算数科研究計画(間嶋哲先生)

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目次

1.1 はじめに

本実践記事では、数理的処理を理解し活用できるようにするだけではなく、そのよさに気付かせるための指導を紹介する。
出典はこちら→ http://bit.ly/XQp4IT

1.2 算数科で育成したい「実践的な態度」

 対象に積極的にかかわり,既習の知識・技能,考え方を手掛かりに,数理的に考察し,処理しようとすること。

1.3 本研究の位置付け

内容の構成

当校算数科で育成したい「実践的な態度」には,数理的な処理が分かり,そのよさを積極的に活用しようとする子どもを育成したいという願いが込められている。知識や技能が学習の中心であると数理的な処理のできる子どもにはなるが,そのよさに気付くかどうかはわからない。数理的な処理のよさに気付かせていくためには,知識,技能ばかりではなく,数学的な考え方を大切にした指導が必要である。そこで,「数学的な考え方を重点化した単元構成」に着目した。

まず,知識・技能の獲得の段階で,数学的な考え方が分かるようにするために,単元で獲得させたい数学的な考え方を明らかにする。次に,その数学的な考え方が,知識,技能の獲得に伴って効果的に獲得できるような指導内容を構成する。

指導内容を構成する際には,子どもが獲得する数学的な考え方を根底に置きながら,知識,技能を系統的に学べるように配慮する。

学習活動・学習形態の組織

単元の内容を構成した上で,以下のように学習活動・形態を組織する。

<獲得の場>

◆個々の作業的・体験的な活動の組織

  • 様々な問題を個々に選択し,具体的操作を基に解決する。

働き掛けA1

問題1  問題2  問題3  問題4………問題n-1  問題n

※基本的には完全に個の活動をさせるが,課題や個人の能力に応じてグループ活動をすることもある。

※個々の問題をもたせにくい場合は,全体で問題を出し合ってから,問題を選択することもある。

  • 思考や解決の過程を,絵・図・式などを使って表現する。

働き掛けA2

◆数理的な処理のよさに,自ら気付くことのできるような比較・検討の場の組織
* 表現した子ども以外の子どもが表現された考えを説明する。

働き掛けB1

  • 出された考えの中で一番分かりやすい考えを選択する。

働き掛けB2

  • 選択した考えを使い有効性を確かめる活動の場を設定する。

働き掛けB3

◆新しい知識・技能,考え方の獲得までの学習方法を振り返る場の組織

  • 自分の最初の考えと選択した考えとの違いを含んだ学習感想を書く。

<活用の場>

◆単元で獲得した知識・技能,考え方を基に,子どもが活用できる場の設定
* 単元で獲得した知識・技能,考え方を使うことで,問題解決において有能感を味わえるような場を設定する。

働き掛けC

今年度特に大切にしたい学習活動・学習形態は,『数理的な処理のよさに,自ら気付くことのできるような比較・検討の場の組織』である。なぜならば,比較・検討の場でのお互いの考えのかかわらせ方が,数学的な考え方を分からせられるかどうかに大きく関係してくるからである。獲得の場で数学的な考え方を分からせ有効性を確かめる活動を行うことで,内容知や方法知を活用しようとする姿が生まれる。

1.4 主張する働き掛け

働き掛けA1} 様々な問題を個々に選択させ,具体的操作を基に解決させる。

全体への課題は一つでも,そこから生じる問題は本来,個別的なものである。子どもの「これをやってみたい。」という思いを大切にし,具体的な操作活動を個々に実現させたい。この働き掛けにより,子ども自身の学ぶ意欲が持続し,操作活動を伴った個々の学習が成立する。なお,ここでいう様々な問題というのは,数学的な考え方は同一であるが,学習材や数値などが異なるということである。

