ビジョンを描いて自分らしい働き方を(「こんな先生もいるぞスペシャル」講演録①山田頌先生)

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作成者:石川 桃子 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、2019年3月26日に陰山式スコーラ京都教室で開催されたイベント「こんな先生もいるぞスペシャル」(主催:EDUPEDIA 共催:徹底反復研究会)における山田頌先生(ハノイ日本国際学校教頭)の講演録です。今回は、これまでのご自身の経験を踏まえて、教師のキャリアデザインの方法についてお話しいただきました。これからどう教育に関わっていくべきか悩んでいる先生方、進路に迷っている学生の方、ぜひご一読ください。

関連記事もぜひ併せてお読みください。

<「こんな先生もいるぞスペシャル」関連記事>
教育の生産性を上げて子どもも先生もハッピーになる方法(「こんな先生もいるぞスペシャル」講演録②坂本良晶先生)

2 自己紹介〜日本国際学校について〜

私はベトナムで日本国際学校の先生をしています。教頭も兼任しています。

日本国際学校は、日本語学校ではありません。児童は日本語コース300人、英語コース100名の計400人いますが、純日本人はたった1人で、あとはみんなベトナム人の子どもたちです。日本にもいろいろな国のインターナショナルスクールがありますが、それと同じように、ベトナムに日本のインターナショナルスクールがあるのです。日本式の教育を目指しており、日本人が日本語で日本の教科書を使って授業をします。週35コマのうち、英語が6コマ、ベトナム語が9コマ、残り20コマが日本語で行う授業です。算数、理科、図工、家庭科、プログラミングなど、ありとあらゆる教科を日本語で学びます。

私はもともと愛知県の教員をしていましたが、いろいろな理由があって辞めました。長時間労働、不平等な給料、不公平な業務などニュースでよく言われていることも理由に含まれますが、年度始め→夏休み→忙しい時期→冬休み→年度末というルーティンを30年間繰り返す自分が見えなかったというのも理由のひとつです。そもそも30年という数字は遠すぎて、イメージできませんよね。公務員は安定している職業だとよく言われますが、30年先も果たしてそうなのか、私は疑問を持ったのです。その時、3,4年が人間の成長スパンなのではないかと思いました。小学校は6年、中学校・高校は3年、大学は4年ですよね。これと同じように、3,4年で生活を変えた方が自分にとって都合が良いな、と思ったのです。

私の働き方というのは、今までの日本の先生にはなかった働き方だと思います。今、世の中の働き方や就職・採用の仕方はどんどん変わっています。教育界も例外ではありません。今日は、そんな時代におけるキャリアデザインの方法についてお話しします。

3 キャリアデザインとは

キャリアデザインについてお話しする前に、まず「デザインとは何か」というお話をしましょう。デザインというと、色・形・柄・素材といったものをイメージすると思いますが、それらは厳密にはスタイリングというそうです。

ではデザインとは何か。それは、「課題を解決する道筋」のことです。たとえば靴だったら、どうすれば人がより良く歩くことができるのか、そもそも歩くとはどういうことなのか、ということを考えるのがデザインの第一歩なのです。面白いデザイン課題の例を挙げると、「環境問題に適応した水筒のデザインを考えなさい」というものがあります。デザイナーたちはまず、環境問題が最終的に行き着くところまで行き着いた世界を想像しました。すると、雨は酸性雨で、海も汚くて飲み水の無い世界が想像できます。その世界では、水は人間にとって大変貴重なものとなっており、水を体外に排出している場合ではない状況です。だから、人工膀胱というものを作って、水を体内で循環させることが「水筒」になる。こうした考え方がデザインなのです。「水筒」というものが本質的に何を求めるのか、「環境問題が起きている地球」の中に「水筒」を埋め込んだときにどういうアイデアが出てくるのか、という考え方がデザインなのです。

だから、デザインはビジョンを描くことと言い換えることができます。先ほどの水筒の例で言うと、「将来環境問題が深刻になったらこんな世界になるだろう」というビジョンを思い描く、将来の見通しを立てる、ということがデザインの第一歩です。つまり、キャリアデザインをするためには、自分のキャリアのビジョンや、世の中が将来的にどうなっていくのかというビジョンを考えていく必要があります。

自分のキャリアのビジョンを描く背景には、必ず自分の欲求があります。この欲求をもとに自己中心的にキャリアをデザインしていくのです。

たとえば私は、愛知県の教員を辞めた後、やりたいをベースに教師をしてみようと考えました。そうして見つめ直した時に、一番は授業がやりたい、と思いました。一方で、公務員的な仕事が好きではなかったので、それはやめることにしました。

次に、どこで仕事をしようかな、と考えていたときに、偶然旅行でベトナムのダナンに行きました。そして、そこでの生活をイメージして、強い憧れを抱いたのです。こうした、この生活をしたい!という強い気持ちが大事だと思います。

つまりキャリアデザインとは、就活や転職といった、単に職を選ぶ行為のことではないのです。ビジョンに応じて将来の地図にピンをさすこと、自分が思い描いた未来に対して、自分はここ、というポジションをとることなのです。

4 リスクを取る生き方、取らない生き方

もちろん自分のポジションをとるうえでリスクもあります。私自身も、大変なリスクを背負ってベトナムに来ています。まず、日本に年金や保険料を払っていないので、日本で何かあった時には大変です。また、今の仕事の雇用形態は2年契約更新制なので、首を切られたらそれでおしまいです。これは安定した生活とは程遠く、リスクを取る生き方と言えます。

