夕鶴2(シリウス)

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作成者: delpippoさん

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

よひょうがお金をほしいわけ

よひょうは誰のためにお金がほしかったのだろう(※青色=教師の発問/以下同様)

< 自分自身のため > < つうのため > という2つの考えが出されました。
 
< 自分自身のため > 24人

  • いばっていっているし、自分だけお金を使いたかったと思う
  • 「そのことばっかりでした」と書いてあるから。

< つうのため > 7人

  • つうのためだと思うんだけれど、よひょうが都でお金もうけをしてくれば、もう働かなくてもいいし、2人で仲よく暮らせると思う。だからお金がほしかったと思う。

 私はこの意見にハッとしました。お金があるからといって幸せだとは限らないが、幸せになるにはお金が必要である、というのは真実だからです。このことを、この子は自分なりに主張していたのではないでしょうか?
 
 13・14の場面について学習をしました。悲しみのあまり祈り願い、布をもう一枚織ろうと決心するつうの心を読みとるのが主なねらいです。

つうは、ぞうりをはいて外へ出たと思いますか

教科書の挿し絵では、足の部分がはっきりとは見えません。
< はいていない > 30人

  • つうは、すごくびっくりして外へ出たと思う。
  • 思わずと書いてあるから、わざわざくつなんかはかないよ
  • お願いです!と叫ぶことしか考えつかなかったと思う。

< はいている > 6人

  • 狂ったようにと書いてあって、狂っていたら、もうぞうりなんかはかないと思う。狂っていなければ、ちゃんとぞうりを履くと思う。

この子は文章中から、つうの必死の様子を言葉でとらえました。この意見を聞くとたちまち「賛成」「つけくわえ」という手が上がりました。次につうが布を織る決心をする場面では

つうは、よひょうに恩返しをするためにやってきたのだろうか

と、尋ねました。子どもたちは「鶴の恩返し」のイメージが強く、この「夕鶴」を読んでいます。そのため < 恩返しにきた > < 恩返しにきたのではない > は、ちょうど半分に分かれました。
 
< 恩返しにきた >

  • よひょうが助けてくれたから、よひょうのところへ来たのだ
  • 助けてもらわなければ、こなかったはずだ

 
< 恩返しにきたのではない >

  • 恩返しをしたらすぐに帰ってしまう。
  • 恩返しに来たんではなくて、お嫁にきたんだ。
  • よひょうと一緒に楽しく暮らそうと思ってきたんだ。

やがて子どもたちは、 < 恩返しにきた > から < こない > へと考えを変えていきました。その理由として、

  • やさしいよひょうが好きになって、一緒に暮らしたいと思って結婚したんだ。
  • ただの恩返しだったら、織っているところをのぞいてはだめよ、と何回も言わなかったと思う。
  • 恩返しなら正体がばれたっていい。

 
最終的な意見を聞いてみると、次のような意見分布になりました。
< 恩返しにきた >      14人
< 恩返しにきたのではない > 22人

風船で表すよひょうの気持ち

15の場面の学習をしました。ついによひょうが、はたおりの部屋をのぞいてしまう場面です。よひょうの気持ちが最も高まる場面です。

戸を開けようとしたときのよひょうの心を紙に描いてみよう

紙を配ると、みな黙々と書いていました。一人で20個近くも描いた子がいました。

よひょうはつうが部屋に入ったあと、すぐにのぞいたのでしょうか

< 入っていない > と考えた子がほとんどでした。よひょうの気持ちを劇であらわしてくれた子がいました。

  • 戸の前に行ってウロウロ、キョロキョロしていた。そのあと、ほんの少しだけ戸を開けてのぞき込むまねをした。

よひょうが、躊躇しながら戸を開けたことを表現したかったようです。次に私はポケットから風船を取り出して、

風船だったらどうふくらんだのでしょう

と、尋ねました。何人かの子が風船を受け取り考えを発表しました。どの子の風船も膨らんだりしぼんだりしたあと、やがて爆(は)ぜそうに膨らみました。爆(は)ぜそうになる度に「きゃー」の声があがりました。
 よひょうの心は「見たい、知りたい」という気持ちが一気に膨らんだのではなく、迷い悩みながら、のぞこうとする気持ちが膨らんでいったことを捉えていました

あなたがよひょうだったら、部屋をのぞくと思いますか

予想に反し、よひょうに対して好意的な考えが多く出ました。どの子も自分の経験をもとに話しました。

  • ぼくだって、ダメって言われたらだんだん見たくなる
  • こそこそ話をしていると、聞きたくなっちゃう
  • お父さん、いつも仕事見ちゃダメって言うんだよ。だけど見ちゃう。

 よひょうだって人間です。ダメと言われるものほど見たくなるのが人情というものであしょう。そんなよひょうの人間的な弱さを子どもたちは否定しませんでした。むしろ「ああ、その気持ちよくわかるなあ」と共感したようでした。
 この物語もクライマックスに近づいてきました。つうとよひょうの気持ちはどう揺れ動いていくのでしょう。

よひょうはつうが鶴だということに気づいたか

 夕鶴もいよいよクライマックスを迎えました。お互いに好きなのに結局は別れなければならない矛盾。これが作品のテーマだと思われます

よひょうはつうが鶴だということに気づいたでしょうか?

