)の位置の場所のパターンは3桁(◎百◎十◎)までなら3パターンだけでした。十・一の位にゼロがある場合(*00)と十の位にゼロがある場合(*0*)と一の位にゼロがある場合と(**0)だけです。例えば500と505と550です。ところが4桁になると
① 百・十・一の位 【例】3000
② 百の位 【例】5048
③ 十の位 【例】6208
④ 一の位 【例】3220
⑤ 百・十の位 【例】2006
⑥ 百・一の位 【例】2050
⑦ 十・一の位 【例】3500
と一気に増えます。これについて、あまり詳しく説明しても時間ばかりがかかるので
「『ゼロ百』『ゼロ十』『ゼロ一』とは言わないんだよ」
と、やんわり教えてあげる程度でいいと思います。空位を理解させるのも、とにかく口で読ませることが大切です。そして前掲のスモールステップのミニプリントで習熟させてください。
諦めないで
3・4年の担任をした時に、1・2年での「大きな数」の学習がしっかりとできていないこと(レディネスがないこと)が分かると、どうしようもないような気がします。「大きな数」に限らず、学年が上がるほど学力不振は重症化し、教師は諦めがちになります。4桁がこなせていないと4桁区切りの万・億・兆を理解することはとても難しくなります。
だからと言って、諦めないでください。3・4年生になれば、3桁の数を理解できる子供がずいぶん増えます。形成評価(事前の評価)をして、かけ算とともに3桁の数をしっかりと復習する機会を早い段階で設けてあげてください。「遡り学習」(今の学年より前の学年の学習を復習させること)は、とてもしんどいですが、きちんとプリントを準備してやってあげると、レディネスが身についてきます。
やるべきことがいくらでもある中、1人でするのが難しければ、学校ぐるみで組織だって遡り学習をさせる環境を作ることにチャレンジしてみてください。もうすでに長文になってしまっているので割愛しますが、下記リンクを是非ご参照ください。
学力保障 ~学校の荒れを防ぐための最優先事項 | EDUPEDIA
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