受験生と教育機関をマッチング!学校・塾をえらぶための百科事典(教育図鑑株式会社 矢野一輝さん)

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目次

1 はじめに

本記事は、教育図鑑株式会社代表取締役の矢野一輝さんにインタビューし記事化したものです。進路指導で悩んでいる先生方に向けて、一都三県の中学校・塾を選ぶための百科事典を掲載している教育図鑑についてご紹介します。

2 教育図鑑株式会社とは

教育図鑑株式会社は、東京大学・京都造形芸術大学・日本電信電話株式会社の研究者たちによって構成された産学共同研究機関の研究主幹が2014年9月に立ち上げた大学発ベンチャー企業です。

教育を受けたい人と教育機関を結びつけるプラットフォーム『教育図鑑』をあらたに開発し、中学図鑑塾図鑑を運用されています。

3 中学図鑑・塾図鑑とは

中学図鑑は、教育図鑑運営事務局によって運営されているサイトです。中学校・中学受験・小学生対象の塾などに関する情報が掲載されています。その中学校で使われる教材や、生徒のノートの取り方、入試問題の傾向など学業に関わるものだけでなく、制服や通学路、部活動情報など、学校生活全般に関わる情報も掲載されており、その項目は400項目以上に上ります。ひとつの学校について網羅的に情報を掲載しているのが特徴です。

塾図鑑も同様、教育図鑑運営事務局によって運営されているサイトです。主に中学受験に焦点を絞り、中学受験専門塾の情報が掲載されています。その進学塾の合格実績・教室長へのインタビュー記事・塾講師による学校分析レポート記事などがあります。

2018年7月現在、教育図鑑は一都三県に渡って私立中学や公立中高一貫校を中心に取材し、内容を記事化しています。教育図鑑の社員だけでなく、大学生インターンに自分の卒業校に取材に行ってもらうなどして記事数を増やしています。掲載校は384校に上り、小学生会員は48,000人を超えています。

4 学校の中で利用できるコンテンツ

教育図鑑では、学校・塾ごとに先生、図書館司書、在校生、卒業生、保護者などさまざまな立場の方々にインタビューしています。教育内容や部活動、行事や設備などについて当事者のさまざまな工夫のプロセスや、生徒や保護者がそれに対しどう感想を持ったのかなど、具体的にわかるように構成されています。
またインタビューでは「ノートの取り方」が数多く採り上げられています。

日本女子大学附属中学校の事例を紹介します。

国語の椎野秀子先生の授業はとてもユニークで、通常あるはずの“板書”がありません。板書は先生からのメッセージで、生徒はメッセージ=板書の内容を覚えることに終始しがちです。しかし椎野先生は単にメッセージを覚えるのではなく「モヤモヤに対して自分なりの考えをまとめて」ほしいと思っています。だから各生徒は工夫し、何が大事なのか、どんなことが試験で聞かれるのかを自分なりに考えてノートをとる必要が生まれます。

日本女子大学附属中学校 椎野秀子先生インタビュー
「中学時代をスタートにして、たくさんの世界に会えるチャンスの種まきをしようと思っています」

ある生徒は、登場人物の心情などに焦点を当て「試験で聞かれそうなことを自分なりに作問→自分なりに答えをまとめる」ことをひたすら繰り返したそうです。

考えた作問(画像赤枠内)
1. 「なんだかよくわからない気持ち」とは?
2. なぜこのような動きをとったのか?
3. まとめ
4. 職場でのジョバンニの立場は?
5. ジョバンニのカンパネルラへの思い
6. この時の状況

現在、ノートは主にインタビューの中で採り上げられていますが、今後、「ノートの取り方」は独立した企画になり、学校ごとの教え方の違いを同じ単元で比較したり、中学受験に合格した人たちのノート術のアイデアをまとめて掲載していくそうです。

また、「入試問題解説」というコンテンツでは、塾講師に中学校の入試問題を解説していただき、その解説動画を掲載しています。

5 インタビュー

〇どのような課題意識からこのようなサービスを始められたのでしょうか?

