1 「子どもを夢中にさせる社会科面白教材」戸田正敏先生
レポーター:加瀬彩和子
講師プロフィール
戸田正敏
昭和32年12月生まれ。千葉県船橋市立湊町小学校教諭。
教務主任、研究推進委員、初任者指導教員、特別支援教育校内委員、健康教育推進校内委員、学校評議委員会委員、全国学級づくり研究所・学級づくり中央研究会代表。
子どもたちの集団自治力を高め、生き生きと活動する「学級づくり」を目指して実践を重ねています。
著書に『失敗しない「学級づくり」の原則36』『自立した子を育てる「学級づくりステップ組織術」』『こうすれば「学習習慣」は身に付くー低学年ー』(以上、明治図書)など、多数あります。
講座の概要
「子どもを夢中にさせる社会科面白教材」として、わかりやすく、そして参加者の興味・関心をひき、実際に授業をするように話してくださいました。
*授業内容
戸田先生は子どもたちの素朴な疑問を「はてな」と呼び、授業の中心的なもののようでした。
子どもたちの発想のすばらしさに触れ、ジョークを交えながら「子どもを夢中にさせる社会科面白教材」について、五つの例を教材と共に挙げていただきました。
1.安全なくらし(火事から人びとを守る)[四年生]
火事の時は119番通報をするということは誰でも知っています。それを利用して電話帳のコピーを配布します。電話帳の消防署欄には、通常の電話番号しか載っていませんので、「119番はどこに繋がるのか」という「はてな」がみつかりやすくなります。子どもたちの多くは、通報がその消防署に直接繋がっているなどと考えがちです。しかし実際は地域の中心にある消防中央センターに通報がいき、最寄りの消防署に伝わる、というシステムが存在し、そうすることで迅速に出動することが可能となります。
また、消防署における車の配置から迅速に出動するための仕組みを学ぶことができ、はしご車の有無や配備車両の違いなどから、地理的条件,社会的条件に対応できる体制がつくられていることがわかります。
このように子どもたちにみつけさせた疑問(「はてな」)から学びにつながることを、授業を再現するように話していただきました。
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2. 都道府県名・県庁所在地名暗記法[五年生]
① 地方別
② 隣接する地方別
③ 県庁所在地全て(2パターン)
④ 都道府県名全て+ヒント(語群)
⑤ 都道府県名と県庁所在地全て
上記の五つの段階の小テストによって子どもたちが少しずつ地名を覚えていく工夫紹介してくださいました。
子どもたちに「やってみたい!」と思わせ、「できた!」という感覚を与えることができたら多少難しい内容や問題になっても子どもたちはついていこうとする、とおっしゃっていました。そのためには教師のちょっとした工夫・配慮がとても重要になるそうです。
この小テストでは、
- 同じ問題を三回連続で出題する。
- 子どもたちどうしで答え合わせをさせる。
- 解答用紙を回収し、その日のうちに返す。
というシステムで行います。このシステムが「ちょっとした工夫・配慮」になるのです。
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3.寒い地方の人々のくらし[五年生]
たった1枚の写真から、「この写真はどこで撮ったのか」ということを考えさせます。
写真には縦型信号機と国道名,県庁への道路標識しか写っていません。しかし、これらを手がかりにして、写真に写っている国道を地図帳で探し出し、この写真が県庁所在地であるということから雪の多い地方であることを理解させます。
このように「面白教材(資料)→子どもたちにみつけさせた「はてな」→自分たちでの調べ学習」という流れができていきます。それを行うために教師はその単元全体の背景やねらいを明らかにし、熟知しておく必要があるのです。
そしてねらいの達成のために、教師が結論から序章へと逆方向に授業を考え、資料と質問を用意し、授業に仕掛けをつくることで子ども達の反応は変わってくるようです。
4.奈良の大仏[六年生]
