
1 はじめに 「家族愛、家庭生活の充実」の授業のポイント・注意点
本教材「どうぶつの かぞく」は、小学校学習指導要領解説「特別の教科 道徳(平成29年7月)」の内容項目C「家族愛、家庭生活の充実」に該当する教材です。
「家族愛、家庭生活の充実」で重要なポイントは2つです。
一つ目は、家族から愛情を受けて育っていることに気付かせることです。
家族愛は子どもたちが実感しにくい内容の一つです。 なぜなら、家族は子どもたちにとって「当たり前のこと」だからです。
生まれた時からこれまで、家族は自分の側にずっと存在しているため、家族から受けている愛情に気付かず、感謝することを子どもたちは忘れがちです。
道徳の授業では、当たり前のことや普段気付かない大切なことを見つめ直し、その価値について考える授業があります。感謝や生命の尊さ、今回の家族愛といった内容項目が該当します。子どもたちにとって身近過ぎる内容、当たり前過ぎる内容であるがゆえに、考えさせる難しさがあります。
家族に愛されていること、自分の成長を願っているなど、家族が愛情を注いでいる場面を中心に話し合えるよう授業を構想しましょう。
二つ目は、家庭の一員として貢献する態度を育むことです。
家族からの愛情を実感させていく一方で、子どもたちが家庭の一員として貢献していく心を育てていく視点も「家族愛、家庭生活の充実」では大切です。
家庭に貢献する例としては、食器洗いやそうじといった家庭内のお手伝いや勉強を頑張って家庭を励ますことなどが挙げられます。
家庭の一員として貢献する姿勢は、責任感を育んだり、家族との絆を深めたりでき、子ども自身の成長や家族全体の調和にもつながります。
また、家庭内での役割や責任を持つことで、子どもは自分に自信を持ち、他者と協力する大切さも学びます。
ただ、「家族愛、家庭生活の充実」の授業では、家庭環境に配慮する必要があります。
子どもの中には離婚・再婚をした親、健康問題を抱えている親と生活している子ども(献身的にサポートをするヤングケアラー)もいます。
虐待を受け、親ガチャや毒親などとネガティブな感情で家庭を見ている可能性もゼロではありません。
複雑な家庭環境で育っている子どもにとって「家族愛、家庭生活の充実」を考えるのはつらい時間になる可能性があります。
個々の家庭環境には深入りせず、ナイーブな内容項目であることを念頭に置いて授業を構想しましょう。
2 教材、あらすじ、授業のねらいについて
- 小学校1学年 道徳科 主題名 「かぞくの ために」
- 教科書 東京書籍 『新しい道徳』「どうぶつの かぞく」
- 内容項目 C-(13)家族愛、家庭生活の充実
あらすじ
「どうぶつの かぞく」は読み物教材ではなく、写真の様子を見て話し合う教材です。
動物の家族の写真が複数掲載されており、3つの場面が設定されています。
一つ目はお父さんやお母さんの気持ちを考える場面、二つ目は子どもの気持ちを考える場面、三つ目は親と子の両方の気持ちを考える場面です。
ねらい
家族の優しい心遣いや努力に感謝し、家族のためにできることを進んでやっていこうとする心情を育てる。
3 授業の工夫
写真の様子から考える難しさに配慮しよう
「どうぶつの かぞく」では8枚の写真が掲載されています。
写真から親の気持ち、子の気持ちを考えていく授業を想定しますが、写真からの読み取りは1年生にとって難しい学習です。
授業のねらいから外れる意見が出てくる可能性もあります。
そこで、補助発問をいくつか用意しておきましょう。
道徳の授業でねらいから外れる意見が出てくる原因には以下のことが考えられます。
- 何が問題になっているかを理解していない
- 話し合う内容を理解していない
- 経験が少ない内容である
子どもたちが考えやすくなる補助発問、意見を言いやすくなる補助発問をすることで、話し合いの内容が明確になり、活発な話し合いへと発展します。
