先生の働き方改革 〜大阪府立箕面高等学校 日野田直彦校長の実践〜

GOOD!
17316
回閲覧
20
GOOD

作成者:石川 桃子 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

教員の働き方が問題視され、働き方改革が急務となっている教育現場。大阪府立箕面高等学校の校長(取材時) 日野田直彦氏は、先生の働き方改革を実行し、同時に教育改善も達成されました。どのように先生方の負担を減らしていったのか、詳しいお話を伺いました。

↓以前、箕面高校の教育改善について取材した記事です。こちらも合わせてご覧ください。
チャレンジし続ける学校を作るには(箕面高校管理職インタビュー)
また、
「学校の多忙化」の改善(業務改善) ~「残業の見える化」から始める
も、学校の多忙化の問題について書かれた記事です。ご参照ください。

2 働き方改革① 授業時間・行事の削減&補習の廃止

箕面高校では、それまで行われていた授業時間外の補習をやめたことにより、先生・生徒の双方の負担をなくすことに成功しました。また、1コマあたりの授業時間を45分→50分に変える代わりにコマ数を減らすことで、全体の授業時間の大幅な削減も達成しました。「学習指導要領を守れているんですか」という声が多くありますが、きちんと守れています。今よりコマ数を減らしても指導要領の条件を満たせるのに、これ以上減らしたら満たせなくなる、という思い込みがあるんですね。最初は批判や抵抗の声もありましたが、結局授業時間や補習を削っても生徒の成績は上がったので、そういった声もなくなりました。

授業時間の削減に加えて、行事も減らしました。生徒たちのキャラクターや認識、先生方の年齢階層の変化などがあるにもかかわらず、理由が明確にない行事などに関しては、議論を進め、理由が説明できないものは、合意のもとに削減してきました。

3 働き方改革② マークシート式テストの導入

記述式のテストは、採点に非常に時間がかかります。そういうテストの採点も、先生が忙しい原因の一つでした。また、定期テストが公文書扱いされることになりつつあり、紛失などによる懲戒などがある状況があります。一方で、勤務時間が限られている中で、物理的に採点をこなすことが難しく、事故が起こりやすい環境に先生たちはさらされています。このような極めて厳しい環境の中で、記述式採点に関する議論を進めました。

箕面高校では、定期テストにマークシートを導入しました。これにより、採点にかかる時間が大幅に減ったうえに、正答率などの詳しいデータを作る余裕も出てきました。特に年配の先生方は、初めはマークシート式の試験に抵抗を示していました。しかし、定期テスト以外の場面での記述解答の小テストを導入するなど補完することを前提に、マークシート式の試験が業務の効率化に役立ち、成績は向上すると実感してからは、積極的に活用するようになりました。

記述式のテストを実施したい場合は、授業中に行い、隣の人と交換して採点、などの方法を取るようにしています。先生方の負担を増やしてまでわざわざ定期テストで実施するものではありません。

そもそも定期テストは学習指導要領に書かれておらず、実施する義務はありません。また、テストと一部の平常点だけで成績をつけることは、世界的にみると極めて乱暴なものだ、と海外の大学から厳しい批判にさらされています。そのため、海外の優秀な生徒は日本の学校に通いません。

4 働き方改革③ オープンな職員室へ

セクション別の密室会議をやめ、全ての会議を職員室で、先生全員に公開する形で行なっています。時には図書室でやることもあります。これによって、学校でありがちな秘密会議や、他の分掌・学年に対する批判などが少なくなりました。また、批判するだけではなく、必ず対案を用意して下さい、と強調しています。現在では、箕面高校は先生方が全てオープンに語り合える環境になっています。

さらに、職員室の先生一人一人の机に高く積まれていた教材を無くし、誰がどこの机を使ってもいいように変えました。それまでは隣の先生に話しかけるのもためらってしまうような閉鎖的な空間でしたが、これにより先生同士が常時話しやすい環境になりました。

▲誰がどこに座ってもよい箕面高校の職員室

5 働き方改革達成の秘訣

改革を行う際には、一気に全て変えるのでなく、ゆっくり段階を踏んで順番に変えていくことが必要です。たとえば、補習をなくそうとするなら、一度に全ての補習をなくすのではなく、まずは英語・数学以外の補習からなくすというような工夫が必要です。

また、先生たちと議論するのにも工夫が必要です。何日もかかってよいので、ゆっくり段階を踏みながら同じ話をし続けるのです。そうして同じ話をし続けながら、だんだん話のトーンを上げていくとよいです。そしてその際には、周到な準備が必要です。たとえば、シナリオライティングが非常に重要になります。先生方の属性をプロファイリングし、「あの先生ならきっとこう意見をしてくるのではないか?」「このような想いになるのではないか?」ということを想定して、すべての意見に耐えられる準備をします。

6 改革のために管理職からできること

今の学校には、「失敗できない」という風潮があります。たとえば「補習をやめたい」と心の中では思っていても、補習をやめることで生徒の成績が下がるという失敗が怖いので、口に出して言えないという先生も多くいるはずです。そのような先生には、管理職から「補習をやめても生徒の成績は変わらないから安心して」と言うことが大切です。管理職が「大丈夫だ」と言い続けることが、先生方の「改革をしてもよいのだ」という安心感につながります。

管理職にとって大切なことは、ボトムアップとヒアリングです。先生方の話をしっかりと聞き、先生方のモチベーションを上げていくこと、そして管理職自身が先生方としっかりコミュニケーションをとることが大切になります。

7 これから改革を目指す先生方へ

PDCAサイクルの重要性について世間ではよく言われますが、教育改革をするなら、Planしている暇があったらまず行動してみたほうがよいです。そのかわりに、Reflectを入れるのです。

今の教育現場には、先生になった当初は学校を改革したいという熱意があっても、何年か経つとその熱意が薄れている先生が多いです。しかし、大切なことは、何度もトライアンドエラーを繰り返しながらも、諦めないことです。

8 日野田直彦校長のプロフィール

1977年生まれ。帰国子女。帰国後、同志社国際中学・高校に入学し、当時の日本の一般的な教育とは一線を画した教育を受ける。同志社大学卒業後、馬渕教室入社。2008年奈良学園登美ヶ丘中学・高校の立ち上げに携わる。2014年大阪府の公募等校長制度に応じ、大阪府立箕面高等学校の校長に着任。着任後、全国の公立学校で最年少(36歳)の校長。着任3年目に入り、海外トップ大学への進学者を含め、顕著な結果が出始めている。(2017年9月27日時点のものです)

9 編集後記

公立高校でありながら大改革を達成した箕面高校日野田校長のインタビューを紹介しました。失敗できない風潮のある学校で働き方改革を成し遂げることは並大抵の覚悟ではできないことであるとは思いますが、不可能なことではないと証明されました。

学校業界はブラックと揶揄される世の中です。この前例にならい、多くの学校で働き方改革が成されることが、日本の先生自身の幸せのため、そして生徒の幸せのためにも必要不可欠なことであると思います。この記事がそうした改革の一助となれば幸いです。

最後になりましたが、本取材でお世話になりました、学校働き方研究所(https://camp-fire.jp/projects/view/32602)の杉山史哲さんに御礼申し上げます。

(取材・編集:EDUPEDIA編集部 石川桃子、津田佳歩)

コメント

コメントはまだありません

    より良い実践のためには、あなたの励ましや建設的な対案が欠かせません。
    ログインして、ぜひコメント欄をご活用ください。