ゲームで学ぶメディアリテラシー~シミュレーション型オンライン教材「To Share or Not to Share」~

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作成者:柳川 悠月 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、2021年10月22日に行った、スマートニュース株式会社 スマートニュース メディア研究所の宮崎洋子さん、長澤江美さんへの取材を記事化したものです。

GIGAスクール構想の推進やコロナ禍におけるオンライン授業の普及に伴い、学校現場でインターネットがより身近な存在になっています。またスマートフォンを持っている子どもも多く、メディアリテラシーの育成がより重要な教育課題となっています。そこで今回は、メディア研究所が作成したメディアリテラシーの育成を目的とするシミュレーション型オンライン教材「To Share or Not to Share」の使い方や開発の経緯、これからのメディア教育について伺いました。

◎こんな先生におすすめ!

  • メディアリテラシーについて生徒・学生に楽しく考えさせたい先生
  • SNSの使い方指導に困っている先生

2 オンライン教材「To Share or Not to Share」ってなんだ?

 概要

  • これは現実のSNSを模したオンラインゲーム教材です。
  • 教育機関でのご利用に限り、簡単なアカウント登録により無料で授業にご活用いただけます。
  • 教材のリンクはこちらです。デモ版もぜひご覧ください。

 ルール説明

  • ゲームは新しいSNSという設定で、プレイヤーはそれぞれのアカウントに100人のフォロワーをもっています。
  • プレイヤーは、タイムラインに表示される投稿をシェアするか否か判断し、内容の信頼度を1∼5で評価していきます。たくさんの人に情報を上手に拡散することが出来ればフォロワーが増えますが、投稿内に隠れたフェイクニュースを拡散してしまうとフォロワーが減ります。
  • 投稿の拡散については、「公開シェア」「限定シェア」「シェアしない」から選ぶことができます。またそれを選んだ理由も記入します。
  • 投稿の拡散によるフォロワーの増減は、ゲーム終了後にまとめて知らされます。
  • ここでいうフェイクニュースは、世の中に大きな影響を与える情報について、第三者機関で検証され、誤情報・偽情報と認定されたものです。

 オンライン教材を用いた授業の流れ

  1. 授業者が、ゲームのルールを説明します。
  2. 生徒・学生が各自のタブレット端末(スマートフォン、PCでも使用可能)を用いて実際にゲームを体験します。
  3. 体験終了後、授業者がクラス内のシェア行動の傾向を共有したり、いくつかの投稿について解説を行ったりします。
  4. 3を踏まえて生徒・学生間で、各投稿をシェアをした/しなかったの判断規準や、その信頼度をつけた理由についてグループディスカッションを行います。
  5. グループの代表が4の内容をクラス全体に共有します。
  6. まとめとして、授業者がこの教材を用いて学んでほしいポイントを提示します。

 ゲーム内の投稿について

ゲーム内で用いられる投稿はすべて実在のものです。投稿を選ぶ基準は、実際のSNSによく表示されそうなものであるかです。例えば、匿名の個人、記名の個人、ニュースサイト、まとめサイト、広告等をバランスよく取り入れるよう心掛けています。

さらに、生徒・学生がゲーム内の投稿から何かしらの「気づき」を得られるかどうかも考慮しています。ここでの「気づき」とは、自分の中の「当たり前」が揺らぐ体験や、「これってどうなのかな」と何かが心に引っかかることなどです。これらの「気づき」が得られる投稿は、ゲーム体験後のディスカッションにも発展しやすいです。

3 オンライン教材を通して学んでほしいこと

オンライン教材「To Share or Not to Share」を通して学ばせたいメディアリテラシーやSNSとの付き合い方について伺いました。

 SNSの上手な使い方

投稿をシェアする前に一呼吸置いて少し考えてみることが大切です。誰かの投稿に対する「いいね」も一つの「シェア」にあたります。フォロワーや「いいね」の数で信頼できるかを判断せず、客観的に検討することが必要だと思います。

SNSのシェアは反射的に行うことが多いかと思いますが、このオンライン教材を通した学習が、SNSをシェアする前に少し立ち止まって考える習慣に繋がれば嬉しいです。一度発信したものを取り返すことは難しいのでよく考えて使ってほしいですね。

 意見の多様性

人間は自分の考えばかりに目を向けてしまうため、他の人の考えを知ることは難しいと思います。このオンライン教材を通してクラスメイトの回答が実に多種多様であることを認識し、世界にはいろいろな考えをもっている人がいるということに気づいてほしいです。

