『陰山メソッドの2本柱 ~生活習慣と基礎基本の反復学習の指導から 子どもの学力向上を~』 陰山英男先生

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目次

1 『陰山メソッドの2本柱~生活習慣と基礎基本の反復学習の指導から子どもの学力向上を~』

レポーター:齋藤千秋 

【講師プロフィール】

  • 1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
  • 兵庫県朝来(あさご)町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から反復練習で基礎学力の向上を目指す「陰山メソッド」を確立し脚光を浴びる。
  • 2003年4月尾道市立土堂(つちどう)小学校校長に全国公募により就任。百マス計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やコンピューターの活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。
  • 立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校副校長兼任)。
  • 文部科学省・中央教育審議会 教育課程部会委員。
  • 内閣官房「教育再生会議」 元有識者委員。
  • 大阪府教育委員会教育委員。

著書:「本当の学力をつける本」「学力の新しいルール」(文芸春秋)
    「陰山メソッド 徹底反復」シリーズ(小学館)  ・・・他多数

【講座の概要】

さまざまなデータを元に、基礎学力向上を目指す「陰山メソッド」の学習効果についてお話してくださいました。最後に、百マス計算の実践を行いました。

【授業内容】

~脳をパワーアップしよう〜
これまでは…
→脳の力は一定で、知識をどのような順番で子どもたちの頭の中にいれていけばよいのか考えられてきました。=教材配列の指導

しかし…
脳の力は人それぞれであり、知識を習得するにも限界があるのではないでしょうか?
→実は、脳をパワーアップできる方法があります。
しかも、簡単で時間がかからず、すぐ効果が出る方法です。

1、十分な睡眠時間の確保

子どもの学力を伸ばす上でもっとも重要なのは睡眠です。
眠たい目をこすりながらの勉強よりも、睡眠の質や時間が大切です。

11時以降の勉強は効果があがりません。また、寝過ぎも良くありません。
研究者の間では、睡眠時間は1.5時間の倍数がよいといわれています。
おすすめは、7.5時間です。
寝たいから寝るのではなく、寝るべきだから寝るというように考えてください。
小学生であれば、9時までに寝ている子どもが学力も高いというデータもでています。

2、基礎基本の反復練習で集中力と基礎学力の向上を

みなさんは「難しい問題をじっくり解いたほうがいいのでは?」と思っていませんか。
→それは逆効果です。
勉強において大切な事は、量や時間ではありません。
どれだけ集中して勉強したかということなのです。
本来なら30分で解ける問題を1時間以上かけてはだめなのです。

最も効果的なのは、基本問題を繰り返し解くことです!
→なぜなら、簡単な問題を解いている時が一番集中できるからです。

また、勉強は、スムーズに取り掛かれる量を課し、短時間で集中して取り組みましょう。
短時間での反復練習により生まれる集中が、脳のパワーアップに繋がるのです。
基本問題を何度も繰り返し解いていた子どもたちは、基礎学力が定着し、集中力も高まっているので、応用力も自然と身についていたというデータもあります。

特に、ストップウォッチを使って勉強するのがおすすめです。
焦ることで、脳をより速く動かすことができます。

例としては…
「宿題は10時以降にはやってはいけない」というきまりを作る。
→子どもたちは、「早くやらなきゃ!」と必死になって勉強する→集中
この「集中すること」が最も重要です。

このように考えると、勉強があまり得意でない子に合わせて授業をするのは逆効果であることが分かります。

また、集中の土台は睡眠です。
睡眠と集中力は密接な関係で繋がっているということが分かるでしょう。

3、朝食

朝食を摂っている子どもの方が成績がよいというデータがあります。
また、一週間に70品目食べるのが最も効果的です。

これらの方法を「陰山メソッド」と呼んでいます。
講義名にある「陰山メソッドの2本柱」とは、「読み書き計算」での徹底した反復学習と「早寝、早起き、朝ご飯」の生活習慣確立のことです。

4、その他

1)読書の大切さ
読書をすると算数の成績もあがるというデータがあります。
読書は知能を高めるのです。

2)「思い出す練習」の大切さ
今の教育は、記憶する練習ばかりで、思い出す練習が等閑にされています。
→では、学校は何ができるのでしょうか?
それは読み書き計算を徹底的に行う事です。

1学期に基礎構築をすることが大切です。

  1. 百マス計算で、計算の高速化
  2. 漢字の前倒しで、言語基礎の習熟
  3. 単純反復による達成感、徹底反復やテスト指導で、成績アップに感動
  • 早い段階で脳のパワーアップを図ると、その後の授業がよりスムーズに進められます。できるだけ学習進度を遅らせないように心がけてください。

