3つの層を意識して授業をする

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目次

1 3つの層

子供たちの力の違いに授業中、どう対応をするかと質問すると、「真ん中あたりの層に合わして授業をする」と答える教師は多いと思います。どの層に照準を合わせるにしても、他の層についても十分に配慮をした授業を展開するべきです。さらに言うと、学級に30人の子供がいれば、30層のレベルがあるのだと考えるべきなのかもしれません。一人一人の状況を把握し、一人一人への配慮が必要であるというのが正論だと思います。

しかし、この正論に従って指導をするというのは、なかなか難しいものがあるのも事実です。大人数に一斉指導という日本の教育行政の施策の下では、一人一人に配慮するというのは相当な教師としての資質が必要です。現実的には、はなんとか子供の多様なレベルに対応し、一人一人を大切にしようという理想を持ちつつも、大雑把に3つの層に分けて把握しておけばいいと思います。

2 第一層

クラスの成績上位3分の1は下手な説明でも授業時間内で自分で軌道修正ができ、学習内容をしっかり身につける。塾などに通っており、学校の授業内容は既習事項であることも多い。普段の授業のレベルが低過ぎて自分にとっては何の役にも立たないといった「浮きこぼし」といった状況の子供もいる。

3 第二層

クラスの真ん中3分の1はなんとか授業についてきて、家庭で有効な復習ができる。次の学習時にはレディネス(その学習を受けるに必要な知識やスキルの能力)を身につけている。標準レベルの子供たちです。

4 第三層

クラスの成績下位3分の1は一斉授業の形にはついてこられず、わからないことが多いまま、1時間が過ぎてしまう。それを自分の力・家庭の力では挽回することが難しい。学習上の障害を持っている場合もある。「落ちこぼし」になりやすい。

5 どの層に照準が合わさっているかを意識して

こうして3つの層があると考えて、ただぼんやりと指示を出したり、授業を進めたりするのではなく、どの層に照準が当たっているかを意識して授業をします。そうすることによって、「浮きこぼし」が退屈していないか、「落ちこぼし」が諦めていないか、といった配慮を忘れることなく指導ができます。

学校や学級によって子供たちの質は異なりますから、比率は必ずしも1/3:1/3:1/3ではなく、教師の技量によってずいぶん違ってきます。教師に技量のないと、第三層の比率がぐっと上がってきます。

6 第一層の子供たちへの対応

第一層は、授業をするにあたって教師の手を煩わせることがないので、意外と見逃しがちになってしまっている部分もあります。「浮きこぼし」になってしまって、授業に退屈してしまっている子供もいるでしょう。

その一方で、塾や家庭で先に学習をしているだけで、表面的な理解はできているものの、深い意味を考える力や想像力には乏しい子供も少なくありません。

また、中には自分が人よりできることに天狗になって、第二層・第三層の子供をバカにしているような子供もいます。

授業の中に、逆転(第三層の子供たちの活躍の場を作り出す)や概念壊し(簡単だと思っている事柄の切り口を変えることによって学習の奥深さに関して気づきを与える)を取り入れることによって、刺激を与えてあげるという意識も必要かもしれません。

教材も、この層の子供であれば普通のドリルならあっという間にできてしまうことでしょう。子供の知的好奇心を促す、少々レベルの高い教材を準備してあげる努力も必要です。

7 第二層の子供たちへの対応

教師がこの子は標準レベルだというイメージを持って見ている子供が、思っている以上の潜在能力を持っている場合があります。教師が固定されたイメージで見てしまっているために、力が伸びない子供は必ずいると思って子供を見るようにしましょう。

逆に、教師が標準レベル思っていても、実は表面上を取り繕っているに過ぎず、授業の中身が理解できていなかったり、学力が定着していなかったりする子供もいます。教師はこういった子供たちがいることも自覚して、冷静に学力を分析することが必要です。

8 第三層の子供たちへの対応

わからない授業を受けていることは苦痛ですし、自分がその中で学力的に遅れているという気持ちは劣等感としてため込まれていきます。ため込まれたストレスがどこかで歪んだ形になって噴き出してくる心配もあります。

本人がいけないのだと、教師が見捨ててしまってはいけません。教師が見捨ててしまうと、学級の中に「ダメな奴は見捨ててもいいんだ」という空気も生まれかねません。うまくいかなくても教師が何らかの配慮をしている姿は本人にも、周囲の子供たちにも伝わります。

かといって、第三層の子供たちを中心にした授業を行うと、時間がかかってリズムやテンポが失われてしまい、第一層の子供にとってストレッシブな授業になってしまう心配もあります。

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9 習熟度別学習

日本は横並びが好きな国なので、習熟度別学級を編成することに対してはまだまだ抵抗があるようです。習熟度別学級の編成が可能な地域や学校は、限られています。
三つの層(多様な子供たち)に対応するために、場合によっては、学級内での習熟度別学習が可能なように授業を組むのも一つの方法だと思います。例えば、算数の学習などであれば、単元によっては最初の20分ほどでその時間の学習内容を説明して第一層と第二層がほぼ理解できるところまで持って行き、後はそれぞれのレベルに合った課題をさせるという方法です。そこで、第三層の子供たちにしっかりと時間を割いてあげて個別対応をしてあがるように考えます。

これをやるには一人一人にあった教材の準備ができていなければなりませんが、1時間中話し合ったけれど第一層の子供たちばかりが発言して、他には効果が薄かったというような授業をするよりは実りが多い場合もあると思います。

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