新聞記事を活用した学習活動の研究(穐田剛先生)

1 はじめに

本記事は、中日新聞東京本社と受賞者から許可を得て、第15回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」の受賞論文を掲載させていただいております。
http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/
また、他の受賞論文もご覧いただけると幸いです。
第15回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」の受賞論文 まとめのページ
https://edupedia.jp/entries/show/1049

2 新聞記事を活用した学習活動の研究

3 1.はじめに

本校は、開校四年目の新設校であり(文京区立第五中学校と第七中学校の統合校)、全校生徒が三百名を超える、区内で最も生徒数の多い学校である。開校以来、近隣の新聞販売協会が無償で全クラス分(9クラス)を配達して下さっている朝刊六紙(東京・朝日・毎日・読売・産経・日経)の活用方法が課題となっている。新聞は、様々な情報の宝庫であり、読解力や表現力を身につける上で、大変有用であるが、本校では、今一つ活用できていないのが現状である。

もちろん、各教員が授業等で教材として活用することはおこなっており、私自身も授業の単元内容に関連した新聞記事を、生徒が音読し、内容を要約したり、意見を発表させたりして有効活用している。しかし、毎日配達される新聞を、生徒自身が主体的に読み、学習に活かすという取り組みはおこなわれておらず、大部分の生徒が新聞に関心を持つことはあまりなかった。

さらに、今年度より、朝読書での新聞閲読が禁止になり、読む機会が減ったため、朝配達された状態でリサイクルBOXへ返却されることが、昨年以上に多くなった。それを見る度に、新聞販売店の方々に申訳ない気持ちで一杯になり、この現状を打開することの必要性を痛感していた。

4 2.学級委員会への提案

そこで、5月の一年学級委員会で、私から学級委員に「毎朝、六つの新聞を届けているのに、一部の生徒しか読んでいない。これでは宝の持ちぐされであるから、みんなが新聞を読むための活用方法について考えてみましょう。」と投げかけてみた。各クラスの学級委員(男女各1名,計6名)は、一生懸命考えたが、なかなかアイディアが浮かばなかった。

しばらく沈黙が続いた後、一人の男子生徒が、「生活班が興味のある記事を選ぶのはどうですか?」と言った。この意見がきっかけとなり、次々に意見が出された。「ノートに記事を貼るのはどう?」、「毎日、やった方がいいと思う。」、「ノートはみんなが見られる所に置いておこう。」などなど。学級委員自身が、実施するためのルールを考え、明文化していった。その結果、下記の新聞活用方法が提案された。

(1)一週間ごとに、給食や清掃当番ではない生活班が担当する。

(2)班の中で興味のある新聞記事を一日一つ、選び、『新聞ノート』に貼る。

(3)選んだ記事が掲載されていた新聞名を必ず明記する。その記事の感想も記入する。

(4)金曜日に、5つの記事の感想の中から、クラスで紹介したい記事を1つ選び、帰りの会で代表が発表する。

(5)『新聞ノート』は、学級文庫の棚に置いておき、いつでも閲覧できるようにする。

私は、改めて生徒の前向きな姿勢やアイディアに驚かされ、その活動内容に感心した。一年生である故に、細かいルールについては、教員のアドバイスが必要であったが、活動の骨子は、生徒自身が考えたものである。「これは大変面白い活動になる。」と私は確信し、早速、学年の教員に提案した。学年の教員全員も賛同し、学期途中にもかかわらず、この活動を実行することになった。各クラスの学級委員が趣旨や方法を説明し、運動会終了後からスタートすることになった。

5 3.活動報告

この学習活動を始める上で、一つだけ危惧していたことがあった。それは、記事を選ぶにあたって、条件をつけなかったことである。興味を持った記事を自由に選べるようにするためには、条件をつけないことが不可欠だが、それが逆に、スポーツや芸能など、中学生が興味を持ちやすい内容に偏ることにつながりかねない。しかし、その心配は全くの杞優にすぎなかった。生徒は驚く程、多岐にわたる記事を選んでいたのである。以下にその記事の見出しをいくつか紹介する。

