チャレンジし続ける学校を作るには(箕面高校管理職インタビュー)

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作成者:Shota Uchiyama (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

2020年に向け教育改革が急速に進んでいます。その中で昨今、企業との教材開発や海外の大学生とのワークショップを積極的に実施し、有名な海外大学の進学実績をおさめて注目されている公立高校があります。本記事は、大阪府立箕面高校校長、日野田直彦氏をインタビューのもとに、箕面高校がどのような教育理念に基づき、どのような教育をしているかを紹介したものです。

2 インタビュー

マネジメント

——箕面高校ではどのようなことを軸に教育をしていますか?

本校では、「自尊心を高めること」「モチベーションを上げること」、その背景として「目的意識をしっかり持つこと」を軸に教育をしています。そのために、教師は生徒が本当の意味で自主性を高めるためにはどうすればいいか常に議論し続けています。日本の教育はテストや補習で拘束時間を増やし、生徒を縛ることによって、能力を伸ばそうとしています。しかし、拘束時間が少なくても「目的意識」と「モチべーションコントロール」を高めれば、生徒は主体的に学ぶようにようになります。 更に、補習を減らすことは教師の権利を守るためでもあります。長時間労働により、教師が元気でないから生徒も元気でなくなるという負のスパイラルが、いま日本中で起こっています。家族を大事にすること、自分を大事にすること、そして自分が勉強する時間を確保すること。それが教師のあるべき姿だと思います。そのために本校は補習をやめ、夏期講習もやめました。

——新しい取り組みを始めるためには、何かを減らさなければならないということですか。

そうです。何かしたかったら、その分何かを減らさないとダメなのです。まずは捨てるところから考えて、最低限必要なところだけを残してから新しいことを始める。「前からしていることを踏襲する」ということはなしです。何故それをやっているのかという哲学を、常に問い直すことが大事です。そこに根拠がないのならなくせばよいのです。伝統という言葉は思考停止の道具です。

——箕面高校は職員会議をする際、どのようなことに気をつけていますか?

本校では、各学年や各分掌がそれぞれの思いやリスクヘッジを考えたうえで提案をしたアイディアを最大限尊重しています。生徒に大きなリスクが起こる可能性がある場合は意見を言ってもいいけれど、それ以外は各学年や各分掌の責任です。そして、もし意見を言うなら必ず改善提案をつけてくださいと言っています。要は議論のコントロールの仕方が分かっていないと会議は長引くのです。今、箕面高校の職員会議は提案型会議です。つまり、提案してきたものに関してNOは基本的になしで全部YESです。失敗や変化を恐れず、新たなことに挑戦してみたらいいのです。
さらに当校の会議の目標として、「個人の意見は1分以内で言う」というものがあります。何か意見を話したければ1分にまとめなければならないのです。そのため緊張感のある会議になります。

——箕面高校では教師同士の連携を高めるために何をしてますか?

会議の場以外で、意思疎通をしやすくしました。学校の教師は職人集団なので、各人それぞれが思っていることを出してくれる環境作りも大事です。そのために、箕面高校の職員室を“フリーアドレス”に変えました。どの席に誰が座ってもいいというものです。学年職員室と呼ばれる場所は全てフラットにして、「誰がどこに座っても良い、机には私物を置かないように」と言っています。教師にとって一番大切なことは、会議以外の雑談です。雑談の中で生徒について情報共有することです。

主体的・対話的な学び

——外部の企業とどのように提携し授業の協働開発をしましたか?

ファーストステップは、本校の教師の中で興味を持っている人と企業の方で「協働開発」してみます。実際に協働開発をしてみて、教師方が良かったと感じるもの自然と通常授業にも採用していきます。例えばある企業と協働開発した授業は英語だけがテーマではなく、マインドセット(経験、教育、先入観などから形成される思考様式)やアカデミックスキル(学問をするための技術)など、全教科の先生が入れる授業でした。

つまり、学校という「見えない壁」を取っ払っいました。学校に関わりたい民間企業の方がいれば、協力して常に一緒に教材を開発する。そして、生徒も巻き込んでいきます。「これは答えがない授業だから、フィードバックがほしい」と生徒に毎回言っています。「フィードバック・マインドセットって聞いたことありますか?」 学校現場に限らず、社会組織ではフィードバックという発想が案外ありません。本校はそれができているのです。マネージャーと先生と生徒が一体になってフィードバックをし続けています。「生徒」「教師」「校長」もただの役割でしかありません。僕の役割は責任を取ることだけです。偉いわけでも頭がいいわけでもありません。強い組織を作るためには、学校に外部の方々を上手に混ぜ込んでいくことが大事です。そのためには学校主導のフィードバック・マインドセットを持っている必要があります。