矢野さん:現代日本の教育は複雑に課題が絡んでおり、解決の糸口が見えない状況です。

例えば、家庭の経済格差がそのまま生徒の学力格差に直結したり(教育格差)、学校の教員は教育以外の業務で疲弊したり(教員の多忙化)、解決しようにもどのように解決していけばよいのか分からない問題が山積しています。その中でも私は、学校経営を健全化したいと思っています。

昔京都造形芸術大学で勤務していたことがあるのですが、その際京都造形芸術大学が非常に工夫された教育実践をされていることを目の当たりにし、このような優れた実践を世の中に広めていかないといけない、顕在化させないといけないと考えました。もちろん当時も学校を広報するメディアはあったのですが、その多くが、熱心な受験生にターゲットを絞って学校を広報する、ある意味広告的なものになっていました。

そこで私は、その学校のいいところ(メリット)、悪いところ(デメリット)、工夫している取組みなどが細部にわたって客観的に掲載されたサイトを作って、受験生や保護者に本当に入りたい学校を選ぶときの材料にしてもらいたいと考えました。特に、学校の偏差値や社会的評価、イメージなどで進路選択をしてきた受験生やその保護者の方に教育図鑑を見て頂きたいと思っています。

〇教育図鑑は延べ400項目以上の内容で構成されていますが、どのように内容を選定したのでしょうか?

矢野さん:様々な立場の人にヒアリング調査を行いました。まず、教育図鑑のターゲットである受験生とその保護者の方に、「学校や塾に本当は聞きたいけれども聞けていないことは何ですか?」とお伺いしました。次に、教育図鑑の情報提供者である学校の先生と塾講師に、「受験生や保護者に本当は伝えたいけれども伝えられていないことは何ですか?」とお伺いしました。そして、教えてgoo様と提携を結び、中学受験に関するQ&Aを総ざらいして、ターゲットのニーズを洗い出していきました。このように調査してみると、実に多種多様な回答があり、それらは全て顕在化するべき内容だと私は思いました。

そこで、学校・塾についてこれから調べる方にも見やすいように、学校間で同じ観点を比較できるようなサイトにしようと考えました。教育図鑑では、すべての学校・塾に同じ質問をしてその内容を記事にすることで、ユーザーが学校間で比較できるようにしています。網羅的に掲載された情報の中から、その中からユーザーが自分の知りたい情報をピックアップして比較できる。そのようなサイト作りを心掛けています。

〇今後の事業展開について、どのようなビジョンをお持ちですか?

矢野さん:現在は中学図鑑・塾図鑑を一都三県の学校・塾で展開していますが、最終的には高校図鑑・高校受験塾バージョンの塾図鑑・大学図鑑・大学受験バージョンの塾図鑑・さらには社会人向けの社会教育図鑑・最後には小学校図鑑を作り、全国の学校を網羅していきたいと考えています。そして、教育図鑑をもとに進路選択をしてきた生徒を取材してその人のライフログを取り、小中高大に渡る進路選択の際に決め手となるのは何なのかを調査したいと考えています。教育図鑑を見れば学校や受験に関する教育情報がすべて掲載されている、そのようなサイトを目指したいと考えています。

6 プロフィール

矢野一輝さん(教育図鑑株式会社代表取締役)

東京大学大学院総合文化研究科修了
NTT本社 企画部、人材開発部、マルチメディアビジネス開発部を歴任
京都造形芸術大学准教授(社会学) 同大学大学院 芸術教育研究機構研究主幹
東京大学共同研究員
教育図鑑株式会社設立 代表取締役就任

NTT入社後、人材開発部を経て、マルチメディアビジネス開発部ではgoo、e-Learning戦略など当時最新の事業を担当。

京都造形芸術大学准教授/東京大学研究員に転身後は、教授業とともに受験生獲得広報の担当や、文部科学省助成5億円を獲得し“知および伝達と理解の構造化” の研究開発を行う。“コンピュータとネットワーク技術を使って大量の情報を調べ、各要素の間の関係性を明らかにし、利用可能にする”ことを目指す。
その中で、学校教育は高額商品であるにもかかわらずブラックボックス化していること、日本の教育は長年ほとんど変化していないことに気づき、中身を顕在化しネットワーク上で学校を見てもらい、教育を受ける側が多くの情報をもって比較した上で選ぶ、また学校側もどんどん外に良いコンテンツを発信できる環境を作り、教育を使ったデータマッチング、教育の自由化を行いたいという目的のもと2014年9月に教育図鑑を設立。

7 編集後記

教育図鑑には、その学校の特色はもちろん、学校の制服や通学路までも掲載しているとのことで、そのコンテンツの多さに驚きました。生徒一人ひとりが自分に合った教育を受けられるように、その進路選択のサポートをするメディアとして、もっと普及してほしいと思いました。(取材・編集:EDUPEDIA編集部 大森友暁)

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