特別活動研究指定校の研究主任としてどうすればいいのか。「みなさんがわからないというならやって見せるしかあるまい」ということで、ありのままの今のぼくとぼくのクラスの子どもたちの授業を見てもらっています。
「学級目標づくりから見せる」というのはかなり珍しい取り組みだと思っていますが、全然気負いはありません。楽しくやっています。
そうなんですが、授業を見せて参考にしてもらう以上、ぼくの失敗や間違いを繰り返してほしくないので、特別活動を行う上で大事なことをきちんと伝えていく必要があると考え、先生方に向けて再びペーパーを出していくことにしました。
===以下本文より===
1 はじめに
2年ぶりの執筆再開です。かれこれ15年特別活動と向き合っていますが、一向に授業はうまくなりません。ただ、子どもたちがいきいきと活動する姿を見たくて続けています。教師のやらせたいことを実現するのでなく、子どもたちのなりたい姿になるためのサポーターとして支える。「大人の望む姿になろう」とするのではなく、子どもたち自身が「よりよく生きるためにどうすればいいのか」を考えるようになるにはどうすればいいのか。そういうことに少しでも近づくことができればと思っています。
今年度は、学級目標づくりから全く体裁を考えず、ただひたすら毎時間、校内向けにうちのクラスの学級活動を公開しています。ありのままの子どもたちの姿(もしかしたら担任の姿?)にあきれたり、がっかりされたりすることもあるでしょう。でも、そんな授業から「どうすればもっといいものにできるか」を考えていただければ、それこそ「成すことによって学ぶ教員集団」になれるのではないかと思っています。
だから、ぼくは授業は失敗でいいんです(笑)…うまい言い訳ができた。
2 学級目標づくり ~何を目指し、何を目指させればいいのか~
事前に子どもたちの選んだ言葉を把握し、傾向をつかんだつもりでした。一人一人が自分の選んだ言葉を発表し、近いと思う言葉をグルーピングしながら進めましたが、やはりなかなかきれいに線引きできるものではなく、一部混乱しているところもありました。A4の白紙を縦2つに切った短冊を使う板書の方法やマグネットで貼られているので貼り替えは容易です。教師が思い切ってグルーピングを見直し、分かりやすくまとめていけばよかったと思っています。
結果として、本時の中では「頂点目指してがんばろう!『努力』『協力』『正義の味方』」に決まりましたが、『努力』はがんばっていることを示す基準です。「何をがんばるのか」がない目標は評価することができません。火曜日の朝にそのことを話すと、本時に「努力するのは当たり前」とつぶやいていたS君から「努力することをテーマに、その内容を柱にしたらいい」と提案があり、「頂点目指して全力だ!『信頼』『友情』『正義の味方』」が学級目標に決まりました。
3 係づくりの授業 ~壊すのではなく、引き継ぐ意識で~
学級目標ができたら、次はそれを達成するための係を作ります。学級目標に近づくための係ですから学級目標への共通理解が必要です。子どもたちに係活動のアイデアを書いてきてもらいましたが、学級目標と係の活動内容との結びつきはちょっと苦しいものがありました。
『友情』は「協力して物事にあたり、心の結びつきを深めて最高の思い出を作る」という意味が含まれていて、子どもたちにとって分かりやすかったようですが、あとの2つがあいまいでした。自覚をもってきちんと仕事をしたり下級生に優しく接したりするという意味の『信頼』とよりよい学校を目指して学校全体に働きかけていくという意味の『正義の味方』がごっちゃになってしまっていました。そこで13個出てきたアイデアを3つの学級目標の柱に位置付け、8個前後に減らす過程を通じて学級目標への共通理解を深めたいと考えました。
実はこれまで子どもたちが体験してきた方法はもっと簡単なものでした。
- 学級目標達成のために必要だと思う係のアイデアを出し合う。
- 似ているもの合体したらいいものをまとめる。
- 自分が入りたいと思う係を選ぶ(ネームプレートを貼っていく)
- 誰も入らなかった係はなくなる。司会が本当に要らないのか確認し、必要と認められればどこかの係が活動内容を引き受ける。
- 入った係で集まり、主にどの学級目標の柱を目指すかを決める。
今回は最初から学級目標に位置付けていったので子どもたちは戸惑ったようです。序盤なかなか意見が出てきませんでした。出てきはじめると矢継ぎ早に発言があり、司会者グループは大変でしたが、意見が出るのはうれしいことです。最終的に13の係が出てきましたが、やはり学級目標との関連には混乱がありました。そこで司会者がiPadで撮影した学級目標づくりの板書を示しながら、『信頼』と『正義の味方』のそれぞれに含まれる内容を解説し、係の位置づけを考え直しました。
それから係の数を減らすことになるのですが、1つ減らし始めると次々と減らされていってしまいました。「あれはいらない」「これはしんどかった」「それは意味がない」…子どもたちが夢を描いて作ってきた大切なアイデアが消されていきました。辛い時間でした。子どもたちはもっと抵抗するかと思っていましたが、ぼくが最初に「8つを目途に減らしましょう」と言ってしまったことで「止む無し」という雰囲気になってしまったようです。
授業の最後、感想を聞かれたF君は「いい話し合いだった」と笑顔で語りました。それは自分の提案した「お手伝い・イベント係」が「お手伝いは何を達成するのかわからない」と集中砲火を浴びながらもなんとか最後まで残り、協力者も得ることができたからでした。
授業後の生活ノートに衝撃を受けました。
昨日の学級会は悲しかったです。黒板にたくさん出てきたときは「いい係がたくさんあるなぁ。どれに入ろうかなぁ」と思っていたのに、みんな次々と消してしまったからです。
これを読んで、ひとつ大事なことを言い忘れていたことに気付きました。いつものやりかたの④の部分です。子どもたちが考えたアイデアは学級をよりよくするために必要な問題意識の表れです。それを消してしまったら、学級目標に近づくための道をふさいでしまうことになるのです。
翌日の朝の会、板書の残る黒板を前に、「昨日の学級会はせっかくみんなが考えてきた係が消されてしまって残念だったね。今までこんなことはしてなかったよね。必要な係のアイデアは『学級をよくするためのポイント』が現れているんだと思います。みんなの問題意識を大切にしてほしい。だから、消されてしまった係の仕事を残った係で分担しよう」と話しました。
そこからみんなでどの係がどの仕事を引き継ぐのかを話し合いました。「壊すのではなく引き継ぐ」。思いや願いを大切にして、それを育てる進め方が一番大事なことだと学んだ授業でした。
「元気が出る学級活動」1~13はこちらからダウンロードしてください。
http://rixaw7.blog.so-net.ne.jp/
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