「どうぶつの かぞく」には「カンガルーのお母さんやペンギンのお父さんの気持ちを考えてみましょう」という問いがあります。
最初からこの問いをするのではなく、少しずつ迫っていきましょう。
まず、教材にある吹き出しをヒントに、写真にある場面を理解させます。
T「カンガルーのお母さんは何をしているかな?」
C「子どもをお腹の袋に入れている」
T「ペンギンのお父さんは何をしているかな?」
C「卵を温めている」
場面がわかったところで、主発問をします。
T「カンガルーのお母さんはどんな気持ちで子どもを袋に入れているのかな?」
C「大切に育てたい」
C「敵が襲ってきても大丈夫だよ」
C「絶対に守るよ」
T「ペンギンのお父さんはどんな気持ちで卵を温めているかな?」
C「早く生まれてこないかな」
C「どんな子が生まれてくるか楽しみ」
親が愛情を注いで子を育てている様子が浮き彫りになってきました。
「みんなの家族はどうかな?」と発問をし、自分の家族に思いを巡らせる展開もできますね。
※「みんなのお父さん(お母さん)はどうかな?」と発問しないように注意です。
次に、「動物の子どもたちの気持ちを考えてみましょう」という問いの前にも、場面を理解させていきます。
T「ツバメの子どもは何をしているかな?」
C「エサをもらっている」
T「誰からエサをもらっているのだろう?」
C「お父さんじゃないかな」
C「お母さんかも」
T「ツバメの子はどんな気持ちかな?」
C「エサを届けてくれてありがとう」
C「食べられてうれしい」
動物の子どもの気持ちを考え、自分たちのことに話し合いを転換させていきます。
T「みんなの家族でも似たようなことがあるかな?」
C「うん、お母さんが食事を作ってくれるよ」
C「他にもお仕事とかしてくれてる」
T「ツバメの子のようにありがとうという気持ちになったかな?」
C「あまり思っていないかも……」
C「ありがとうと言ってないかも……」
このように、適切に補助発問をすることで、家族からの愛情という授業のねらいに迫る話し合いができます。
自分たちの生活、考え方を見つめ直す
授業の後半では、教材から離れ、自分たちの家族を思い出して話し合いをしていきます。
T「家族の人たちは、みんなのためにいろいろなことをやってくれているよ。どんなことがあるかな?」
C「食事を作ってくれる」
C「勉強を教えてくれる」
C「家族のために働いてくれる」
T「みんなが家族のためにできることって何があるかな?」
C「お手伝いをする」
C「玄関のそうじをする」
C「作ってくれた料理を全部食べる」
T「家族とどんな話をしたいかな?」
C「ボクのためにいつも働いてくれてありがとう」
C「私も家族のために何かするよ」
C「これからも楽しく過ごそうね」
「家族の人がみんなのためにいろいろとやっているから、お手伝いをしましょう!」と先生方から呼びかけるのではなく、「お家の人は自分のためにいろいろなことをやってくれているんだな」という気付きから、「よし!家族のために何かをするぞ!」というように、子どもの考えが変化していく過程を大切にしましょう。
すぐに行動に移す子どももいれば、少しずつ行動にしていく子どももいます。
いずれにせよ、本授業では子どもたちが自分の家族を振り返り、「お家の人が自分を大切にしてくれている」「たくさんの愛情を受けて育ててくれている」と感じられるように、家庭環境にも配慮しながら授業を作っていきましょう。
執筆者プロフィール
マー
小学校教員を15年務めた後、フリーのWEBライターに転身。教員時代は安全主任、体育主任、生徒指導主任、学年主任を担当。現在は「物事のよさをより多くの人に」をモットーに教育系記事、金融系記事を主に執筆。趣味は野球観戦とランニングで、野球やマラソン・駅伝を応援するブログを運営している。

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