「二わのことり」で友達関係(いじめ)を考える(坂本哲彦先生)

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目次

1、はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://sakamoto.cside.com/

2、この記事で紹介する実践

対象

小学校6年生(中学校でも指導可)

ねらい

みそさざいの気持ちを多様に想像することを通して、友達の立場で考えるよさ(方法・観点)、いじめ解消の方法とよさに気付き、いじめを解消しようとする態度を養う。2-(2)

資料

『二わのことり』 東京書籍 どうとく1年副読本

※ 1年生の教材を小学校高学年(又は中学校)で用いる。

3、学習過程

① 資料を読み、感想を出し合い、学習課題を知る(10分)

※  発問1:「感じたことを自由に発表してください。」

※①「みそさざいさんは、やさしい」などみそさざいの行動に関する感想

②「みそさざいさん以外の森の小鳥たちは、もう少しやまがらさんのことを考えた方がいい。音楽会の練習も大切だけど、誕生日は1年に1回しかない」「うぐいすの家の方が明るいからいいと思ったのだろう」など、森の小鳥たちを非難する

意見

③「うぐいすはどうしてやまがらの誕生日をお祝いしないのだろう」などうぐいすに関する意見

④「やまがらさんは、みそさざいさんが来るまではとても寂しかっただろう、でも、みそさざいが来て、とってもうれしかったに違いない」などやまがらさんの気持ちに共感した感想
などが出る。

※ これらの発言を傾聴して、①の発言をもとに、学習課題「みそさざいさんの行動のよさに学ぼう」を提示し、板書する。

② みそさざいの気持ちを話し合う(15分)

※ 発問2:「うぐいすの家でみそさざいさんが考えたことをいろいろ想像して発表してください。」

※ この授業は、「自分がみそさざいだったら、どんなことを考えるか」ではなく、「みそさざいさんは、どんなことを考えたか、いろいろ想像する」ことに重点を置く授業である。

※①「うぐいすさんの家に来てみて、はじめて(または、改めて)やまがらさんのさびしさを感じた。」「うぐいすさんの家が楽しかったので、その分、やまがらさんの家の寂しさが感じられた」(心情理解)

②「うぐいすさんの家に『みんな』が来ていたので、やまがらさんの家に誰も行っていないことに改めて気が付いた。」(状況理解)

③「自分だけでもやまがらさんの家に行けば、やまがらさんは喜んでくれるのではないかと考えた。」(解決方法)

④「友達の小鳥さんも誘っていくといいのかも知れないけど、無理に誘うのは、その小鳥にも、やまがらさんにも、そして、うぐいすさんにも悪いのではないか。」(解決方法の深化)

⑤「今からやまがらさんの家に行くのは、うぐいすさんにとってはいやなことかも知れない。だれも誘わずそっと抜け出すしかないかな?」(解決方法の深化)
⑥「自分が抜け出しても音楽会の練習は可能かな?他の小鳥を誘うと、音楽会の練習そのものがうまくいかなくなるかも知れない、だから一人でそっと抜け出すしかないかな?」

⑦「みんなは、梅の木のある明るいきれいな家だからうぐいすさんの家に行ったのか、それとも、自分がいないと音楽会の練習にならないと考えて、言ったのか、そもそも自分はどういう理由から行ったのだったっけ?自分が来た理由もはっきりしない。」(などということを考えるか・・・)

③ 「最も納得できる考えを話し合う(15分)

※ 発問3:「自分ならどの考え(どの考えとどの考え)に最も納得するか、話し合ってみよう。」

※ どれもそれぞれにある程度「分かる」発言であるが、ここでは、それを敢えて、再度「最も納得できるのはどれか」と問いかけ、考えを深める。その際、「自分なら」として、あくまでも自分の考えとして自分の体験等に引きつけての話し合いをする。②の学習活動の時とさして考えは変わらないかも知れないが、再度話し合うことに意味がある。

※ 全体で1つに決めるとか、2つに決めるとかがねらいではないので、いろいろな考えが、「自分としては最も納得できる」として発表されて構わない。もちろん、板書も様々である。

※ 結論として、みそさざいの「優しく温かい思いやりの心」に気付かせるとともに、いや、むしろ「冷静な状況分析や解決策の構想」がその「温かさや優しさ」を支えていることを話して聞かせる。

※ 発問4:「⑦の他の小鳥たちのうぐいす宅訪問の理由はどっちだと考えるか。」(「小鳥たちの行動が、いじめだということが理解できるか?」と直接発問してもよい。)

※ この読み物資料からだけでは分からないところはあるが、「やまがらのいえは、とおくさびしいところにあります。みんなは、やまがらのいえにはいこうとしません」や「うめのきのある、あかるいきれいなうぐいすさんのいえにいこう」などの記述から、一般的に考えると、「音楽会の練習があること」は言い訳の一つで、「やまがらの誕生日を積極的にはお祝いしたくない」という気持ちがあると考えるのが自然である。この点から、普段から森の小鳥たちは、やまがらを疎ましく感じていることが想像される。

※ いじめには、「無視したり、ものを隠したり、殴ったりする直接的ないじめ」もあるが、「その人からの誘いに乗らない、また、それらしい理由をもとに、その人から遠ざかる消極的ないじめ」があることに関連付け、森の小鳥たちの行動が「いじめ」そのものであることに気付かせる。

※ みそさざいがした行動は、はじめは、いじめの片棒を担ぐものであったら、途中からは、そのいじめの中から出た勇気のある行動であったことを知らせる。それは、「やまがらのうれしそうな気持ち」を参照しながら、感じ取らせる。

※ 「そっと抜け出して」という方法が、いじめ解消にとって最善かどうかは別として、この場合には、やまがらの心を救ったことは確かである。今後の課題として残す。

④ 授業の感想を書く(5分)

※ 書く活動を強制するかどうかは難しいところである。書かない方がいいかも。というか、書けないかも。

引用元: http://bit.ly/TLZxzh

5、編集後記

いじめ問題は昨今教育界を再び賑わせている。そのような中で、一つの対策として道徳授業の増加などがあげられている。その際、このような実践を活かしていくべきだと感じた。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 伊藤駿)

6、実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。

自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

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