1 はじめに
「さけが大きくなるまで」という教材は「あの70センチメートルほどもある魚は、そこまでどのようにして大きくなったのでしょう」という課題で、鮭の成長の様子が順序よく書かれている。
この教材の主なねらいは、鮭が、「いつ」「どこで」「どのように」成長してるのかを正しく読みとることである。そこで、川や滝を作ってその中で鮭の泳ぐ様子を真似したいと考えた。
2 「ねらい」を達成するために
1.表紙のページ作り
まず最初に表紙のページ作りをした。本文を何回か読んだところで、ノートへ学習の始まりを表す単元の表紙を描いた。
2.「どこで」を探す。
問いかけの例:文の中に川や海などを鮭がいる場所を探してみましょう
すると、「海」、「川上」、「滝」、「川口」、「川」、「北の海」 などを文中から見つけることができた。
3.「いつ」、「大きさ」について考える
問いかけの例:鮭の様子が変わっていくものには大きさなどがありますね。[大きさ]を表している言葉を探そう
※[大きさ]は○○センチメートルという言葉、[いつ]は一カ月、1年など時間を表す言葉であることを補足して示した。子どもたちは本を読みながら言葉を抜き書きしていくのであるが、このように特定の語句に注目して読むことが好きである。
子どもたちが文中で見つけた言葉
[大きさ]…鮭の大きさ
- 70センチメートル
- 50センチメートルくらい
- 2センチメートルくらい
- 10センチメートルくらい
[いつ]…時を表す言葉
- 秋になるころ
- 冬の間に
- 春になるころ
- 一カ月くらいの間
- いく日もいく日もかかって
- 3年も4年も
こうして、「いつ」「どこで」「どのように」という3つに注目して見つけた言葉を関連させていくことで、文と文のつながりが見えてくるだろう。
4.ポイントとなる言葉
◆課題提示文
2行目:どこで生まれどのように大きくなったのでしょう。
◆文中の数字
2行目:七十センチメートル
5行目:三メートルのたき
7行目:ふかさが五十センチ
9行目:大きさは二センチ、三センチ
11行目:五センチ
14行目:十センチ
◆さけの動き
4行目:いきおいよく
5行目:のりこえて
6行目:たどりつく、おびれをふるわせて
10行目:赤いぐみのようなもの
16行目:ぐんぐん
5.立ち止まらせたい言葉
- 時やその経過を表す言葉
- 主語
- おとなのさけはたくさんあつまって
- 海から川へやってきます
- いきおいよく、のりこえて、川上へ川上へ
- おびれをふるわせて
- あながふかさ五十センチメートル
- それ(ぐみ)がなくなって
- ぶじに生きのこって大きくなったさけ
- 海をおよぎまわる
6.授業をする際のアイディア
- 時や場所を表す言葉を見つけて表に埋めてみよう。
- 「いつ」さがし「どこ」さがし
→アトランダムに出して、表に順番ごとまとめていく
- 7行目:「ふかさが五十センチメートルぐらいになると、そのあなのそこにたまごをたくさんうんで五十センチメートルの穴から出てこれるのですか? 」という文に関連してのさらなる問いかけ。
- 川のぼりは楽なものか?
- 川を下るのに幾日もかかるのはなぜか?大人は登ってきたのに
- 何でぐみみたいなものがついているのか?
- いよいよのとき、さけはなんと言っているか?
- 川と海とどちらが住みやすいか?
- 海は広いのにどうして自分の川に戻ってこれるのか? → 不思議さ
- 19行目の文は、どこに続くのか?
- 主語さがし、これは誰のことでしょう?
- シャベルで穴を掘ってみよう
- さけは何粒生まれて、何匹生き残るのか?
3 一覧表づくり
この説明文は、鮭の成長の様子が時間をもって順序よく書かれている。鮭はその成長に合わせて住む場所を変えていく。
そこで下のような一覧表を作って、[いつ][どこに][どのような様子]で生活しているのかをまとめることにした。
<一覧表>
この表を埋めていく中で問題になったのは、二の場面にある「三メートル」、「五十センチメートル」であった。鮭の大きさとして三メートル、五十センチメートルがあげられたのである。
そこで、以下のような声掛けを行った。
- 三メートルや五十センチメートルは鮭の大きさではない
- 大きさや様子とは鮭についてだから滝が入ってはおかしい
- 大きさは鮭の大きさだから三メートルや五十センチメートルは鮭の大きさではない
すると初めは三センチメートル、五十センチメートルと言っていた子たちもこの意見を聞いて考えを変更した。
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5 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
6 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
7 編集後記
表紙となる絵を描いてみたり、キーワードを示して適宜アドバイスをするなどの工夫で、より子どもたちにとって魅力的な授業になると思います。
さらに、その工夫によって子どもたちを教科書の内容に惹きつけて、主体的に授業に取り組めるようになり、素晴らしいと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 嶋村 弥寿)
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