4 開発の経緯と今後の展望

オンライン教材開発の経緯と今後の展望についてもお話しいただきました。

 オンライン教材開発の経緯

以前はインターネットでの情報発信に着目した出前授業を行っていました。しかし昨年コロナ渦によって出前授業が難しくなり、オンラインで学べる教材を作ってみようと考えたことが開発のきっかけです。

SNSの「シェア」は身近で簡単なものですが、一種の立派な情報発信にあたります。なかには正義感に駆られて偽情報をシェアしてしまう場合もあり、これはメディアリテラシーが十分身に付いていないために起こる問題といえます。この問題がコロナ禍で一層深刻になっていると感じたこともあり、「他の人のSNS投稿をシェアする」行為に注目してこのオンライン教材を製作しました。

 手ごたえを感じる部分と今後の課題

手ごたえを感じているのは、授業後のアンケートを見て「ほとんどの人が何らかの気づきや学びを得られている」と実感できた点です。またディスカッションでは、生徒・学生から深く考え抜かれた意見も多く聞かれ、「やってよかったな」と感じます。

一方で、しばしば先生方から「このゲームの正解が知りたいです」と言われてしまう点に課題を感じています。何が正解かを見極めることも大事ですが、このゲームは正解を求めるものではなく、生徒・学生に世の中の「正解がないこと」に取り組んでほしいという想いで作成したものです。つまり、時には人それぞれ真実と感じることが違っていて、世の中には何が正解かわからないことが溢れているということを伝えたいのです。このことが十分に伝わらない場合があることは課題であり、変えていきたい部分です。

 今後の展望—利用者の拡大について—

まだ新しい教材だということもあり、現在は高校生・大学生を対象としています。しかしいずれは、小・中学生や大人向けのアプリケーションとしてたくさんの人に使ってもらいたいです。また授業後のアンケートでも、生徒・学生から「もっと小さい頃からやったほうがいい」「大人もやるべきだ」といった意見をもらいます。大人であってもSNSで無責任な発信をしてしまう場合は十分に考えられ、対策が必要です。

5  取材先紹介

 スマートニュース株式会社

「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」をミッションに掲げ、2012年6月15日に設立。日本と米国でニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」を運用。世界中の膨大な情報を日夜解析し続けるアルゴリズムと、スマートデバイスに最適化された快適なインターフェースを通じて、世界中から集めた良質な情報を届けている。(2021年11月25日時点のものです。)

 スマートニュース メディア研究所

ニュースやメディアが本当に社会や人々の役にたつためにはどうあるべきかを考えるシンクタンク。中長期的な視点からの研究、提言、そして課題解決の実現を目指して、2018年8月に設立。スマートニュースの「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というミッションに向けて、学校現場でのメディアリテラシー教育にも携わり、子どもたちが主体的に考える力を養うことを支援している。(2021年11月25日時点のものです。)

 関連情報

 ◎「To Share or Not to Share」の詳細はこちら

 ◎「To Share or Not to Share」のデモ版はこちら

 ◎授業で「To Share or Not to Share」を使用する際はこちら

 ◎スマートニュース メディア研究所 公式HPはこちら

 イベント情報

オンライン教材「To Share or Not to Share」も取り上げられている書籍『メディアリテラシー 吟味思考(クリティカルシンキング)を育む』(時事通信社)の刊行記念ウェビナーが、2022年2月26日(土) 13:00~15:00、オンラインにて開催されます。

「デジタルと吟味思考をつなぐ」と題して、教育現場におけるデジタル化の本質とは何か、子どもたちが将来デジタルに「使われる」側ではなく、「使う」側になるために必要なことは何かなどを考える内容となっております。記事と併せて、ぜひご利用ください。詳細はこちら

 『メディアリテラシー 吟味思考(クリティカルシンキング)を育む』

6 編集後記

SNSの利用があたりまえとなっている今、大人も子どもも一人ひとりがその使い方を学ばなければならないと思います。私たちは今回の取材で実際にゲーム内の投稿を見せていただきましたが、情報の真偽を判断するのが難しいものがたくさんあり、改めてメディアリテラシーを育成することの大切さを感じました。

またメディア研究所の方々はこのオンライン教材をどの教科で活用してもらえるのか悩まれているそうです。個人的な意見ですが、このオンライン教材は複数の教科に跨った資質・能力を育成できるのではないでしょうか。教科という枠組みに縛られない学びの可能性も模索していく必要があると感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 伊山・武村・千葉・柳川)

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