先生Q&A 〜ベテランの先生に聞いた未来の先生の疑問・質問 No.1〜

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目次

1.はじめに

EDUPEDIAは現役の先生だけでなく、将来の教育現場を支える教育実習生も応援しています。実習生は将来教壇に立つべく日々勉学に励んでいらっしゃいます。そんな未来の先生たちには先輩の先生に聞きたい疑問や質問が多くあることと思います。そうであるならEDUPEDIAがその疑問を集め、先生方にご回答いただき広く公開することで未来の先生の支えになりたい。そんな思いから、元・小学校教諭で現在大学非常勤講師(教職課程)でいらっしゃる滋賀のタカブーさんにご協力いただき、本Q&Aを作成しました。ぜひご覧下さい。

また、本記事に記載されている内容はあくまで1つの答えに過ぎません。他の異なる答えをお持ちの方がいらっしゃいましたら、未来の先生のためにコメント欄にて提案して下されば幸いです。

2.児童関連のQ&A

Q 児童が居心地よく、かつ成長できる学級を作るために心がけていることは何でしょうか?

Answer

総ての教師が願う究極のテーマですね。ですから基本的なことだけお答えします。まず、子ども1人ひとりとの信頼関係のパイプを太くする営みを毎日積み重ねることです。例えば、「◎◎くん、おはよう」「◎◎くん、さよなら」と名前を言いながら「あいさつ」をすることがスタートです。また、よく児童理解と言われますが、これは教師と子どもの相互理解だと意識したいものです。教師からの一方通行の理解ではありません。ですから、一緒に遊び、一緒に掃除をし、一緒に給食を食べながら、どの子にもどしどし声をかけてあげることで、お互いに理解し合うことが、目的です。そして、ちっちゃいスモールステップを与えて・・ほめることを意識的にします。

例えば、一緒に掃除をする時、「◎◎くん、机を運ぶの、一緒に持って」と頼み、「わっせわっせ」と運び終わったところで、「◎◎くん、ありがとう。助かったよ」と、ほめるわけです。もちろん、授業中でも、授業以外でも、子どもの話を聴く(聞くではない)時は、同じ視線の高さで、子どもの目を見てあげ、子どもに語る時も、子どもの顔から視線をはずさないことです。大事なのは、子どもの不安を安心に変えてあげることですから、毎日毎日くり返すことで、親しみやすい先生だと、子どもが感じてくれるようにしたいですね。

別の言い方をすれば、授業中の子どもの発言を聴き、子どもと子どもの発言をつないでいく教師の姿勢が、友だちの発言を聴こうとする子どもを育てるのだと、自覚できる教師でありたいと、私自身も常々思っております。しかし、その道のりが安易な道程ではないのも事実です。ですから、教師が、笑顔を忘れず、大きすぎない声で、ゆったりと語りかけ、子どもの声に耳を傾け、つぶやきや表情の微妙な変化を見逃さず、自分がミスをしたら、「ごめんね」と謝る手本を示し、信頼される教師になることを心がけることが、大事な基本になるでしょうか。

Q どのような視点をもって児童をみているのか。評価規準以外に持っている視点は何でしょうか?

Answer

子どものよいところも、未熟なところも、丸ごと受けとめる視点と言えばいいでしょうか。そのときどきの、子どもの気持ちに、思いをはせると言えばいいでしょうか。お世話じゃない「ケアの心」を忘れず、子どもの思いへの「心の寄せ方」を大事にしつつ、子どもを観たいと心がけながら、25年間、小学校の子どもたちに接してきたつもりです。

確かに評価規準というものはありますが、昨日のその子より、今日のその子が、ちょっとでも(気持ちだけでも)変容してくれたら共に喜び、その子がつらい目にあえば悲しみに共感し、その子がよくないことをしたら、「どうしたの?」と経緯と気持ちを聴いた上で「どうしたい?」と、その子が考えて行動する支援をしながら、その子がよい方向に動き始めたら必ずほめる、といった、心と心の通い合いを見失わない、教師のぶれない視線があって、初めて、どのような視点を持つかについて語れるような気がしております。

Q 日々の中で、児童に学ばせる大きな目標を意識しているか。しているとすれば、どのようなタイミングで意識をしているのか。

Answer

学校で学ぶということは、教師と子ども1対1ではなく、クラスの仲間と共に学ぶ中で、気づきや、納得や、学びがあるんだ・・そこに値打ちがあるんだ・・このことは、あらゆる場面で意識したいものです。人間関係が希薄になったと言われる現代社会だからこそ、クラスの仲間と共に学び、共に伸びることの喜びを、子どもたちが実感できるようにしてあげたいと考えます。そのためにも、教師自身が「五感」を豊かに磨きたいと、私も自らの課題としているところです。

Q 児童に向けて一番伝えたいことは何ですか?それを伝える時に工夫していることはなんですか?

