全国高校生地方鉄道交流会の設立と実践活動についての報告(大溝貫之先生)

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、中日新聞東京本社と受賞者から許可を得て、第15回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」の受賞論文を掲載させていただいております。
http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/

また、他の受賞論文もご覧いただけると幸いです。
第15回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」の受賞論文 まとめのページ
http://edupedia.jp/entries/show/1049

2 全国高校生地方鉄道交流会の設立と実践活動についての報告 連携と交流を伴う課外活動活性化の試み

3 ○鉄道研究部の問題点

成城鉄道研究部は、60年以上の歴史を持つ。活動の柱は3つ、大型ジオラマ(4×3m)制作、休暇中の合宿旅行、活動をまとめた部誌制作である。
部員は頑張っているのが、部活動の問題点を挙げてみると、

① 研究部という名称だが、課外活動として、本当の意味で研究活動とは言えない。合宿も、鉄道に乗って、写真を撮れば満足している。

② 部員は、好きな分野には興味を持つが、興味を持たないことに見向きもしない。知らない世界に入って行かない。

③ 部内外の生徒とのコミュニケーションが上手く取れない。自分の知識、経験を披露することに重点が置かれ、聞くことが苦手である。

④ 広く文化系部活動に見られるが、他校との交流が盛んではない。比較することに関心がなく、自己満足的な活動で満足している。

4 ○改善策を講じる

①コミュニケーション能力の改善策として、大型ジオラマを展示するJAM(日本鉄道模型の会)のイベント[東京ビッグサイトで開催、来場者4万人強]会場で、自分より年長である出展者の方々に質問し、制作法や技術面の助言を貰い、後日、部員全員のプレゼンテーションで情報共有。

②全員が合宿の計画案を作成し、プレゼンテーション、会議を行い、全員で最終的な合宿行程を決める。
JAM(日本鉄道模型の会)のイベントでのレポート取材をきっかけに、部員たちの質問に暖かく答えてくださった著名なジオラマ作家、市川 利勝氏との交流は6年以上続いている。

2004年の夏合宿で、能登半島を訪れた。これは、本校教員のご子息が、第三セクターののと鉄道で運転士をなさっているご縁により実現した。車庫・運転指令所・検車庫ばかりでなく、現業の保線・検査・運行に携わる方々の話を直接伺う機会に恵まれた素晴らしい合宿であった。しかし、赤字を理由に、2005年4月の、穴水~蛸島間61.0kmの廃止が決定していた。

乗車した鉄道が姿を消すことに胸を打たれた生徒たちは、自発的に「のと鉄道存続策」をまとめ、合宿後、顧問に託してくれた。研究部の名に負けない活動の始まりだった。

5 ○地方鉄道交流会設立のキッカケ

共通の友人を介して秋田内陸縦貫鉄道社長の酒井一郎氏が、2012年2月下旬に来校された。目的は、休暇中の合宿に、秋田内陸縦貫鉄道を利用して欲しいというものだったが、ご本人が、公募社長であること、第三セクターや縦貫線が抱える問題、利用者増を目指しての方策などを伺い、当方も部活動の現状や「のと鉄道活性化・存続策」を送ったこと、取り組んでいる課題策などを話した。

話は「のと鉄道」沿線にあった石川県立珠洲実業高校が、2005年の一部区間廃止の5年後に、統合、廃校したことにおよび、秋田でも、県立北鷹高校が、類似の課題を抱えていることを伺う。

部活動の目指すものや鉄道が今以上に有意義な存在になり存続していける方策について話すうちに、たんに、乗車し、写真を撮り満足する合宿でなく、鉄道と地域の人々の暮らしの繋がりを研究する意義深い合宿を目指してみようと結論が一致した。

6 ○全国高校生地方鉄道交流会と命名

当日中に、成城の3名の顧問で話し合い、鉄道を中心に、地方に住む高校生と都会に住む高校生がお互いの地域環境を理解し、住人の方々の思いも共有し、見過ごしていることを指摘しあえる場を設けることをめざし、全国高校生地方鉄道交流会と命名。

7 ○地方鉄道交流会の参加校を募集し国土交通省で記者会見を開催

設立趣意書案を3顧問で相談し作り上げたのが3月初旬、それを携え、高校生模型コンテストでの気心の知れた他校の顧問の先生方に、参加を勧誘したところ、安田学園高校と岩倉高校の先生が幹事となってくだり、3校が協力して、交流会の企画・運営を行うこととなった。酒井社長の尽力もあり、5月7日(月)に国土交通省で記者会見を開くことが出来た。新聞社数社と鉄道・交通関係の雑誌社数社が取材、記事にして下さった。

8 ○現地交流会の実施要領を策定し、秋田県庁で記者会見を開催

6月17日(土)から3日間に渡り、会場となる秋田県仙北市角館町の「角館交流センター」を下見し、上桧木内の紙風船館で「秋田内陸縦貫鉄道を守る会」(鈴木定平会長)と懇談、ボランティア活動の説明を受け、地域と鉄道との堅い絆を感じた。8月23日の生徒との交流会でも、同様のお話をお願いした。

