学校での積極的なICT活用の鍵〜聖徳学園の品田健先生インタビュー〜【関西教育フォーラム2021特集企画】

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作成者: 吉田 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2021年10月3日に行った聖徳学園の品田健先生への取材内容をご紹介するものです。ICT教育の導入方法や活用方法、今後の目標をお聞きしました。端末の活用に困っている先生方や、より積極的にICT教育を取り入れたいと考えている先生方は、ぜひご一読ください。

本記事は2部構成になっております。
ICT活用度の格差 〜家庭や学校の視点から「今、私にできること」〜【関西教育フォーラム2021特集企画】
こちらの記事では、関西教育フォーラム2021のテーマである、ICT教育と教育格差の関係について、品田先生の見解をご紹介しています。ぜひご覧ください。

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ひとつでも共感したあなた、
フォーラムでお会いできるのを楽しみにしております。

2 聖徳学園でのICT教育のあゆみ

導入初期

本校にiPadを導入したのは7年前の2014年で、私が聖徳学園にきたのはその3年後の2017年でした。2012年頃から導入を考え始めて、その2年後に実現したと聞いています。

学校へのiPad導入は1年目、中学1年生だけに行い、それ以降の年も新入生に順次導入していくという方式をとり、中学高校合わせると6年かけて全学年に導入していきました。 本校では、導入初年度から卒業生に専任のICTの支援員として来ていただいています。支援員には先生方のICTに関する疑問を解消してもらったり、授業で補助をしてもらったりしています。現在は専任の支援員が2名、非常勤の支援員が3名います。そのおかげでスムーズに学校現場にICTを導入することができました。また、入学時点でICT導入について説明をしていたので、保護者からの反対の声はほとんどありませんでした。

過渡期

校内は基本的にペーパーレスへと変化していきました。職員会議で使用する全ての資料はGoogleドライブにアップロードし、会議中先生方はそれぞれのタブレットや会場の大きなスクリーンを見て進めています。書き込まなくてよい書類についてはGoogleドライブで共有するのが徹底されています。授業ではすぐに使用できないとしても、先生方が業務で積極的に使用することで慣れることができたと感じています。急激にではなく、徐々に変化していくことが功を奏したのではないかと思います。

3 ICT活用の最大のメリット

初期に感じた一番のメリットは、ICT活用によって先生方が無駄な業務を削ることができ、本来のやりたいことに時間を当てられるようになったことです。例えば、KeynoteやPowerPointを使用することで板書が省力できています。英語などの板書量の多い授業では、書く時間を省略して演習の時間を確保できるというメリットがあります。最近ではコロナの影響でオンライン授業を行っていたため、授業動画や解説動画のストックも増え、欠席した生徒も効率的にサポートできるようになりました。

生徒へのプリント配布に関しても、印刷しないという選択肢が増えたことで、業務を削減できるようになりました。例えば、授業外でも学年通信などの配布物を印刷し、クラスごとに分けて配布する業務やPTAの保護者会の出欠提出を集計する作業を減らせます。私自身、明日からiPadやGoogleのサービスを使えないよと言われると非常に困りますし、それくらいICTは学校現場に必要不可欠なものになっていると感じます。

4 授業以外での利用

学園祭や部活動などのイベントに関する連絡は校内SNSを使用しています。去年(2020年)はコロナの影響を受けオンラインでの学園祭を開催しました。校内で作成したサイトに、生徒たちが動画でクラス作品をアップし、保護者に限定公開を行っていました。クラス内で話し合いをする際も、話し合いを進めるためにSNSのクラスグループを使用してもらっていました。クラブ活動においても運動部であれば、動作をチェックするために動画を撮影することなどから始まり、活用の幅が広がっています。

本校で教務系に使用するアプリケーションはできるだけ基本的に既存のものをカスタマイズしています。校内SNSに関してはTalknoteというLINEのようなものをベースにしています。資料配布ではGoogleの機能も使用しています。資料の共有ではGoogleドライブも使用しています。

生徒の情報処理・管理については、BLENDというシステムをカスタマイズしています。先生方は各自所有しているiPadから生徒の情報を直接入力したり、他のデータファイルを読み込ませたりして成績処理を行っています。また、ここでは勉強の支援もサービスとして利用できます。また、保護者にもアカウントを作成してもらっているので、遅刻や欠席の連絡や通知表の確認も、このシステムを利用して簡単に行うことができます。

さらに検定の申込もこのシステムを利用すると簡単に行えます。例えば、生徒が各自のiPadから申込希望を入力した場合、その通知が保護者のアカウントへ送られます。保護者が検定の受験を承認するかどうか決定すると、事前に集めた予備費から検定費が引き落とされるという仕組みになっています。予め保護者の方には端末を利用する協力をしていただく必要がありますが、そのステップを経ると様々な面での負担は軽減されるのではないかと思います。