Answer

困った時は、「これ、どうしたらいいの?」「ここ、どう読むの?」と遠慮なく、周囲にヘルプを求めることが、本当に自立した人間なんだよと伝えたいと考えています。1人で生きていくことはできないわけですから、頼ったり頼られることに抵抗を感じることなく、感謝の気持ちも忘れず、支えたり支えられながら、人生を歩んでいってほしいからです。

ですから、国語で各自が音読している時には「読めない字があったら、隣の人に聴くんだよ」、算数のプリント学習をしている時には、「わからないかったら、周りの人に聴いてごらん」と助言することが大事です。そして、「聴かれた時は、親切に教えてあげてね」という、ひと言も忘れたくないですね。わからなくて、じっと固まっている子どもが、1人もいない教室、お節介じゃない、さり気ないやさしさ、そんな空気のクラスに育てられたら、ステキだなあと思います。

Q 児童の発言が多くなる質問の仕方は何ですか?

Answer

どんな発問でも、必ず「先生にも聴かせてほしいな」と言い添えます。教師と子どもの信頼関係づくりというベースがあっての話ですが・・。「先生にも聴かせて」と言われたら、言いたくなる子どもたちは徐々に増えていくでしょう。さらに、「今、◎◎くんが言ってくれたことから、気づいたことないかな?」と、教師が子どもの発言をつないでいく役割をしていくと、どの子も発言しやすくなります。「他にないですか?」という問い方は、先生が望んでいる答えを言わなくっちゃ、と子どもを身構えさせ、子どもは発言することに用心深くなり、発言する子が減ります。その結果、よく発言する子と先生のやりとりだけで授業が進むことになります。

そうではなく、子どものモゴモゴ発言や、単語発言や、ボソボソ発言も、切り捨てずに、「今、◎◎さんが言いたかったことを、言える人はいないかな?」とか「今、◎◎くんの言おうとした続きが、言える人?」と、つないであげることで、どの子も、発言してよかった、と思えるし、そんな聴き合おうとする雰囲気が教室に生まれてきます。また、「わかった人?」「できた人?」と問うよりも、「困っていることはないかな?」「わかりにくいところはどこ?」と問い、「まだ、できてないよ(書けてないよ)、という人は手を挙げて教えてね」と言うほうが、「ちぇっ、先に言われちゃった」「あ~あ、今、言おうと思ってたのに」と言う、しらけた発言も出なくなります。

Q 軽い発達障害の子どもやグレーゾーンの子ども、コミュニケーションをとるのが苦手な子どもが授業やクラスの雰囲気に入り辛そうにしている時、先生方はどのような声掛けやきっかけ作りをしていますか?

Answer

先生に自分ばかりをあててほしいから、子どもたちが「ハイハイ」と挙手する声(音)の苦手な子もいます。そういうハイハイ発言が出ない問いかけを、普段から心がけたいものです。授業における発問とは、子どもが考え、気づき、学ぶためのものです。ですから、「発表してください」のような意見発表会の司会になると、聴き合う温かい雰囲気がなくなり、入りづらい子には、つらいでしょう。また、「正解です」のようなクイズ大会の司会をすると、○×の結果だけに興味がいき、入りづらい子には、やはり、つらいでしょう。

1人ひとりのわからなさや困った感やつまずきを教師が大事にすることで、入りやすい落ち着いた空気の教室になります。「静かにしなさい」と大声をあげる前に、子どもが聴きたくなるような語りかけを、まず工夫したいものです。

例えば、絵本の読み聞かせを始めるなら、「絵本は見えていますか?」と問うと、見ている子だけが「はーい」と答えます。そうじゃなくて、「絵本が見えてない子はいないかな?」と問うと、子どもたちも周囲を見回して、入りづらい子にも「こっちにおいでよ」「いっしょに見ようよ」と、優しく声をかけてくれるあったかい空気が生まれます。そして、教師の声もできるだけ、大声、どなり声、命令声を減らして、やわらかな声、大きくないしっとりした声、ゆったりした声を心がけることで、気持ちが落ち着かない子のイライラ感を低減することができ、そういった空気が教室(授業)に入りやすい「呼び水」となるのではないでしょうか。

Q いじめなど、デリケートな問題の対処で気をつけるべき点はなんでしょうか?