18日(月)に秋田県庁で地方鉄道交流会設立の趣旨と現地交流会の実施要領説明を目的に記者会見を行った。地元新聞社、テレビ局の参加も多く、秋田内陸縦貫鉄道への愛情が感じられた。

これに先立ち、県庁内で、堀井 啓一副知事とお話しする機会に恵まれ、「地域住民にとっても大切な、また観光資源の核となる内陸線をより活性化し、存続することを願っている。遠方から大勢の中学生・高校生が秋田に集うことで、成果が出ることを願っている」との言葉を頂いた。 

9 ○秋田県をはじめ、様々な方面より後援を頂く

県庁での記者会見の多くの報道や関係諸氏のご尽力もあり、開催地秋田県ばかりでなく、国の機関の東北鉄道協会・仙北市・北秋田市、東京私立中・高等学校協会の後援を得た。

10 ○秋田内陸縦貫鉄道活性化企画案の披露を目指すも、なかなか発案できず苦しむ

8月中旬のジオラマの展示会もある状況下で、8月22日からの現地交流会に間に合うように企画案を仕上げることは、困難を極めた。スケジュールがタイトで、生徒は、思うような案が浮かばず苦しんでいた。だが、ここで大人の発想を披露したり、押し付けたりしては、何にもならない。顧問の我慢のしどころである。助け舟としての企画案作成マニュアルの配布に留めた。(資料編参照)

11 ○8月22日いよいよ秋田内陸縦貫鉄道を中心に現地交流会が開幕

角館交流センターに総勢64名が集合し、第一回現地交流会が開幕した。来賓の仙北市長 門脇 光浩氏が歓迎の挨拶。秋田内陸縦貫鉄道に乗車し4箇所にわかれ、地元の方との交流会を持った。安田学園は上桧木内の紙風船館で「秋田内陸縦貫鉄道を守る会」(鈴木定平会長)と交流。「守る会」は、最終日に安田学園の生徒に名誉会員証を下さった。岩倉高校は阿仁合でと合川で地元の方と交流。成城中・高校は鷹巣県立北鷹高校で、濱田秋田大学教授の司会の元、生徒会、調理部の生徒さんと交流した。生徒会が内陸線に要望し、スタディ列車が実現、登校時利用できる列車がたった2本だけ、などを伺った。こちらは、満員電車や駅構内の混雑した様子などを伝えた。

23日は、阿仁合駅車両基地見学、沿線各地で写真コンテスト出品作品の撮影に勤しんだ。24日は、再び角館交流センターに集合し、企画案発表会を開催。冨手旅客サービス部長が三陸鉄道復興報告を東北運輸局岸谷部長が記念講演「地域社会に果たす鉄道の役割」をして下った。3校8企画がパワーポイントを使って発表された。どれも、良く考えられており、若者らしく素直な、鉄道ファンらしい秀作揃いであった。東北鉄道協会賞は安田学園、北秋田市長賞と仙北市長賞を岩倉高校、秋田内陸線社長賞を成城が頂戴した。

12 ○現地交流会で得た大切なもの

内向きだった部活動が、目的を持って、しかもそれが、鉄道や地域の人のためとなると俄然力も入る。同年代の他校の生徒がどんなことを考えているか知ることが出来た。実際に現地の人と交流することで、目に見えない真摯な仕事やそれを支える人々の生き方が垣間見える。「内陸線は乗り心地が抜群ですね。保線技術がすごいんだな」と生徒が車内で言っていたが、目に見えない大切なことに気付いてくれたと嬉しく思った。
                                  
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その他の資料は「がんばれ先生!東京新聞教育賞」サイト上で閲覧できます。
http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/

13 講師プロフィール

私立成城中・高等学校 教諭 大溝貫之
第15回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」受賞

14 引用元

第15回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」受賞論文『全国高校生地方鉄道交流会の設立と実践活動についての報告 連携と交流を伴う課外活動活性化の試み』,私立成城中・高等学校 教諭 大溝貫之より引用
「がんばれ先生!東京新聞教育賞」
http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/

本論文は中日新聞東京本社と受賞者から許諾を得て転載しております。
他の受賞論文はこちら→( http://edupedia.jp/entries/show/1049

15 東京新聞教育賞について

「がんばれ先生!東京新聞教育賞」は、東京都教育委員会の後援を受け、平成10年に東京新聞が制定したものです。

学校教育の現場で優れた活動を実践し、子どもたちの成長・発達に寄与している先生方の実像は、ともすれば教育に関わる様々な問題や事件の陰に隠れ、社会一般には充分に伝わっておりません。本賞は、子どもたちの教育に真摯に取り組む「がんばる」先生の実践を募集し、それを広く顕彰・発表することで、先生自身の更なる成長と、学校教育の発展に寄与することを目的としています。

募集は6月から10月中旬にかけて行われ、教育関係者らによる2段階の審査を経て、翌年3月に東京新聞紙面紙上にて受賞作品10点を発表します。受賞者には、賞状・副賞ならびに賞金(1件20万円)が贈られます。

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