働き掛けA2} 思考や解決の過程を,絵・図・式などを使って表現させる。

具体的操作から生じる結果だけでは,数学的な考えのよさには気付かない。そこで働き掛けA2を行う。このことにより,子どもは個々の具体的操作を振り返りながら,解決への方法に着目するようになる。また実際に行ったことを,どう表現すれば他者に伝えられるのかを考え,絵や図,式を工夫するようになる。

働き掛けB1} 表現した子ども以外の子どもに表現された考えを説明させる。

絵・図・式などで表現したものを,自分で説明するのは簡単である。なぜならば,自分の問題に対して具体的な操作活動をすでに行い,普段から使っている表現方法で表しているからである。その際,次のような問題点が生じる場合がある。

  1. 説明が単調になったり,言葉と絵・図・式などの表現が一致しなかったりする。
  2. 「~さんの考え」と初めから位置づけてしまう。よって,同じ考えをしていた場合は説明をあっさり聞く状況が生まれる。また,その考えをしていなかった場合は項番1の状況であると,結局数学的な考えのよさを全員が理解できない状況が生まれる。

数学的な考え方は絵・図・式などの表現にこそ表れる。その表現がたとえ十分なものでなくても,考えのよさをそこから推察させたい。

これらの理由により,働き掛けB1を行う。このことにより,他者の表現を読みとろうとする姿が見られるようになる。また同時に,自分が行った操作活動を想起し,解決方法や表現方法などを自然に比較するようになる。このように他者の考えを説明していくことによって,全員の数学的な考え方を分からせることができる。

働き掛けB2} 出された考えの中で一番分かりやすい考えを選択させる。

獲得させたい数学的な考えを確かなものにするために,働き掛けB2を行う。一番分かりやすいという問いかけは,数理的な処理のよさに着目させていくことになるからである。この働き掛けにより,次の二つの効果が期待できる。

  1. 自分の考えの強化(より確信をもつこと)
  2. 自分の考えの修正(相手の考えのよさに気付いて,考えを変えること)

働き掛けB3} 選択した考えを使い有効性を確かめる活動の場を設定する。

この働き掛けによって,自分が選択した考え方が数理的な処理のよさをもっているかどうかを確かめることができる。

働き掛けC} 単元で獲得した知識・技能,考え方を使うことで,問題を解決する。

これまでの働き掛けで,「実践的な態度」につながる知識・技能,考え方を獲得することはできる。しかし活用する場がないために,「実践的な態度」に直接結びつかない。そこで働き掛けCを行う。このことにより,これまでで分かった数学的な考え方を活用し,生かそうとする姿が期待でき,「実践的な態度」に結び付く。

1.5 検証の方法

検証すること

主張する働き掛けが「実践的な態度」の育成に有効に働いたかどうかを検証する。

検証の方法

主張する働き掛けのそれぞれの段階で,「実践的な態度」につながる姿を個々に設定し,働き掛け後に見られた発言やつぶやきをVTRから分析したり,授業終了前に書かせる学習カードを分析したりして検証する。

1.6 編集後記

数理的処理を「できる」だけではなく「よいと感じる」ことは、子ども達が主体的な学習意欲を持つことに繋がると感じた。思考の過程を図・絵・式で表現することや他人の考えを説明することは、このような主体性を芽生えさせる活動だと思う。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 松村健太郎)

講師プロフィール

 間嶋 哲(Mazima Akira)

 1965年、新潟県に生まれる。新潟大学教育学部を卒業。
 新潟県内の小学校で活躍後、文部科学省での1年間の研修を経て、現在、新潟市教育委員会学校支援指導主事。算数授業ICT研究会理事。全国算数授業研究会総務幹事。
 趣味は、海外旅行・外国語会話・スキー・ギター(フォークとクラシック)・読書・園芸・熱帯魚飼育など、多岐に渡る。
 大学の卒業旅行を機に、旅行・外国語にはまり、旅行記を一冊出版したほどのエピソードを持つ。
●間嶋哲のHPへようこそ… http://bit.ly/taniryou

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