世界の「組織」でいま盛んに言われていることが2つあります。
1. グロス・マインドセット
2. フィックス・マインドセットです。
20世紀はフィックス・マインドセットの時代でした。どれだけ大人や組織が求める人材になれるか、が全てでした。しかし今、必要な考えはグロス・マインドセットです。学校を踏み台にして生徒が自発的に様々なことに挑戦し、高い目標を達成する必要があります。

——日本の多くの学校はフィックス・マインドセットですね。今の大学入試の問題も出題者が期待することを問う内容が多いと思います。

そうです。筆者の意見と見せかけて出題者の意見を聞く問題は多いですね。記号ア~エから正しい答えを選択せよという問題はその一例ですね。

大学入試は海外の入試制度をもっと参考にすることが大事だと思います。海外では、大学受験すらエッセイが基本です。例えば、ある海外大学の入試は100words一題で合否が決まります。「君はいったい誰だ。何がしたいのか。社会にどう貢献するのか」というような問いに4文で答えないといけないわけです。まさに、哲学ですね。本校では業務の効率化を図り、教師が一人一人の生徒に向き合う時間を増やしました。教師と生徒が対話や議論を繰り返して得られる新しい学びこそが、今、必要な教育だと思います。

管理職の役割

——日野田校長が管理職をしていく中で、チームを創り上げていく時に困難だったことはたくさんあったと思います。そんな中で、日野田校長が教師から信頼を勝ち取るために普段から意識していたことは何ですか?

私が箕面高校に赴任した時は36歳と若かったこともあり、ネガティブな反応もありました。若い民間人校長として高校に一人で赴任することになったとしたら、あなたはどう行動して教師から信頼を勝ち取りますか?

——自分は敵ではないと教員にアピールします。

アピールしても教員がそれを認めてくれますか?アピールするのは簡単ですが、中々上手くいきません。私が赴任した時、教師から信頼を勝ち取るために、対話を重ねることから始めました。お菓子とコーヒーを持って先生のところへ行って、何か困っていることやしたいことはないか聞いてまわることです。一度で上手くいかない時もありましたが、何度も続けていると、やがてあの校長先生は悪い人ではないと少しずつ心を開いてくれるようになりました。

——私立の学校に比べ、公立の学校は学校の特色を出しにくいと感じます。教員の移動が激しい中でどのように学校の特色を維持していくかの工夫を教えていただきたいです。

箕面高校には様々なプロジェクトがありますが、実は発案は教師からです。私は、教師方がしたかったことを抽出して少人数のミニマムプロジェクトを複数作り、デザインをしただけです。実行は先生方にまかせています。つまり、 ボトムアップ式で多くの教師がプロジェクトに関わっているのです。もし、プロジェクトをトップダウンで進めてしまうと、まとめていた先生が居なくなってしまった途端にそのマインド・スキルは途切れてしまいます。常に全員とはいかなくても、多くの人がプロジェクトに関わり、次の世代に伝えることをしながら、同時にプロジェクトを回すという事を考えていかないとプロジェクトは廃れてしまいます。大企業と同様に、人の入れ替わりが激しい中で、どのように伝統文化を作るかを考え、最低限のシステムを作るつもりでプロジェクトをまわす必要があります。

——管理職は学校をより良くするためにどのような姿勢で生徒や教師に関わるべきですか?

管理職の果たす役割は、チャレンジしやすい環境を生徒や教師に提供し、最後の全責任を校長が取るという姿勢を持つことだと思います。私からの業務命令はただ1つだけです。チャレンジしてください。失敗したら全責任は僕が取ります。成功すればそれは教員のおかげです。生徒が怪我したり事故がおこらない限り、とりあえずチャレンジしてみたら良いのです。

——最後に教員志望者にアドバイスをください。

  1. ワクワクすること
  2. 他人の悪口を言わないこと
  3. 他人ごとにしないこと

以上の三つのことを前提に様々なことにチャレンジしてみてください。私も10年前には校長になるとは思っていませんでした。目の前のことを解決しようと必死になっている内に気づいたらこうなっていただけです。元々、日本人の能力は世界的にも高いと思います。大切なことは、日本の困難な状況をポジティブに捉えて、大航海時代だと思って邁進する「勇気」だと思います。

3 日野田直彦校長のプロフィール

1977年生まれ。帰国子女。帰国後、同志社国際中学・高校に入学し、当時の日本の一般的な教育とは一線を画した教育を受ける。同志社大学卒業後、馬渕教室入社。2008年奈良学園登美ヶ丘中学・高校の立ち上げに携わる。2014年大阪府の公募等校長制度に応じ、大阪府立箕面高等学校の校長に着任。着任後、全国の公立学校で最年少(36歳)の校長。着任3年目に入り、海外トップ大学への進学者を含め、顕著な結果が出始めている。(2017年9月27日時点のものです)

4 編集後記

校長、教師、生徒が挑戦し続ける環境を作るために必要なことがインタビューからわかりました。ぜひ、チーム—のリーダーとして動く際に参考にしてみてはいかがでしょうか。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 内山翔太)

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