《児童の躓きはここ!》小学3年 算数 2ステップで学ぶ「倍の計算」

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目次

本単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、比較量や基準量、割合の関係について理解し、数学的表現を活用して倍の意味を図や式を用いて考えることができる能力を養う。また、2つの数量の関係を考察した過程を振り返り、今後の日常生活や学習に活用しようとする態度を育む。

単元の評価基準

  • 知識・技能:テープ図や□を用いた式などを活用して、答えを求めることができる。
  • 思考・判断・表現:比較量や基準量、割合の関係に着目して、問題場面や数量の関係を適切に説明することができる。
  • 主体的に取り組む態度:数量の関係や倍の意味について考えた過程を振り返り、数理的な処理の良さに気付き、日常生活や今後の学習に活用しようとする。

《重要》児童の躓きと本実践の目的

授業で問題演習を繰り返していると、児童の間違い方がその都度異なり「さっきまでできていたことがなんで今できないの!? 」と感じたことはないだろうか。その原因は、以下の2つが推測される。

  • 問題文の読み取りができていない
  • 場面に合わせた立式の仕方が分からない

本単元は、言葉の順序や多少のニュアンスの違いにより求めるものが変化し、それに対応して立式の仕方が変化する。つまり、問題場面を適切に理解する読解力と、読み取った場面を適切に立式する力を同時に問われるのだ。何も考えずに解いてしまっては、場面が理解ができていないのか、立式だけができていないのかが不明瞭になってしまう。

これを改善するため、本実践の目的は比較量と基準量、割合の関係を適切に理解することとする。具体的には問題場面を以下の2ステップで立式し、関係性を理解する活動を行う。

1) 比較量と基準量、割合を次のような図にまとめる

2) □を使った式に表し、それを解く

1)と2)のステップで読解と立式を明確に分けることで、「何が分かっていないのか」が分かり児童に対して適切にアプローチできるようになる

もちろん最終的には、図や□を用いなくても立式でき、それを解けるようになる状態を目指す。これは九九同様、ドリル演習を積むことで自然に達成できるだろう。

ICTを活用したドリル演習

本単元は、上記の2ステップをドリル演習することで定着させる授業形態が理想だ。そのため、ICTを用いた簡易ドリル(以下、「めくりドリル」と呼ぶ)を活用することが有効である。めくりドリルとは、問題カード(⇒解説カード)⇒答えカード⇒問題カード⇒……(以下繰り返し)となるように並べたICT上のドリルのことである。

問題「問題文」⇒解説「三者の図」⇒解答「立式と計算」に分けることで、読解や立式のどちらに困っている児童に対しても同時に支援できる。また、授業中に教員の手が空くので、悩んでいる児童やより発展的な学習を求めている児童の対応をすることができる。各自の進捗を把握したい場合にはペア学習を取り入れると良い。相互チェックや児童の悩みを表面化させることもできる。

本実践は部分的に自由進度学習となる。その際、児童の理解度や定着度に大きな差が生まれる恐れがあるので、最低限のラインを明確にし、最後に考えのまとめや確認テストを行うと良い。

2ステップで学ぶ「倍の計算」の流れ

0. 大きな授業の流れ

授業展開は立式⇒読解の順が望ましい理由は、「できる」の積み重ねで学んだ方が定着が早いからである。算数において、多くの児童は答えを導き出してそれが正解であることに喜びを感じる。場面を適切に読解できただけでは「正解」にはならず、達成感を味わいにくいので、まずは立式の練習を徹底することをお勧めする。

1. 立式の学習

ここでは「■を▲倍すると●になる」という型のどれか一つを未知数とし、それを求める学習を繰り返す。

まずは「■×▲=●」という型のみで立式を繰り返し、慣れてきたところで「3×▲=6」のような式は割り算を使って未知数を求められることを確認する。立式は「■×▲=●」にこだわって解くときにのみ割り算を活用すると、苦手な児童でも授業についてこられる。

解き方を理解したのち、めくりドリルを繰り返して定着を図る。理解の早い児童はこの時点で割り算での立式をし始めるだろう。その立式方法は全体で共有し、目指すべきゴールの一つとして紹介するのも良いだろう。

2. 読解の学習

ここでは全体講義は一切せず、「問題を読む⇒1の図にまとめる⇒立式⇒解く」の流れをめくりドリルで繰り返す自由進度学習を行う。最後に確認テストがあると明示しておくことで目的意識をもって取り組ませると良い。

めくりドリルは大きく2パートに分けておく。

まずは立式せず、問題場面を適切に図に落とし込むパート前時までに「図に表すことができれば解ける」という意識を強く持たせられていれば、児童のモチベーションは高い状態で維持できるだろう。また、算数が得意な児童は先の道筋を頭でイメージすることで思考のトレーニングにもなる。教員側から「どんな立式になるのかな?」と突然聞くことにより、緊張感を持って取り組める活動となる。

次に読解して図に表したものを立式して解くパート間違えてしまう児童には「どこで間違えたのか」を理解させ、前時までに活用していためくりドリルを振り返らせるのも有効だ。

スモールステップで学習を進めることにより、「できた」を積み重ねられる。また、めくりドリルという学習ツールを作っておくことで、苦手なところの復習をいつでもやり直せる。

執筆者

まき先生

中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。

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この記事を書いた人

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