【教育に関わる仕事の生の声、集めました vol.4】〜学習塾社員・與口直樹さんインタビュー〜

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目次

1 はじめに

この記事は、シリーズ【教育に関わる仕事の生の声、集めました】の一環として、学習塾社員の與口直樹(よぐちなおき)さんの仕事内容をインタビューしてまとめたものです。

◯シリーズ【教育に関わる仕事の生の声、集めました】とは◯
教育に関わる仕事はしたい、でもどんな風に考えて決めたらいいかわからない。そんな学生の方に向けて、教育に関わる仕事をしている社会人の方々にお仕事の内容について実際にお聞きしてその内容をまとめたのが、シリーズ【教育に関わる仕事の生の声、集めました】です。
教育に関わる仕事に携わっている方々が、その仕事にどんな風に取り組み、そしてどんな思いを持っているのか、その仕事の魅力や大変なところはいったい何なのか。そういった仕事に関する深い内容にまで踏み込み、その仕事に関わる人のリアルな声をお届けします。

この記事を読んだ学生の皆さんが、その仕事を身近に感じ、進路選択の参考になれば幸いです。

2 現在の職に就くまで

教育と地域をテーマに活動した学生時代

私は元々なんとなく教育に興味を持っていましたが、浪人時代、改めて自分が何をしたいのか考えてみました。ニュースを見たり、様々な人に会ったりした結果、やはり自分の関心は教育にあると感じ、早稲田大学の教育学部に入学しました。しかし、勉強していても専門分野となるとなかなか決めることができず、漠然とした興味だけを持ち続けていました。

そんな中、大学1年生の春休みに島根県海士町(あまちょう)を訪れました。海士町は人口2300人ぐらいの小さい離島ですが、島を教育から活性化させようと、島外の生徒を受け入れる「島留学」などの魅力的な取り組みをして話題となっていました。周りの勧めに乗り、旅行気分で行くことを決めました。しかし、そこで目の当たりにした地方における教育の厳しさと、それを乗り越えようと本気で取り組む大人の姿に心を打たれました。それだけでなく、地域としてのヴィジョンもありながら子どもの意思も尊重されている様子に、地域における教育の完成形を見た気がしました。

この体験から、私は「教育がアツい地域」に興味を持ち始め、自分も一緒に教育活動をしたいと思いました。

その後、地方でのサマースクールの運営や、まちづくりの支援、教育支援などを実際に行いました。中でも力を入れたのがキャリア教育のプログラム作成などの活動でした。活動場所の周りに大学がなく、大学生という存在自体が稀有な地域だったので、自分たちならいろいろなことができると感じました。

3 今の職場を選んだ理由

私は地方で活動しておりましたが、もともと日本の教育のあり方を少しでも変えたいという気持ちがありました。その中で特に強かった問題意識が、今の日本では教育にビジネスとしての価値があまり見出されず、お金が回っていないということです。 

実際に地域に入って活動する中で、NPOも自治体も、お金をうまく循環させられず補助金などに頼っていては生き残れないということを肌で感じました。子どもの人生のために継続した関わりが求められる教育業界こそ、お金になるような工夫をして持続可能にしなければならないのです。

そこで、私はまずビジネスの世界で視野を広げたい、お金をいただけるような価値のある商品・仕組みを作りたいと考え、教員免許は取っていましたが民間企業に就職することにしました。特に公教育のためのサービスを作りたいという思いがあり、そのために必要な公教育関連の情報、人脈、変えられるだけのリソース、新規事業のノウハウなどを持つ会社に就職しようと考え、今の会社にたどり着きました。初めから塾に興味があったわけではありませんでした

4 塾社員になってみて

塾社員の一日

教室勤務の社員の場合、夜遅くまで働く分出社も遅く、出勤は13:30です。生徒の対応が最優先なので、生徒の少ないうちにスタッフ間の打ち合わせを行い、授業前はメールチェックやご家庭との電話、事務作業、授業準備などを行います。17:00から授業が始まります。社員は授業に入らないときも、教室の安全管理、生徒の質問への対応、種々の事務作業などの仕事をしています。21:30くらいまで授業があり、そこから片付けをして帰宅します。

私が勤務している教室は新規のブランドを立ち上げようとする実験校のようなところです。大変なところも多いですが、新規事業をやってみたいという思いを買っていただき、それに応じたチャンスをいただいています。

塾社員の魅力

塾でしか果たせない役割

学生時代にやっていたキャリア教育は、モチベーションのタネをまくもので、その後のフォローまでは行うことができませんでした。そのため、その子がどのような努力をしてどう変化していくかは、見てみたかったのですが知らないままでした。

ところが現実問題として、実際にその幸せ・夢を掴みたいとなれば多くの努力が必要で、怠惰に流されがちな人間がそれを実現するには親身になって努力させてあげる存在が必要です。それが、塾の役目だと思っています。努力のさせ方には様々なものがありますが、塾では主にモチベーションの維持・向上と習慣化という形でその役目を担っています。

この役割は単発の出張授業などでは担うことができません。お金をいただいて継続的に関わらせていただいているという責任があるからこそ、担うことができるし、担わなくてはいけない。そこにはとても大きな意義があると思います。

柔軟なキャリア

塾では、授業をするという対子どもに特化する人もいれば、科目を学びやすくするための教材を作る部署に行ったり、新しいブランドを立ち上げたり、広報を司る部署に行ったりする人もいて、学習に関わるのであっても指向性や思いに応じて様々な進路があります。結論を保留することが必ずしも良いとは思いませんが、現場で働きながら自分が教育の中でも何をしたいのか考えることができます。これは学校と大きく違うところではないでしょうか。特に、私の会社では社員の「やりたい」を聞こうとする姿勢が強くあると思います。

塾講師の大変さ

塾で提供しているのはあくまで授業とそれに付随する面談などのフォローですが、保護者の方から時間外のフォローや自習・質問の対応などのサービスを求められることがあります。もちろん私たちも可能な範囲でお応えしているのですが、その無償のサービスの部分に高いレベルを求められてしまうこともあります。学校と同じで、子どものためにできることはしてあげたいけれど、キリがなくなってしまうのです。一方で学校と異なり、お客様に満足していただけないと大切に預かって目をかけていた子どもがいなくなってしまうわけですから、余計に少しでもサービスしたいということになり、業務が増えてしまいます。そのバランスが取れている人というのはやはり学校と同じで保護者・生徒との信頼関係がある方だと思います。

5 これからしたいこと

私はやはり最終的には公教育に興味があるので、ゆくゆくは学校の校長という立場で地域のコミュニティ作りに関わりたいと思っています。地方になればなるほど教育長と校長の影響力は大きいので、その裁量・影響力を活かして良いモデルを作りたいと思います。

6 大学生に向けて

教育業界の課題とは何かを考えて、実際にそれに取り組んでほしいです。

私は、学生時代、地域やキャリア教育をテーマに活動したおかげで、そうした活動の無償のサービスになりがちなところ、新しく始めるとしたら社会人一年目では関わりづらいところなどに、就職する前に気が付くことができました。実際に事業を作るという体験をしたからこそ、自分がやりたいことについて現実的な視点から考えることができました。やりたいことを語るのはいくらでもできますが、それだけではどうにもならない部分を早めに経験しておいてほしいなと思います。

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