「郷土のなぎなた必修」・・・兵庫県伊丹市のすべての中学校(公立)で必修化・読売新聞

「うな丼、今夏は100円値上げ」・・・吉野家やすき家でうな丼の値上げ・読売新聞

「脱原発 人の波」・・・代々木公園での原発集会に10万人以上参加・毎日新聞

「子育て順調 シンシン」・・・パンダのシンシンが保育器から母親のもとへ・東京新聞

「免疫不全ブタ」・・・ブタの体内で、人間の肝臓を作れる可能性・朝日新聞

確かに、サッカーの日本代表やAKB48 の総選挙の記事を取り上げることもあったが、全体的には少数であり、特定の新聞に偏ることなく、様々な記事を選んでいた。生徒の持つ、幅広い興味・関心に改めて気づかされることになった。

3クラスあわせて100以上の記事が集まった時点で、私から学級委員に「今学期、最も興味深かった記事を学年全員で選んでみませんか。」という提案をしてみた。学級委員は、早速この提案を実行に移し、1学期新聞記事コンテストを開催した。ただ今回は、学期末の忙しい時期のため、学級委員が候補の記事を選び、一年生全員がその中から投票する形式をとった。そして、選ばれた記事を学級委員会新聞(終業式の日に発行)に掲載して、学年全員に結果を伝えた。<※資料1〜4参照>(資料はがんばれ先生!東京新聞教育賞サイト上で閲覧できます。 http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/

この活動を始めて、何よりも嬉しかったことは、毎日クラスに置いてある新聞がしっかりと読まれるようになったことである。休み時間や昼休みに、生徒が熱心に新聞を読んでいる姿を見て、活動が定着していく様子を肌で実感することができた。また、新聞に関心のなかった生徒や活字を読むことが苦手な生徒達の「新聞、結構面白いな。」、「新聞社によって、その日の一面が違うぞ。」という声を聞く度に、この活動が生徒の新聞に対する興味・関心を向上させていると確信した。

6 4.成果と課題

今回、報告した活動によって、生徒の新聞を読む力や新聞記事に興味・関心を持つ姿勢等を伸ばすことができた。また、同級生の選んだ記事を読むことで、興味や関心の幅を広げることもできた。しかし、まだ始まったばかりのこの活動には、改善点も多々ある。例えば、(1)学年の取り組みから全校の取り組みへと広げていくための校内体制の確立、(2)生徒が選んだ記事の有効活用、(3)選んだ記事を発表する機会をさらに多くするための工夫、等がある。そのためには、(1)教職員の共通理解の徹底、(2)生徒が選んだ記事を授業で紹介,活用する、(3)朝礼や学年朝会等で、興味・関心のある記事を発表する機会を作る、等の改善策が挙げられる。そして、この活動を今以上により良いものにしていこうとする熱意も必要不可欠である。

また、ある新聞社の方から、実際に記事を書いた記者の出前授業もおこなっているというアドバイスを頂いた。そうした取り組みも含めて、今後、総合的な学習の時間や学活等の時間を活用して、様々な試みを検討していきたい。

いずれにせよ、この活動を継続させ、さらに発展させていくことが、教員としての私の責務であると考える。雨の日も風の日も、そして雪の日も、毎日必ず新聞を届けて下さる新聞販売店の方々への感謝の気持ちを持ち、さらにより良い活動にしていくための努力を生徒と一緒におこなっていく所存である。

論文の資料は「がんばれ先生!東京新聞教育賞」サイト上で閲覧できます。( http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/

7 講師プロフィール

文京区立音羽中学校 主任教諭 穐田剛
第15回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」受賞

8 引用元

第15回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」受賞論文『新聞記事を活用した学習活動の研究』,文京区立音羽中学校 主任教諭 穐田 剛より引用
「がんばれ先生!東京新聞教育賞」
http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/

本論文は中日新聞東京本社と受賞者から許諾を得て転載しております。
他の受賞論文はこちら→( https://edupedia.jp/entries/show/1049

9 東京新聞教育賞について

「がんばれ先生!東京新聞教育賞」は、東京都教育委員会の後援を受け、平成10年に東京新聞が制定したものです。

学校教育の現場で優れた活動を実践し、子どもたちの成長・発達に寄与している先生方の実像は、ともすれば教育に関わる様々な問題や事件の陰に隠れ、社会一般には充分に伝わっておりません。本賞は、子どもたちの教育に真摯に取り組む「がんばる」先生の実践を募集し、それを広く顕彰・発表することで、先生自身の更なる成長と、学校教育の発展に寄与することを目的としています。

募集は6月から10月中旬にかけて行われ、教育関係者らによる2段階の審査を経て、翌年3月に東京新聞紙面紙上にて受賞作品10点を発表します。受賞者には、賞状・副賞ならびに賞金(1件20万円)が贈られます。

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