「ワニとハブとひょうたん池」でいじめについて話し合う(坂本哲彦先生)

1、はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://p.tl/a-TK-

2、対象

中学校3年生

3、ねらい

だれに対しても公正、公平にし、差別や偏見のない学級をつくろうとする態度を養う。4-(4)

4、資料

『ワニとハブとひょうたん池』 重松清 著(「ナイフ」2000年 新潮文庫 所収)

※粗筋

私立女子中学校2年のミキは、ある日突然、クラス・学年の友達から、無視され始めた。学校・塾で誰一人話をしてくれない。休み時間の「死ね死ねコール」、机の上に飾られた一輪の花、「安らかにお眠りください」などと書かれた寄せ書き、いじめで自殺した中高校生の記事の入っている手紙など、いじめは次第にエスカレートする。

いじめの対象は、ミキ以外にも広がり、3年生になったとき、いじめられ始めたのは、ミキをいじめた中心人物サエコであった。彼女は、いじめに耐えきれず違う学校に転校してしまった。
(原文全部はかなり長いので、一部分を抜粋して提示)

5、内容

(1)いじめに対して怒りをもつ。

  • もしミキが自分だったらどう感じるか、想像すること。
  • いじめに対するミキの理解(ゲームとしてのいじめ)について話し合うこと。

(2)自分たちのクラスのいじめについて考える。

  • 自分たちのクラスにいじめ(または、いじめの芽)があるかどうか考えること。

6、学習過程(45分授業)

①ミキの受けたいじめについて話し合う。 (30分)

  • 「今日は、いじめについて考えます」と告げ、すぐに資料提示。「自分がミキだったら、と思って聞いてください。」

・提示1:上記書籍のページ数:P9.4行-P14.4行、P14.最後の行-P15.12行(2年7月初めのある日、突然いじめが始まったところから、1学期が終わるまでの場面。いじめは主に「無視」。)

・ 発問1:「あなたがミキならどんなことを考えるだろうか。どんな気持ちになるだろうか?どんなことをするだろうか。頭の中で、胸の奥で、言いたいこと、したいことを思い浮かべてください。」指名なし。「この後どうなったか、引き続き、夏休みの様子を聞いてもらいます。」

・提示2:上記書籍のページ数:P15.13行-P16.6行、P19.2行-13行、P22.14行-P23.14行(夏休みに入って、差し出し人名のない手紙~いじめで自殺した中高校生の新聞記事入り~が届いたり、塾でも無視されるようになったりした場面。2学期になり、折りたたみ傘が壊されたり、椅子に画鋲が置かれたり、机に「まだ死なないんですか」という紙が置かれたりした場面等)

・発問2:「同じ問いです。あなたがミキならどんなことを考えるだろうか。どんな気持ちになるだろうか?どんなことをするだろうか?頭の中で、胸の奥で、言いたいこと、したいことを思い浮かべてください。」指名なし。「この後、いじめがどうなったか、引き続き、2学期中頃の様子を聞いてもらいます。」

・提示3:上記書籍のページ数:P40.終わり2行-P41.9行(「死ね死ねコール」「机の上の一輪挿し」「安らかにお眠りくださいの寄せ書き」等の場面)

・発問3:「同じ問いです。あなたがミキならどんなことを考えるだろうか。どんな気持ちになるだろうか?どんなことをするだろうか?頭の中で、胸の奥で、言いたいこと、したいことを思い浮かべてください。」指名なし。「このいじめについて、ミキ(また、クラスのみんな)がどう捉えていたか、紹介します。」

・提示4:上記書籍のページ数:P14.5行-15行(「理由なんて、ない。みんなたいくつしている。そして、やたらと厳しい校則や二年生になって急に難しくなった勉強のせいで、たぶん鬱屈もしている。暇つぶしと欲求不満の解消のためにだれかをいじめてやろう。それだけのことだ。これは、ゲーム・・・」と述べている場面)

・発問4:「同じ問いです。あなたがミキならどんなことを考えるだろうか。どんな気持ちになるだろうか?どんなことをするだろうか?頭の中で、胸の奥で、言いたいこと、したいことを思い浮かべてください。」ここで、指名。

  • いじめに対する怒りをしっかり引き出す。「いじめは許せない」など言葉にすると短く重さが感じられないかもしれないが、皆がそれを出し合うことに価値があり、そのことが、いじめを許さない雰囲気をつくる。
  • 言葉にならない思いを教師が拾い、代弁するようにしながら板書する。いじめをする人の不合理さ、醜さ、情けなさが際だつように、問い返しをしたり、教師の思いを話したりする。
  • 「一番かわいそうなのは、もちろん、いじめられている人だけど、それと同じくらい、かわいそうなのは、欲求不満を解消するために人をいじめる人、そして、そんな人の言うことを聞いていじめに荷担する人である。首謀者も追随者も同じほど醜く、かわいそうな人である」ことを共通理解する。
  • いじめに対する憤りを一人一人の子どもたちに実感させるために、

①いじめを受けている人の心情を共感的に理解させること(その人の立場に立って考えてみる)

②ひどいいじめの実態をしっかり伝えること(ここでは、小説の記述)

③教師が毅然とした態度で、いじめの不合理さを訴えること
 の3つの方法をとる。

②自分のクラスでどんないじめの芽があるのか見つめる。(5分)

・発問5:「暇つぶしと欲求不満の解消のためにだれかをいじめてやろうなんて、人間のすることではない。いじめの芽を皆が早く摘むことが大切である。このクラスにいじめの芽はないか、自分のクラスの日頃の様子を見つめてほしい。」

  • プリントに書くことも、発表することも難しい。時間をとって、静かに思いを巡らせる。
  • この活動が必要かどうかはわからない…取ってつけたような感じもする、が、代替え案がない。

③ 教師の思いを語る。(10分)

・提示5:上記書籍のページ数P60.9行-14行。(ミキの後にいじめの対象になったのが、ミキをいじめていた中心人物だったサエコだったこと、また、サエコは、いじめに耐えきれず、転校し拒食症になったという噂が流れたこと・・・)

  • このいじめの顛末を知らせる。このいじめを解決するために、ミキの父母や担任、ミキの小学校の時の同級生の行動等を手短に伝えるなかで、教師の思いを訴える。
  • このような道徳の授業を行うことが非常に大切であるが、それ以上に大切なのは、クラスの人間関係づくりを普段の学校生活の中で行っていくことである。また、分かる授業、楽しい授業、やりがいのある部活動、友達のことが好きで、先生のことが尊敬できるクラスづくり、学校づくりである。そんな土台づくりをしないで、いじめを不合理だと思えるクラスなど生まれようはずがない、というのが、「ミキ」の本当の思いかもしれない。

編集後記

物語の展開に沿って同じ問いを繰り返すことで、児童生徒が、いじめに向き合えるような工夫がなされています。普段の学級運営の中では触れづらい問題だからこそ、このように授業内で時間をとって考えさせる必要があるのではないかと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 薗田誠也)

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