初めの感想のときには「つうが鶴だということを知ってしまった」という感想が多くありました。ところが現在では < 気づいていない > と考える子が大多数でした。文章をもとに、実に鋭い意見が出ました。

< 気づいていない >

  • 「つうはどこへ行った?」と鶴を見たあともつうを捜しているから。
  • つうが鶴だとわかっていれば、「ぐったりするほど」つうを捜したりしない
  • 20の場面で「つうではないのでしょうか?」と書いてあり、鶴ですとはっきり言いきっていないから。
  • うっすらと消えていくつうを見て、人間ならそんなことはないので「どうしたんだ」と驚くと思う。

< 気づいた >

  • やっぱりやっぱりよひょうは、つうが鶴だと気づいたと思うの。だけどよひょうはそのことを信じたくなくて知らないふりをして、このようにしゃべったんだと思う

反対意見ばかりの中で、 < 気づいた > 派は、自分の考えを堂々と発表することができました。17の場面では、つうがまだよひょうのことを好きなことを押さえたあと、次のように尋ねました。

つうは辛くてよひょうとお別れをしましたね。つうは鶴とわかってしまったことが辛かったのでしょうか?それともよひょうとの約束を破られたことが辛かったのでしょうか?

子どもたちは、「難しい、難しい」の連発でなかなか考えを決めることができませんでした。が、ようやく < 鶴とわかったから >< 約束を破られたから > という考えが出されました。置く場所がなかったのか「ここでいいや」と< 鶴とわかったから > < 約束を破られたから > の中間に置いた子が現れました。

< 鶴とわかったから >は、

  • 自分の姿を見られたから
  • 人間と鶴が一緒に暮らすなんて神様が許さない

 
< 約束を破られたから >

  • よひょうは2回も約束を破ってしまい、正直者と信じられなくなった。

 
< 中間 >

  • 私はね、両方だと思うんだよ。よひょうが部屋をのぞいたでしょ。のぞいちゃったもんだから、鶴を見ちゃったし、約束も破っちゃったと思う。

 
すると、「あーっ」という声と「そうか」という声があがりました。この発言がきっかけになって < 中間 > 派の子たちが増えていきました。初めに4人しかいなかった < 中間 > の考えが、最終的には大多数の支持を受けました。  

最後の場面の読み方は?

物語の最後では、読み方の違いを考えさせることによって、よひょうの気持ちに迫りました。

「どうしたんだ?」と「どうしたんだ!」「おい!つう!つう!つう!」とつうつうつうー

は、同じ文字なので、同じ読み方でいいですか
わずかな表現の違いの中にも、よひょうの気持ちが表れていることや、19、20の場面では

よひょうがまだつうのことを好きなのがわかるのはどの言葉ですか。
夕鶴の中心人物(主人公)は誰ですか

と、尋ねました。中心人物については、つうのことが書いてある場面、つうの視点に立った文章が多いことがわかりました。またこの物語は、場面ごとにつうとよひょうについて、交互に書かれています。このことを話すと、ホーッというような表情で、黒板の字を確かめるように見ていました。

夕鶴の感想を書きましょう
子どもたちは、「夕鶴」のテーマを子どもなりにつかんだようです。まだ愛とか恋という言葉を使わないが、自分なりの表現をしていました。

  • きっと、つうはよひょうのことが、大大大大好きだったのか。きっとそうだよ。よひょうもきっとつうのことが好きなのです。

と、お互いが好きなこと。そして愛する者同士が別れる矛盾。

  • 気づいたことは、好き同士でも別れるというところです
  • かわいそうだなあと思ったことは、最後はお別れの時につうがよひょうのことを好きでもお別れをしたことです。その時よひょうは泣いていたのかなあ

そして、夕鶴が単なる恩返しではなく愛の物語であることを

  • そんなにやさしいつうなら、私は何日でもつうと暮らしてやろうと思う。私は鶴を助けてやったとしたら恩返しなんかいらないと思います。
  • つうは正体がばれてもよひょうに誰にも言わないでと言って、よひょうが言わなければ一緒に暮らしてもいいと思います。

しかし、一緒に暮らすことについては、子どもの言葉によれば「神様が許さない」のです。学習全体を終わって、

  • 私はいろいろな本をたくさん読んできました。その中で私は「夕鶴」がとっても好きでした。どの本よりどの物語より、何より好きでした。1~3年の中で、この夕鶴が一番よかったです。

という感想が寄せられました。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

この物語を読むうえで欠かせない、つうとよひょうの気持ち。その変化の様子を教師の働きかけを通して、自分と重ね合わせたりしながら子どもたちなりに、文章中の言動から読み解いています。その過程で、絵を描いたり、風船を使ったりと、子どもたちの想像力を刺激して物語の世界を膨らませる手法が新鮮でした。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 河村寛希)

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