3)大阪で奇跡を起こした学習方法
12月と4月に漢字と計算テストを行う。
→その学年で学習した漢字の8割以上を書けるように。
→百マス計算で足し算、引き算、かけ算が2分以内で、できるようにする。
週に3日以上のモジュール授業を確保し、高速な読み書き計算の反復学習で、脳が高速に働くようにする。
重要事項の書かれた基礎プリントを7日前後繰り返し、1年間学習した事を忘れないよう完全に覚えきる。
何回も同じものを繰り返す→脳のパワーアップ

効果的な教材は、「百マス計算」です。
小学2年生の基本タイム 2分30秒
3年生以上 1分30秒〜2分00秒
を目安にしてください。

4)漢字学習
漢字は1年分を繰り返し解いて一気に覚えたほうが効果的です。
任天堂DSの漢字教材は、この考えを有効活用した教材です。
デジタル機器は有効活用すると絶大な効果を生み出します。
今後、デジタル機器を活用した授業はさらに注目されると考えられます。

5、最後に

子どもはゴールがはっきりしていると頑張ることができます。
「これさえやればいい」という気持ちが集中力ややる気を生み出します。
子どもを教育するのは心理戦なのです。

また、教師に必要な力は、観察力です。
教室の隅々まで見渡すぐらい、目をよく動かし、観察する力です。
できないからといって注意するのではなく、子どもたちの弱いところを見つけ出すことが重要です。

説明の後は、百マス計算を実際に参加者に体験してもらいました。
参加者は、時間を計りながら集中して取り組んでいました。

以下、百マス計算のプリントです。
ダウンロードしてご利用ください。
添付ファイル
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【当日の教室の様子・参加者の反応・感想】

先生の巧みな語り口で、会場は笑いありの和やかな雰囲気でした。

教員兼親の方:百マス計算を自分でやってはじめてノウハウがわかりました。
       朝ご飯の大切さもよく理解できました。
中学生:先生は、話し方が面白くわかりやすくて、将来のために役立つ、
良い情報だと思いました。

【講師インタビュー】

Q授業してみての感想
皆さん熱心に聴いてくれたので、とても授業しやすく、よかったと思います。

Aこの記事を読む先生にメッセージを一言
難しいことをゆっくり考えさせるよりも、簡単なことを高速でやることによって脳が鍛えられるのです。実は、簡単なことが子どもたちを高学力に導く秘訣であります。特に新しい指導要領では、短い時間を使って効果的に子どもたちを伸ばしていくことが重要になっているので、この事はさらに大事になっていくのではないかと思っています。

2 関連イベント情報

スペシャル・セミナー 『地域を再生・活性化する「主体的・対話的で深い学び」とは?』

日時:2018年8月18日(土) 12:30〜16:50

会場:エル・おおさか 南館 南ホール(大阪府大阪市北浜東3-14)

内容
○菊池省三先生による講座「いの町・中津市ほかでの取組の現在」
○南惠介先生による講座「木を見て森を見て、そしてまた木を見る~全ての子供たちに小さな社会を紡ぐAL~」
○隂山英男先生による講座「福岡県飯塚市、田川市等における地域ぐるみの取組」
○講師鼎談「地域・学校を再生・活性化する、今後の教育のカタチを考える」

詳細https://www.kokuchpro.com/event/2d7fd7f0601b587906af123eff0d4aa7

 さらに、本記事にご協力いただいた隂山先生が開催されるセミナーをご紹介します。
集中速習導入講座
日時:8月19日午前10時~12時
会場:隂山事務所(京都市丸太町駅東)
講師:岐阜市立梅林小学校長 堀江秀樹校長先生
お申し込み:kage@kageyamahideo.com

【編集後記】

陰山先生の巧みな語り口に引き込まれ、45分の講座はあっと言う間でした。陰山メソッドの説明をお聞きし、やはり基礎基本が一番大切だということを改めて実感させられました。また、自分自身の生活習慣を見直すきっかけにもなりました。特に、私が共感したのは「集中力」の重要性です。私は、そろばんを10年以上習っており、集中力の大切さは身をもって実感しています。集中力は、脳力の土台を形成する大切な要素だと思います。
今回ご紹介いただいた陰山メソッドは、どれもすぐ簡単に始められるものばかりです。
みなさんも、ぜひ実践してみてはいかがでしょうか。
陰山先生、ありがとうございました。

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