大仏の掌の実物大資料(たて275㎝×横240㎝・模造紙7枚半)から子どもたちに「はてな」をみつけさせます。一人の子を指名し、大仏のポーズをとらせ、資料と比較させることにより、「なぜ、こんな大きな大仏を造ったのか」「こんなに大きくする理由は何なのか」「なぜ、奈良の東大寺に造ったのか」という「はてな」をみつけさせます。それらの「はてな」から聖武天皇が仏教を広めて社会を安定させるために全国に国分寺・国分尼寺を造った、という背景を基に、その中心として東大寺に大仏が造られたという理由に繋がってくるようです。
5.米づくりのさかんな地域[五年生]
米の生産量から「はてな」をみつけさせます。
資料集に載っている都道府県別の米の生産量では都道府県の面積が考慮されていないため、必然的に広い面積の都道府県が多くなってしまいます。これでは、稲作に適した地域を理解することができません。
都道府県別の米の生産量を各都道府県の面積で割ることによって、「1平方キロメートル当たりの米の生産量」となり、これを比較することにより稲作に適した地域がはっきりしてくるのです。
さらに、「1平方キロメートル当たりの米の生産量」トップ10の県に共通することを問うことにより、「平野」「水(河川・湖)」「夏の平均気温の高さ」という稲作に適した条件を知ることができます。
当日の教室の様子・参加者の反応・感想
いつの間にか教室には先生の授業を立って聞く人が現れるほど多くの人が集まっていました。戸田先生は何人もの参加者に質問し、参加型の授業を展開しており、教室には笑い声も起こるような明るい雰囲気の授業でした。
授業後に、教師をやっておられる参加者にインタビューしたところ、「面白かった」「身の回りに食いつくような資料があるとは知らなかった。見つけ方も参考になった。」とおっしゃっていました。
講師インタビュー
Q.授業をしてみての感想
A.生徒を相手にする方が時間的によっぽど楽だったかもしれません。今日の授業は時間が短く、先生方の役に立つような資料の作り方や提示の方法、授業の進め方を話したつもりです。
Q.このコンテンツを見ている先生方にメッセージ
A.色んな立場、例えば現場で生徒に教えていたり、保護者であったり、これから教師になろうとしている学生であったり、教育に関わっている様々な人がいると思いますが、「一人でも多く笑顔を持てる子どもたちをつくっていく」ような実践を行っていただきたいです。これは自分の子を育てるときにも共通することです。
また、教師を目指す学生には「何で教師になりたいのか」という自分の価値観を持って、子どもたちを育てていってほしいです。
これらのことが最終的に日本の将来をつくっていく子どもたちを育てることになると思います。
編集後記
授業の最後におっしゃった、「仕掛けて、仕掛けて授業をつくる。ただ、“面白い・楽しい”ではなくて“しっかりと学力つける”授業をする。」という言葉が印象に残りました。私も同じように、教えていく中では学んでいることが社会的に役立っていて、魅力があることに気づかせることが大切だと考えているため、授業を聞いていてとても参考になりました。
授業展開の様子を聞いていると、授業の単元が一つのストーリーのようになっていながらも、それは可変的で、戸田先生が子どもたちの予想外な発言にも対応していることを感じました。
また、子どもに自分で考えさせて、そこで生まれる発想(「はてな」)を大事にしたい、という気持ちが強く伝わってきました。
子どもたちが授業に夢中になる、積極的に参加するには生徒自身の発言・発想(「はてな」)が授業を創り上げているという実感を得ることが大きく影響するのではないかと感じました。
戸田先生の授業は、教師と児童がエネルギーと刺激をお互いに与えられ、両方が楽しめるので夢中になっていくのではないかと思いました。
最後に、熱い思いで子どもたちに向かっていく姿勢の大切さを感じさせる授業をしてくださり、ありがとうございました!
コメント
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なかなか眠れず夜更かし。 そんな中見つけた記事、動画! おもしろい。さすが小学校の先生 こんな社会科の授業づくりを目指したい(Twitterより)