「雨のバスていりゅう所」できまりを守る態度を高める(坂本哲彦先生)

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1、はじめに

 
この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。
坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://sakamoto.cside.com/

2、この記事で紹介する実践

資料

「雨のバスていりゅう所で」 東京書籍他

対象

小学校3・4年生

ねらい

 
窓の外を黙ったまま見つめているお母さんの気持ちを話し合うことを通して、順番を守ることの大切さに改めて気付き、公徳心をもって生活しようとする態度を養う。4-(1)

3、学習内容

(1)順番を守ることの大切さ

  • 少し離れたたばこ屋さんの軒先で雨宿りしている並びが、停留所での並び順(早く来た順)であること。
  • 早く来た順に並んでいるのだから、その順番を守ってバスに乗り込むことが大切であること。
  • 自分一人が抜け駆けして、順番抜かしをすることが恥ずかしいこと。

(2)公徳をもって生活しようとする態度

  • 上記の例に限らず、社会の約束やきまり(公徳)を守っている自分、守れていない自分を想起すること。
  • 公徳心(社会の約束やきまりを守ろうとする積極的な心情)をもち続けて生活することは、時に難しいが、とても大切なことであること。
  • (よし子になったつもりで)具体的な生活のめあてや積極的な気持ちをもつこと。

4、学習過程

①順番に並ぶ場面について様々想起し、発表する。(10分)

※ はじめに、黒板に「順番に並ぶ」と書いて問います。
発問1:「『順番に並ぶ』場面にはどんな場面がありますか?いろいろな場面を教えてください。」

①手を洗う ②トイレに行く ③ブランコに乗る ④滑り台を滑る ⑤長いなわとびを跳ぶ ⑥リレーをする ⑦給食を取る など様々出る。

※ どれにも相づちを打ち、ある程度類別しながら板書し、「たくさんあるものだねえ」とみんなと一緒に(教師は大げさに)驚きます。

※ 並ぶ理由については深く追求しないけれど、子どもからの発言があれば、「並ばないとごちゃごちゃになって大変だよねえ」など子どもの発言を繰り返しながら、その意見を広げます。

② 資料を読み話し合う。 (25分)

※ 一度に全てを読み聞かせます。場面絵・重要な文言の短冊を貼りながら読み聞かせられれば、時間短縮になるし、一読で子どもたちの理解を得ることができます。

※ 「『ほら、ごらんなさい。』と言うつもりで、よし子は横に立っているお母さんの顔を見ました。お母さんはだまったまま、知らぬふりをして、まどの外をじっと見つめています。いつもなら、やさしく話しかけてくれるお母さんなのに、今日は、いつもとぜんぜんちがうのです。」のところは、場面絵と文を黒板に書いたものを黒板に添付します。

※ 扱う場面は、一般に(1)順番抜かしをしたよし子をお母さんが連れ戻す場面、(2)今回扱う場面、(3)よし子が自分のしたことを考え始めた最後の場面の三つです。

※ (3)は(理解が不十分な授業の前半で扱うとすると)発言が広がりにくいこと、(1)は順番抜かしをするよし子の不適切さを知的に指摘するだけにとどまりがちになるということから(2)を扱います。

※ (2)の場合には、(1)をされたにも関わらず、まだ自分の不適切さに気付かず「ほら、ごらんなさい」と言うつもりでお母さんの顔を見つめるよし子の一層の不適切さ、不十分さが扱えるよさがあり、母親としての心情も(1)より幅が出ます。

発問2:「いつもと全然違うお母さんはどのようなことを考えながら窓の外をじっと見つめているのでしょうか?」

①たばこ屋さんの軒先に早く来た順に並んでいることが、バスに乗り込む順番なのだということをよし子が理解していないのが不満で情けないと考えている。

②そのことを理解していたとするなら、それを無視して、順番を抜かしてバスに乗り込もうとするのはもっと情けなく、腹が立っている。

③軒先に並んでいる順番はバスに乗る順番なのだけど、バス停まで若干の距離があることから、曖昧な部分もあり、その曖昧さを理由に順番抜かしするよし子は子どもらしいと言えばそうだけど、やはりずるいと思っている。

④「ほらごらんなさい」と言うつもりでいるよし子は、②及び③の可能性が高いのだけど、それをストレートに言わず、黙っているのはよし子に自ら考え気付いてほしいと考えている、など。

※ ①②③については、順番を守ることの意味や場面の状況を知的にきちっと理解させることが大切なので、のタイミングで、<span style=’font-weight:bold;’>「たばこ屋さんの軒先の順番を守るのが人としてできなければならない大切な態度(公徳)」</span>であることを押さえます。ここが曖昧だと授業全体が緩んだ感じになります。

※ その上で、③④について、人間は時としてつい人として不十分な行動、誤った態度(今回は大雨なのでできるだけぬれたくないことや座席に座りたいと考えていること)をとることがあることに気付かせるため、導入の時に出された場面をふり返りながら「このような場面で、順番を抜かしたことはないでしょうか?」と時間を取って、一斉に問い返すことで、「人としての弱さ(自分の弱さ)」に気付かせるとともに、だからこそ、きちんと公徳を守る(順番を守ることを含めて、社会のいろいろなきまりや約束を守る)ことのすばらしさ、よさ、尊さに気付かせます。

※ 黒板に「人として社会のきまりや約束を正しく守ること、実行できることは、時に難しいけれども、きちんとできる人でありたい、できる人でなければならない」と示す。(図式でもキーワードでもよいので……)

③ 話し合ったことをもとに、よし子になったつもりで、「自分がしてきたこと」を考えてプリントに書いてみましょう。(10分)

※ その他にも「よし子に何か言ってあげるとしたら、何と言いますか?」と外からの視点で書かせてもよいです。

5、編集後記

「きまり」は様々な場面に存在する。法律レベルから学校でのお約束まで様々である。それを遵守することは、共同社会の中で生きていくには欠かせない。そのような意識の基礎的な部分を養う事の大切さを感じた。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 伊藤 駿)

6、実践者プロフィール

 
坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。

自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

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