学力向上は一瞬で起こる -勉強は集中するトレーニングである-(陰山英男先生)

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、平成25年12月23日に行なわれた、徹底反復研究会in滋賀で陰山英男先生がプレゼンテーションされた内容をもとにEDUPEDIA編集者(杉本大昂)が編集しています。

2 陰山メソッドで学力向上改革をしている地域の状況

現在、徹底反復学習で飛躍的に学力を伸ばしている地域は九州です。ここ最近では、福岡県の飯塚市が全市をあげて「陰山メソッド」を導入しています。飯塚市の教育委員会から学力向上のアドバイザーを依頼されたのは、2012年11月の頃でした。そこから学力向上改革に取り組み、現段階で進めている学習スケジュールをすべて辞めてもらい、私が出した方針でやってもらいました。すると、2013年4月に行なわれた学力調査でいきなり成果が出ました。今まで、全国最下位クラスの学力水準だったものが、小学校の国語A・B、算数A・Bとすべての調査において全国平均になりました。とりわけ、国語Aに関しては、いきなり全国平均を超えてしまったのです。

3 学力向上は一瞬で起こる

例えば、子どもたちがダラダラと分数の勉強をしているとしたら、それは分数を学習しているのではなく、「ダラダラを学習している」といえるのです。つまり、行き着いた結論は、「勉強は集中するトレーニングである」ということです。ですので、集中のない学習や授業であれば、やり方を変えなければいけません。そういう意味では、集中することが勉強だという観点からものを考えれば、「いい授業」の視点も変わってきます。
 
では、どんな授業が集中力や学力を高める授業なのでしょうか。それは、「できる」の概念をまず変えることから始まると考えます。私は、「さっとできる」ということが出来て初めて、「できる」と位置づけます。ある小学校で通分の計算のコツを教える機会がありました。そこで、「30秒で1問解けるようにしよう」ということで、計算問題を子どもたちに解いてもらいました。はじめ、出来たのは30人中2人です。そして、次に裏技を教えました。しかし、30秒以内にできたのは4人でした。通常ならここで、「30秒以内には解けないが、全員出来るようになったのだから」と次の問題に進みたくなりますよね。しかし、私はもう一度同じ問題を解かせました。すると、何度も同じ問題を解かせますので、子ども達も、「これならできる!」ということで集中してくるのです。子どもにはその集中力を一瞬のうちに自分のものにして、「突き抜けて」いく瞬間というものがあるんです。その突き抜けに、何回目に出会うかは子どもによって違うのですが、どこかで突き抜けてくるものです。
 
結局その時は、同じ問題を7回解かせました。すると、30人中28人が30秒で出来るようになりました。こうして次の問題を解かせると、30人中24人くらいの子どもが30秒以内に出来るようになりました。このように、最高度の集中する瞬間をどう子ども達に与えるのかを工夫することが大切なのです。
 
では、集中はどのように生まれるのか、その集中が生まれるメカニズムについてお話します。集中しているということ、それはリラックスしているということです。では、リラックスさせるための条件とは何でしょう。それがこの3つです(図1)。
 
まず1つ目に、やることの見通しが持てること。子どもはやることの見通しが持てれば、教師の授業にもついてきてくれますし、少し難しい問題でも一生懸命解こうと頑張ってくれます。だから教師は、「この宿題をやれば、この問題を解ければ、学力が伸びる」というように自信を持って、子どもたちに宿題を与えたり、問題を提示出来るようにする必要があります。すると、子どもたちも教師を信頼し、前向きに勉強してくれます。

2つ目に、応援されている環境があること。これは子どもだけではありませんよね。誰かに支えてもらえていると分かると、リラックスできます。その環境を意図的に作りあげる工夫が必要です。

そして最後に、成功体験があることです。よく、成功体験というと汗と涙、努力した上での成功というように、スポコンアニメのようなものだけが成功体験のように思われます。しかし、例えば、1+1は?「2」と子どもが答えたら、「おお!すごいなー!」と言って驚いてあげるだけでも十分な成功体験になるのです。だから、どんな小さなことでもいいので、成功体験を持たせるように工夫してみてください。

図1↓

4 学力は「宿題」で決まる

よく、学力は授業で決まるといわれますが、確かに、それも重要です。しかし私は、宿題も非常に大切だと考えています。なぜなら、最終的に問題は自分で解かなければならないからです。
 
宿題は基本的に一人でやりますよね。だから、宿題をする中でその日1日の授業内容を確実に理解・習得しておかなければいけません(図2)。そういう点において、教材作りが学力向上の要になってくるのですが、私が作成した陰山ドリル(問題プリント)と普通のドリルの違いは何なのでしょうか。
 
普通のドリルは、教科書や学習指導要領を見て作られています。しかし私の場合は、授業中に「この子はここができていない。この子はここが苦手。全体的にはここの理解が甘い」などということを考えながら子ども達を観察します。そして授業終了後、その子ども達の状況をもとに、わずか5分から10分の時間でプリントを作っていました。つまり、「子どもの実態に応じた問題プリントを作っていた」のです。だから、皆さんも子どもたちのつまずきに応じたドリルを作って欲しいと思います。

図2↓

5 編集後記

私は、立命館大学にいたころ「厳しい教育環境(文化的・経済的に低位の)にある家庭の子どもの学力はいかにして下支えすればいいのか」という研究をしていたので、陰山先生の学力向上に関する理論や実践、メソッドはとても興味深いものがありました。「勉強は集中するトレーニングだ」や「学力は宿題で決まる」という教育実践を理論化した発言は、とても具体的であるとともに説得力がありました。この先生のプレゼンテーションでは、大学の授業では味わえない現実に即した一味違ったお話を聞くことができました。
平成26年5月14日 EDUPEDIA編集者:杉本大昂

6 講師プロフィール

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。・兵庫県朝来(あさご)町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復練習や規則正しい生活習慣で基礎学力の向上を目指す「陰山メソッド」を確立し脚光を浴びる。

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