1.はじめに
この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://sakamoto.cside.com/
2.この記事で紹介する実践
資料
『わたしはだいじなたからもの』文:カール・ノラック、絵:クロード・K・デュポア
訳:河野万里 ほるぷ出版 2000年11月
下記は『わたしはだいじなたからもの』へのリンクになります。ぜひご覧ください。
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◯あらすじ
ハムスターのロラが友だちのルルに「うちではなんてよばれているの?」と尋ねられ、「ちびちゃんとか、かわいいようせいさんとか、だいじなたからものとか」と答える。ルルはそのような愛情のこもった呼ばれ方をしていなかったので、うらやましくてついロラをバカにして笑う。
ロラは、ショックを受け、いろいろな大人に子どもの頃の呼び名を尋ねて回り、みんなが親から愛情のこもった愛称で呼ばれていたことを知って安心する。そして、親から自分が一番大好きな「だいじなたからもの」と呼ばれてご機嫌になるのだった。
ルルは、自分もかわいい愛称で呼んでくれるように親に頼み、親の愛情を感じながら生活する。
※ パパとママが出てくる物語なので、取り扱いには留意が必要です。学級の実態によっては、使用しないほうがいい場合もあるでしょう。
対象
小学校1・2年生
ねらい
ロラの気持ちについて保護者と一緒に話し合うことを通して、自分(子ども)が愛されていることを改めて実感し、家族みんなが愛情をもって生活しようとする態度を高める。4-(2)
3.学習内容
(1)ロラとルルの気持ちについて考えること(親に愛されたいという気持ちへの共感的な理解)
- ロラ:「だいじなたからもの」と呼ばれるときの気持ちと呼ばれたい訳
- ルル:かわいい呼び方をしてほしい気持ち
(2)自分の生活について振り返ること(愛されている実感)
- 自分が家で呼ばれている愛称とその訳
- 愛称に込められている親の気持ち
- 家族一緒に楽しく仲よく生活していきたいという態度
4.学習過程
(保護者参観授業で行うといいかもしれません。45分授業)
==== ① 資料を読み、ロラとルルの気持ちについて話し合う(25分)
※ OHCで、絵本を拡大して提示する。区切りながら発問し、少し話し合っては次を読み聞かせる。
※ まずは、ルルに家での呼ばれ方を尋ねられて、「ちびちゃんとか、かわいいようせいさんとか、だいじなたからものとか」と答え、笑われたところまでを読み聞かせる。
● 発問1:「ルルはどんな気持ちから笑い出したのでしょうか。そして、笑われたロラはどんなことを考えたでしょうか。二人をくらべて話し合ってみましょう。」ルル、ロラの順で発表させてもいいですが、一人の子どもが双方の気持ちや考えを発表する方が状況も分かりやすく、共感的な理解が進みやすいと思われます。
※ ルル:①幼稚な呼び方だから、②妖精じゃないから、③同様に、子どもは宝物ではないから、④いろいろあだながあることがおかしいから、⑤特に理由はないのだけれど、つい笑ってしまったなどが出るでしょう。自分もそんないい呼ばれ方をしたいからうらやましくてつい笑ってしまったという意見は出ないでしょう。
※ ロラ:①ルルたちはどうして自分の呼ばれ方を笑うのだろうと悲しい気持ちになった、②自分の呼ばれ方をどうこう言うのは失礼だ、③どんな呼ばれ方をされようとそれは勝手ではないか、④みんなは、家ではどんな呼ばれ方をしているのだろうか、などが出るでしょう。
※ ロラの考え④を取り上げながら、「そうだよね、それぞれ、みんないろいろな呼ばれ方をしているはずだよね」として、続きを読む。(おまわりさん、パン屋さん、ベビーカーを押すおかあさんにインタビューしていろいろな呼ばれ方があることを確かめ、ほっとする。家に帰り、うちの大事なたからものと呼ばれてパパとママのうでの中に飛びこむところまで)
● 発問2:「どんな気持ちからロラは、『だいじなたからもの』と呼ばれるのが好きなのでしょうか」
※ このお話の中心です。①ちびちゃんやようせいさんよりも宝物の方が大切なものだから、②自分は「ちび」でも「ようせい」でもないから、③宝物は何よりも大切なものだから、などが出るでしょう。
※ ③を取り上げながら、教師は、どんな呼び方であっても(つまり「ちび」「ようせい」「天使(おまわりさんの小さい頃の呼ばれ方)」「ひよこ(パン屋さん)」「天使(ベビーカーの赤ちゃん)」)その呼び名には、親の愛情、宝物だという気持ちが入っているということを説明して聞かせる。しっとりと温かく、自分の経験なども踏まえて話し、絵本の最後まで読み聞かせて、次の手紙の活動及び可能なら親との交流活動へつなげる。
② 親からの手紙を読み、返事を書く(25分)
● 発問3:「みなさん一人ひとりに、お家の人から、呼び名や名前に込められた思いを手紙に書いていただきました。今日、参観日に来ておられないお父さんやお母さんからも書いていただいています。それを今から配りますから、読んでください。そして、感じたこと、考えたことを返事に書きましょう」
※ 保護者参観授業で実施している場合は、保護者が来ていない子どもに十分配慮しながら授業を進めます。例えば、①代表の保護者12名に対して「名前に込められた思いや子どもの成長、幸せへの願い」などについて、先生が代表してインタビューして、感想を出し合う。あるいは、②子供たちを数グループにして、そのそれぞれのグループに、保護者がランダムに参加して、保護者の思いや願いを話す活動を行う、などをするとよいでしょう。
※ また、保護者が授業にかかわる場面をこの部分だけではなく、途中のロラやルルの気持ちを考えるところにも設定し、一緒に話し合うというのもよいでしょう。
5.編集後記
私も幼少の頃は随分親にわがままを言っていた記憶があります。しかし、本を母と一緒に読むことでたくさんの登場人物の気持ちを考えたり、母と共感したりしながら他人がどのように感じて生きているのか考えるようになったと思います。この実践は子どもたちが愛情を受けていることを確かめ、周囲と自分の価値を考えるいい機会になるはずです。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)
6.実践者プロフィール
坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
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