5 ICT活用による生徒の変化

iPadを使用することがスタンダードになっているので、従来の授業時と比較することは難しいですが、選択肢が増えたことで、生徒が自分で適切な方法を考えて学習を進めていくことが可能になったと思います。例えば、授業時のノートの取り方であれば、今までのように紙のノートに手書きをする方法、iPadのPDFに書き込む方法、板書をカメラで撮影する方法、説明を動画として記録しておく方法など、様々な方法があるので、各自目的に応じた手段を取ったり、好みの手段を考えたりすることができます。授業でどのように使えるかは、学年や教科、担当者によって異なるので、グラウンドルールとして、「担当の先生の指示に従うこと」としています。

他に大きく変わったのは、今まで学べなかったことが学べるようになるというところです。学校では教えてもらえないような内容を学習する場合、今まではどこかへ足を運んで学びにいかなければなりませんでしたが、今ではYoutubeやWeb上の講座を受け、アプリを使用してトレーニングすることも可能です。本校ではそういった自立的な学び方を知ってもらうための体験も授業中に行っています

6 先生たちのマインドセット

先生自身がiPadをインプットの道具だと思っていたらアウトプットの道具としての機能や重要性に気づけず、生徒も経験できる機会を逃してしまいます。先生や管理職がどのように端末を使用していくかについてのビジョンを共有できていないと、自立的な学びを実行できる生徒は育たないと思います

本校では、全ての先生が共通のマインドを持つために、なぜiPadを導入するかというところに関して、校長の方からビジョンを提示しています。毎年、学校経営方針を何度も話されていますし、日頃の話でもかなり丁寧に共有しています。また、先生や生徒が新たにチャレンジすることに対して、非常に寛容な点も自立的なICT活用を促進するうえでの強みになっていると思います。

7 ICT活用の現状

生徒の端末使用制限

基本的には年齢による規制に基づいて制限をかけていますが、そのようなフィルタリング以外は基本的に自由に使うことができるようにしています。例えば、授業中にYoutubeを見せることもあります。ただし、Youtubeはおすすめに表示されるサムネイルを非表示設定にしています。サムネイルが表示されると、際限なく視聴してしまう可能性があるからです。実際サムネイルを非表示にすると、多少は視聴数が減らせるという調査結果も出ています。

端末活用度合いの個人差

学校生活を送るうえで最低限必要な部分はどの生徒も同程度に使用しますが、自発的な端末利用の部分ではかなり差があります。例えば、プログラミングに興味のある中学生は自分から進んで習得していきますが、そうでない子は高校生であっても授業の進度についていけないということもあります。他にも、iPadを利用した音楽や動画の編集など、ある分野だけ極端に秀でた子もいます。そうした生徒の新たな特別な能力に気付かされることも増えました。

8 今後の目標

今私たちは生徒たちのアウトプットを増やしてあげるということを目標にしています。その理由としては、生徒たちに社会へ出てから学校での学びを活かしてほしいからです。実際に社会に出ると知識だけでは誰にも評価してもらえません。社会では自分の知っている知識や技能をどのように組み合わせて、その課題に取り組むかということが重要視されるので、こういった側面を育てていくためにもICTは効果的です。

今まではしゃべること、原稿用紙・模造紙に書くことという手段だけでしたが、端末を使うと画像や音楽、映像、KeynoteやPowerPointといった多様なツールを使用して表現ができるようになります。足りない知識を補い、自分が考えたことをストックする機能だけでなく、アウトプットするための道具としても使用できる機会をどのように増やしていけるか考えていきたいと思っています。

9 プロフィール

品田健先生

東京学芸大学(国語科)卒。
桜丘中学・高等学校で副校長としてiPadの全校導入を推進。2015年Apple Distinguished Educator選出。2017年より聖徳学園中学・高等学校で学校改革本部長・Executive ICT DirectorとしてSTEAM教育の開発を担当。2020年Adobe Education Leader選出。iTeachersAcademy理事として次世代教育に取り組める教員の養成を支援。2021年聖徳学園中学・高等学校がApple Distinguished Schoolに選出。

10 編集後記

本記事は、スムーズなタブレット端末の導入や積極的なICTの活用にとって、学校の仕組みだけではなく、保護者の協力や先生のマインド、支援員の補助が必要不可欠であることが具体的に理解できる内容となっています。GIGAスクール構想が導入され、ICT教育を身近に感じるようになった今だからこそ、本記事が多くの方にとって生徒たちのためにできることを考えるきっかけとなれば幸いです。
(編集・文責 EDUPEDIA編集部 吉田)

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