社会科の教材開発 3

1 ケース3 ~ふと,アイデアをひらめいた瞬間~

教材開発に限ったことではありませんが、日頃から常に教材になるものはないかと意識をしているとある時パッと閃くことがあります。

こんな経験は、なにかわくわくして楽しいものです。

ただ、やはり、何気にぼうっとしているだけではアイデアはひらめくものではありません。私の経験によると、ひらめきには、いくつかの視点が必要だと思います。

ケース3では、社会科の教材開発をひらめいた例をもとに、私なりの3つの視点について紹介します。

①視点その1  こだわりの理論で事象を見る

かなり前のことですが、5年生の運輸の学習と言えば、宅配便の授業が花盛りでした。宅配業界は当時、大変な急成長中、急激な右肩上がりのグラフを示すことが授業の導入の定番でした。しかしながら、このことに対して、兵庫教育大学教授の岩田一彦氏は、「運輸は,生産者と消費者を結ぶことが本質である。」と社会科教育雑誌で主張をされていました。

私は宅配の授業は、確かに調べやすく楽しいが本質からずれているのではないかと思うようになりました。この記事を目にして以来、ずっと、生産者と消費者を結ぶものという視点で周りを見るようになりました。ある日曜日、私は勤務校の近くで、観光バスから降りた一団が地元のナス畑に向かっている場面に遭遇しました。聞くと、生協の産直の取り組みで生産者を訪ね、ナス料理を味わうというツアーでした。私は、“これだ!”と思いました。地元で生産されたナスが産直として関西圏へ運ばれている。その仕組みを教材化しようとひらめいたのです。岩田理論を意識したことで新たな運輸の教材として提案できました。

②視点その2  現在進行形(未完成・未実施)の事象に目を向ける

中学年では公共施設の学習があります。一般的には地域の公民館や図書館を事例として取り上げます。もちろんそれもOKですが、私は子どもたちがワクワクドキドキしながら学習するには何か物足りないと思っていました。
そんな時、中央公園の隣の空き地に遊具広場ができるという話を耳にしました。私はこれだ!と思いました。この空き地にどのような物を作ったらいいか、子どもたちに考えさせることで、公共施設の意味や役割を学べると思いました。子どもたちには遊具広場ができることは内緒にして、空き地利用について、役場へ提案しようと呼びかけました。

子どもたちは普段利用する公園の隣ということで大いに盛り上がりました。公園の利用者や既存の設備などをもとに、町にとってこれから必要なものを議論しました。実際の提案では,役場の方から予算の面から厳しい現状を教えていただいたり、幼児の為の遊具やお年寄りの散歩コースなどはアイデアとして取り入れたいという前向きな意見をいただいたりすることができました。

年度が替わって空き地に遊具広場が設置されたことを子どもたちは大変喜んでいました。既存の事象だけでなく,現在進行形や未完成の事象には夢があり、子どもたちの社会参画(提案)への意欲を高めました。

③視点その3  同じ教材を使い、異なる学年で組み直す

食材は同じでも、料理法を変えることで、味やその食材への認識等、新たな面を見出します。私は以前、地元のケーブルテレビを取り上げて、3年生のくらしのうつりかわり単元と5年生の情報通信単元で教材化しました。

3年生では、ケーブルテレビが電話やテレビの融合したもので道具のうつりかわりとして発展してきたこと、5年生では、地域のネットワークとして地域の情報化を考える具体的な事例として教材開発を行いました。どちらもケーブルテレビの番組づくりを中心活動としました。3年生ではくらしの変化を考え、5年生では地域にとって必要な情報とは何かを議論しました。

同じ教材でも切り口を変えることで、教材の新たな魅力を感じることができました。教材開発というとこれまで扱ったことがない何か新しいものというイメージがありますが、同じ教材でもアプローチの仕方をかえることで、“これだ!”という再発見ができました。

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以上、教材研究について、私がアイデアをひらめいた事例を概略的に紹介させていただきました。

いづれも教師が本気になったものは、子どもも本気になることができるということを学びました。ただ、社会科教師の悪い癖は、教材研究に熱心になるあまり,調べたことやわかったことをすべて子どもに教えたいと欲張ります。その結果、教師がしゃべりすぎる授業や、子どもの思いから外れた授業になりやすい傾向があります。私自身の自戒を込めて感じたことです。

教材開発は、教師にとってこの上ない醍醐味です。子どもたちにとって価値ある教材がひとつでも多く生まれることを願って・・・。

※5年情報単元ケーブルテレビの実践は「学び合い、分かり合う授業づくり」(明治図書)6年裁判員制度、中学年火事の実践が「授業づくりネットワーク(2009年9月号,12月号)」(学事出版)に掲載していただいています。一読いただけますと幸いです。

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