※本記事は、単元『昔から今へと続くまちづくり』で紹介した「知識の構造図」について、より具体的に解説した記事となっています。
本単元で身に付けたい資質・能力
我が国の工業生産の概要や、工業生産が国民生活の向上に重要な役割を果たしていることを理解させる。地図帳や地球儀、統計などの各種の基礎的資料を通して、情報を適切に調べまとめる技能を身に付けさせる。また、我が国の工業生産の概要や特色、工業生産が国民生活に果たす役割を多角的に考え、考えたことを説明したり、それらを基に議論したりする力を養う。そして、主体的に学習の問題を解決しようとし、我が国の産業の発展を願い我が国の将来を担う国民としての自覚を養う。
単元の評価規準
知識・技能
工業の種類、工業の盛んな地域の分布などについて、地図帳や地球儀、統計などで調べ、必要な情報を集め、読み取り、工業生産の概要を理解している。
思考・判断・表現
これからの工業の発展に向けて大切なことを消費者や生産者の立場から多角的に考え、適切に表現している。
主体的に学習に取り組む態度
我が国の工業生産の概要や特色について、予想や学習計画を立てたり、見直したりして、主体的に学習問題を追究し、解決しようとしている。
単元の展開【1~8時】
1時 さまざまな製品をつくり出す工業
・これまでの学習に出てきた工業製品や身近な工業製品がどこで生産されているか、商品の外箱や地図帳などで調べ、白地図に個人で整理する。
・個人で整理した白地図を見て、産地の分布や製品の種類について気づいたことを出す。
・個人で気づいたことを班で共有する。
・日本の工業生産額の変化を資料から読み取り、日本ではどのような種類の工業生産が盛んなのかを、個人で考える。
・個人で考えたことを班で共有する。
・日本の工業生産についてさらに調べたいことを話し合って整理し、学習問題をつくる。
・単元の学習問題(例:「日本の工業生産には、どのような特徴があるのだろう。」)を問いかけ、個人で予想をする。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
2時 工業のさかんな地域
・工業の盛んな地域はどのあたりに広がっているか、地図資料で調べ、前時の白地図に書き加えるなどして、個人で整理する。
・個人で整理したことを班で共有する。
・工業の盛んな各地域で生産が盛んな工業の種類について、グラフや写真を読み取り、わかったことを、個人で考える。
・個人で考えたことを班で共有する。
・地図帳も活用しながら、これらの地域でなぜ工業が盛んなのか、土地の条件や交通網、貿易の特色などと関連づけながら班で考え、話し合う。
・班で考え、話し合ったことを全体で共有する。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
3時 大工場と中小工場のちがい
・大工場と中小工場の違いを比べることのできる資料を教科書や資料集から見つけて、個人で調べ、それぞれの特色をノートなどに整理する。
・個人で調べ、整理したことを班で共有する。
・中小工場が密集する地域の工業生産の様子を教科書や資料集から見つけて、個人で調べ、中小工場の生産についてわかったことをノートなどに整理する。
・個人で調べ、整理したことを班で共有する。
・中小工場が日本の工業に果たす役割について、これまでの学習をもとに班で考え、話し合う。
・班で考え、話し合ったことを全体で共有する。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
4時 日本の工業生産の変化
・主な電化製品の国内生産台数の変化と、国内の工場数や働く人の数の変化をグラフから、個人で読み取る。
・個人で読み取ったことを班で共有する。
・それぞれの変化を関連づけてわかることを班でまとめる。
・班でまとめたことを全体で共有する。
・国内の工業生産が海外へ移っている現状を資料から読み取り、気になったことを班で話し合う。
・これまでの学習を振り返り、今の日本の工業の特色について、班で整理する。
・班で整理したことを全体で共有する。
・整理した特色と関連づけながら、疑問に思ったこと、さらに調べたいことを個人でまとめる。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
5時 増え続ける海外生産