では、リスクを取らない生き方とはなんでしょうか。私は、シーラカンスがそうした生き方の大先輩であると考えます。シーラカンスは、何億年もリスクを取らない生活をしています。体の形も変えずに、子孫を繁栄させているのです。なぜリスクを取らない生活を続けてこられたのでしょうか。それは、環境変化が少ない深海に住んでいるからです。

一方で、我々が生きている場所は深海でしょうか。 環境変化はないでしょうか。いろんな分野で環境変化が怒涛のごとく起きている現代においては、リスクを取らない生き方こそリスキーなのではないか、と私は思います。

5 うまくキャリアデザインするために

次に、うまくキャリアをデザインするというのはどういうことなのか、という話をします。

  

●矢印を斜めに傾ける

学校の先生を極めてトップになるのは難しいです。先駆者や競争相手がたくさんいるので、一握りの人しかトップになれません。一方で、何かひとつの分野でトップになると、他分野のトップの人と繋がることができます。すると、全く違う分野の有益な情報や知見を手に入れることができます。自分の得意分野で勝負すれば、苦手分野もカバーしてくれる人が現れてどんどん強くなれるというわけです。
  
  


  
  

では、ここのラインに到達するにはどうすればいいのか。ズルをすれば簡単です。矢印を斜めに傾けることで、この距離分ワープできるのです。
  
  


  
  

私の場合、ただの学校の先生ですが、そこに「ベトナム」という要素が加わります。すると、競争相手が10人程度しかいなくなるので、すぐにトップになれます。そして、いろんな分野のトップの人が拾ってくれます。斜めの矢印を垂直に戻すこともあるでしょうが、それでも伸びた分からスタートできます。やってきたことがなくなることはないのです。

  

●SNSで効果を掛け算

インターネットが発達して個人戦の世界がやってくると、教師も個人で戦えるようになってきます。SNSで効果を掛け算していきましょう。どんどんネット上に自分の情報を書いて置いておき、見てもらいましょう。必ず誰かに見てもらえます。

私はダナンで職探しを始めた時、「ダナンに日本式学校をやりたい先生がいます! こんな先生がダナンで日本式学校を作りたいと思っています!」とブログで発信していました。すると、ダナンにある有名な日本式保育園「たんぽぽ保育園」の園長先生の目にとまり、保育体験や先生の子どもの小学校見学をさせてもらうことができました。そこから人づてに日本国際学校を紹介してもらい、そこで認められて教頭先生になりました。
  

●走った後でビジョンを語る

インターネットでとにかくビジョンを発信したら誰かに拾ってもらえるのかというと、そうではありません。何も動いていない人間のビジョンに共感・応援をする人はいません。走った後でビジョンを語ることが大事です。まず走ってみると、そこにストーリーができます。これこそが価値のある情報、その人の生きた情報です。それによって、こういうことをやっている人だからこんな未来予想図を描いているんだな、とわかってもらえます。これこそがキャリアだと思います。

自分のビジョンを描いて、自分一人でもいいからとにかく動いてみて、後ろに何か成果物を用意しておいたうえでビジョンを話す。そうすると、人に共感されるようになります。人に話を聞いてもらえるようになります。

6 さいごに

ビジョンを語る前に行動しましょう、というお話をしてきましたが、私が「行動しましょう」と言っているのは、決して「海外に行きましょう」ということではありません。「日本の教育の良いところを見ていきましょう」ということです。

ベトナムでは、日本式の学校は大変人気です。一番評価されているのは日本の道徳・マナーです。日本人のような立ち居振る舞いを身につけることが、学習以上に注目されています。

朝遅刻せずに来る、席に座っている、起立・気をつけ・礼、給食や掃除当番が自分たちでできるなど、私たちが当たり前と思っていることが素晴らしいとされているのです。でもこれらは私たちにとっては当たり前すぎるものなので、一個一個を取り出してこれが素晴らしい、とは言えませんよね。だから、日本の教育を海外に輸出していくためには、そうしたものをパッケージ化していくことが必要であると感じています。

また、先生たちが教育を改革していくうえで、変えるべきところは何か、ではなく、変えずに残すべきところは何か、を考えてほしいと思っています。どうしても改革というと何かを消すことを考えがちですが、そうではなく、何が中核に残るのか、という話をしていけたらと思うのです。

7 プロフィール紹介


  

日本国際学校教頭。31歳。
ベトナム、ハノイの日本式インターナショナルスクールである、日本国際学校で教頭を務めている。幼稚園から中学校まで日本語コースの子どもの在籍数は300名ほど。
25歳で愛知教育大学の大学院を修了後、教員採用試験に合格し、愛知県で正規教員として勤務。
教員2年目に「60歳の定年まで自分が教員でありつづける未来が見えない」と気づく。
その年に、偶然海外旅行をしたベトナムに惚れ込み、いつか必ずベトナムに住むことを決意。
ベトナムで教育活動に携わりながら生きる方法を模索する内に、縁があって現在の学校へ。
教員4年目、6年生担任として卒業生を送り出すと同時に愛知県教員を退職。
2017年6月からハノイ在住、在住2年目に教頭に昇進。
学校とは2020年度までの有期労働契約。
その後の人生プランは未定。
詳しくはこちら→https://twitter.com/yamadasho0601

(2019年3月26日現在)

8 関連記事紹介

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9 編集後記

リスクを取ってかけがえのない経験を得てきた山田先生のお話は刺激的なものでした。どんなキャリアを選ぶにせよ、自分なりに将来を想像し、それに沿って自分だけのポジションの取り方を考えていくことが大事なのだとわかりました。

この記事が、これからのキャリアを考えたい先生方や学生のみなさんの参考となれば幸いです。
  

(取材:EDUPEDIA編集部 石川、瀬崎、金田 編集:EDUPEDIA編集部 石川)

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