『学び合い』みんなでみんなができるクラスへ!

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『学び合い』みんなでみんなができるクラスへ

横浜市立日限山小学校の5年生の担任をされている三長仁先生による、教師から児童への教授という形をとる従来型の一斉授業形式ではなく、クラス内の児童同士が教え合う『学び合い』と呼ばれている手法を用いた授業方法の紹介です。
すでに課題の達成方法が分かっている児童が、それがわからず困っている児童を教えるというものです。教員は教える役ではなく、目標を設定し、環境を整え、児童の課題遂行を評価するという点に集中するというところに特徴があります。

『学び合い』は、今までの授業のあり方を見直し、新しい教師の役割を提案します。また、その原因の多様さから対応が困難だった「勉強が苦手な子」にもより良いサポートができることも示唆しています。

新しい授業のあり方『学び合い』とは

「みんなでみんなができる」をクラスでやっていく。それが『学び合い』である、と三長先生は語り始めました。 
三長先生にとっても、今までの学び合いは今回紹介するような『学び合い』ではなかったといいます。

今まで行っていた学び合いは、児童に対し「これ、どう思う?」と投げかけ、それを先生が繋げながら授業を進めるという手法で行っていました。しかし、それは「子供たちが動かない」ものでした。それは、先生が児童に教える一斉授業型と大きく変わりはしないのです。そこから新しい『学び合い』に至る為に参考にしたのが、上越教育大学、西川純の「『学び合い』の手引書」です。
(http://jun24kawa.web.fc2.com/manabiai/index3.htm)
以下では、それを基にして作成された、三長先生の提案する『学び合い』について紹介します。

学び合いにおける教師のあり方

学校とは何でしょうか。三長先生にとって、それは「みんなで幸せをつくる場所」です。

では、その中で教師はどういった役割を果たすべきなのでしょうか。
今までは、「教えること」でした。しかし、教師が最善の教え手であるとは限りません。教師が説明すれば説明するほど、子供にとって分からなくなってしまう場合すらあります。
『学び合い』の中での教師の役割はたった三つだけです。それは、

・目標を示すこと

・環境を整えること

・評価をすること

では、誰が子どもに教えれば良いのでしょうか。それは、そのクラスにいる子どもたち自身です。

子どもたちは、とても有能である

「児童は教師と同じように、もしくはそれ以上に有効な教えを行うことが出来る」と三長先生は言います。
 
それまで 理科の実験の授業の時に実験が上手く行かない場合、児童は「先生わからない」と言ったり、自分の班の中で困っているだけでした。
三長先生が『学び合い』を始め、「他の班が困っていたら、他の班の様子を見に行っていいし、助けてもいい」と教えると、ある大人しい男子児童が、ふと隣の班へ歩みより、困っている他の班にその実験を教え、その班は実験を成功させま
した。

一人も見捨てるな!「みんなでみんなができる」ために課題をだす

 
『学び合い』の授業では、クラスの全員ができることを目標とした課題を出し、児童間で教え合ったりすることで達成していきます。
授業1コマを1時間として、課題の説明に5分間、それからおよそ15分くらいで、クラスの「できる子」が課題を最初に達成します。あとの時間は、できる子が困っている子を助けていきながら、徐々に課題を達成する人が増えていきます。
 
先生は、課題を出したら、「ハイどうぞ」と子供たちに自由を与え、自分で課題を遂行したい人はそれに任せ、困っている人には助けが来るように場を整え、全員が課題を達成するとみんなで万歳をします。
算数や社会の授業中に全員で万歳をしている様子は普通ではないでしょうが、これを一年間(1000時間以上)も続けていれば、児童同士の交流も普通より深まり、子どものコミュニケーション能力も上がっていくでしょう。

多様な教え方が、できない子(低学力の子)を助ける

 
できない子にはできない子なりに、理由があり、その解決に、先生一人の教え方でもって、一斉授業形式で対応することはかなり難しいです。
 
『学び合い』では、クラスに30人児童がいれば30通り(児童の数だけ)の教え方があると考えます。そのクラスの30人の中には、勉強が苦手な子にとってbetterな教え方ができる子がいる可能性が高く、児童同士の学び合いのマッチングを図ることで、いわゆる勉強ができない子をサポートすることができます。
もちろん、下の子に合わせたレベルの低い課題を出し続けてしまうと、学力が高い子にとってはつまらない授業になってしまいます。だから、学び合いの課題は徐々にレベルアップしていくことが必要で、それによって全体の学力向上が期待できる、と先生は言います。

講師プロフィール

三長 仁
 横浜市立日限山小学校教諭。『学び合い』について各地で多数の実践発表を行う。

編集後記

(a)「自分ひとりでできること」と、(b)「教師や仲間と一緒にならできること」
には差があり、自分一人ではできないが、周りの仲間などと共同することでできることが多くあります。三長先生の提案する『学び合い』は、児童が先生から「教えられる」ことのみで完成するとは限らないという視点から、児童同士で学びを共有し、児童が学びを拡げていくことができる活動であると思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 芹沢圭佑)

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • 『学び合い』はできる子を伸ばすとも感じています。例えば分数の割り算の単元では、できる子ができない子に教えるという関係の中で、できる子は「なぜひっくり返してかけることが正しい計算方法なのか」について考えられます。限られた時数の中で計算方法の確実な習得(基礎的な内容)とその導出(発展的な内容)を同時に扱うことは『学び合い』以外では難しいのではないでしょうか。

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