・日本の自動車の国内生産台数と海外生産台数の変化をグラフから、個人で読み取る。
・個人で読み取ったことを班で共有する。
・どうして海外生産が増えたのか、関連する資料を見つけて読み取り、わかったことを班で話し合う。
・世界に広がる日本の自動車工場や海外生産の様子を、地図や海外で働いた人の話などから班で読み取り、ノートなどに整理する。
・班で整理したことを全体で共有する。
・海外生産が増えることの長所と短所を考え、班で話し合う。
・班で話し合ったことを全体で共有する。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
6時 国内で生産を続けていく中小工場~東大阪市の「ものづくり」
・国内には中小工場が密集する地域があったことを振り返り、特に工場が多く集まる東大阪市では、国内生産を続けるために何をしているか、個人で予想する。
・個人で予想したことを班で共有する。
・東大阪市で優れた製品を開発・生産している中小工場の様子がわかる資料を教科書から見つけて個人で調べ、気づいたことをノートなどに整理する。
・個人で調べ、整理したことを班で共有する。
・整理したことをもとに、東大阪市の工業の強みについて考え、班で話し合う。
・班で話し合ったことを全体で共有する。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
7時 これからの工業生産とわたしたちのくらし
・国内で新たに開発・生産が進められている工業製品、これからますます社会に求められる工業製品の例を、教科書や資料集、新聞記事などから、個人で見つける。
・個人で見つけたものを班で共有する。
・国内の工業生産に見られる特色や強みについて、見つけた資料から調べ、ノートなどに個人で整理する。
・個人で整理したことを班で共有する。
・整理したことをもとに、工業生産が人々の暮らしにもたらすものや、これからも国内で工業生産を続けていくうえで大切だと思うことについて、班で話し合う。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
8時 まとめる
・これまで調べたことをもとに、日本の工業生産の特色を各自で付箋に、個人で整理する。
・班で付箋を集めて、分類し、「強み」と「課題」にまとめる。
・どの「強み」を生かすことが特に大切だと思うか、個人で順位づけをして、理由とともに個人で意見を考える。
・個人で考えた意見を持ち寄って、班で順位づけをして、理由ともに班で意見を考える。
・班の意見を全体で共有する。
・全体で共有した交流した意見も踏まえ、日本の工業生産の未来の方向性について、個人の考えをまとめる。
・個人で振り返りを行う。(振り返りシート)
知識の構造図で単元を見てみよう
前記事でも述べたように「知識の構造図」とは、単元において3つの「何を」指導するのかを明確にしていくものです。その3つとは、
「具体的知識」:一時間毎に習得させる知識のこと
「概念的知識(中心概念)」:単元の終末に、調べて取得した具体的知識を活用して獲得させる知識のこと
「用語や語句」:都道府県の名称や地図記号などのような一般的な知識のこと
本単元の「知識の構造図」を以下のようにまとめてみました。


以上のように、「知識の構造図」で単元を見てみると、単元の学習問題を前提として、単元の学習問題を解決していくために、毎時間の具体的知識や用語が明確になります。
「知識の構造図」は、「単元構造図」や「教材構造図」などと呼ばれ、多くの教師用指導書に掲載されています。指導を考える前に、一度目を通してみてはどうでしょう。
[参考出典]
・教育出版「令和6年度版『小学社会5』年間指導計画・評価計画」
・明治図書『社会科学力をつくる“知識の構造図”-“何が本質か”が見えてくる教材研究のヒント-』(北俊夫 著)
執筆者プロフィール
nanalalala
元小中学校教員。「思考を深める」(アクティブラーニング・思考回路図の活用など)、「安心して学ぶことができる」(ユニバーサルデザインを意識した授業計画・環境整備など)、「SST」「理解教育・インクルーシブ教育」などを意識し、教育活動・学習活動などに取り組んできた。現在は自身の経験を伝えるWebライターとして活動中。
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