Answer

いじめられている子は、いつもと違う雰囲気(表情・仕草・態度)があるはずですから、まず、それを見逃さないことです。即座に、職場の同僚に報告・連絡・相談します。集団指導体制を、速やかに立ち上げます。そして、その子のつらい気持ちを、本気で思う心があるかどうかが、教師として問われます。「先生は、あなたを絶対に守る」という断固たる決意を、言動で示します。ここまでは隠密行動です。

その次は、いじめていた子が複数なら、複数の教師で個別に(同時に)事情を聞きます。そして、口裏合わせを防ぎます。さらに、イジメの構図を明らかにします。その後、いじめている子には注意を促し、何が間違っていたかを考えさせ、その子の気づきや変容(心から謝ろうとする行動)をほめることまで見通しているか(最後は必ずほめることまで到達できているか)、それとも、ただ感情的に(腹を立てて)怒鳴っている(怒りっ放し)だけか、この2つの教師の意識(イジメを受けた子ども、イジメをした子ども、信頼関係の再構築をしようとしているか否か)の間に、そのイジメを真に解決できるのか、それとも、モグラたたき(悪者のレッテル貼り)に終わるかの、境界線があるような気がします。
最終的に、イジメをした子が心から詫びて、親も心から詫びることができれば、イジメをした子は、二度と同じ過ちはくり返しません。それでも、イジメを受けた子の心の傷は、なかなか癒えないものです。寄り添うことも、時間をかけてあげる必要があります。だからこそ、集団指導体制で、寄り添える教師も複数人数を確保しておくのです。卒業まで2年、3年あるなら、なおさらです。

そこで、会津藩「什の掟」を真似した以下の掟を参考にしてください。

『イジメも差別も体罰も「ならぬことはなりませぬ」』

★イジメかどうかを決める権利があるのは、イジメを受けた被害者だけです。その権利は、加害者にも、その親にも、学校にもありませぬ。やっておきながら、イジメではない、としらを切ってはなりませぬ。

★体罰かどうかを決める権利があるのは、体罰を受けた被害者だけです。その権利は、加害者にも、他の子どもの保護者たちにも、学校にもありませぬ。やっておきながら、体罰ではない、とうそぶいてはなりませぬ。

★被害者が弱いと他人が勝手に決めつけてはなりませぬ。誰にも決めつける権利はありませぬ。イジメも体罰も、ならぬことはなりませぬ。

★差別かどうかを決める権利があるのは、差別を受けた人だけです。その権利は、差別をした人にはありませぬ。見て見ぬふりも、してはなりませぬ。

★虐待・パワハラ・セクハラ・DVかどうかを決める権利があるのは、された人だけです。その権利は、加害者にはありませぬ。やっておきながらしていない、と開き直ってはなりませぬ。虐待・パワハラ・セクハラ・DV、ならぬことはなりませぬ。

3.授業に関するQ&A

Q 授業の準備ではどんなことをしますか?

Answer

毎週木曜日に来週の週計画(1週間の時間割)を作成し、金曜日には帰りの会で子どもたちに配ります。それに従って、理科の実験など前日準備が必要な場合は事前準備(実験用具のチェック)をします。月曜日に高学年の理科があると、金曜日の放課後か土曜日出勤して事前準備する先生方が少なくありません。国語なら、明日の授業の主な発問を考えたり、どの新出漢字を教えるかを決めます。算数や社会なら、明日の授業の構成を考えます。生活や図工や家庭で、家から持って来てほしい物がある場合は前日ではなくて、もっと早い段階の学級通信or学年通信でそのことを保護者にお願いしておくのが礼儀でしょう。絵を描く用紙や、ミシンで縫うエプロンなど教材も早い段階で発注(学年単位)しておく必要があります。家庭学習(宿題)も、子どもの負担を考えて、バランスよく決めてあげたいですね。音楽や体育も、指導のポイントを考えて(聞いて)おくといいでしょうね。というように、ポイントをあげればきりがありません。ひと言で表現するなら、いざ授業!であわてなくてすむように「段取り」をしておくことでしょうか。「段取り」とは、授業の「見通し」を持つこととも言えます。若い先生方は、周囲のベテランの先生方にどしどし聞くのが最もよいと思います。私たちは「先輩の技を盗め」と言われました。大規模校なら同じ学年の教師同士で内容によっては準備を分担することも可能ですし、一緒に準備をすることで同僚から学べることも数多くあるはずです。

Q いつ授業を考えていますか?

Answer

授業の終わりに明日の授業のイメージが持てます。そして、何もなければ放課後に明日の授業の「段取り」をします。放課後に仕事(出張・訪宅・保護者来校:教育相談)が入っていたら、やむを得ずそれが終わってからになります。ちょっとした時間に同じ学年の先生方と相談するのもいいでしょうね。すべての授業の指導案(細案・略案)を書くなんて不可能ですから、自分のやれる範囲でいいと思いますよ。私は晩ご飯の後は、子どもの日記に返事を書くことを習慣(隔日)にしていましたが、そういう教師は少数派だったかも知れません。少数派の私は日記に返事を書きながら、授業におけるその子を浮かべていました。◎◎君は、分数が苦手だからどう助言しようかな、とか、△△さんは読解が苦手だから机間支援でこうしよう、とかです。キザなことを言いますが、私にとって授業を考えるとは、その教科が苦手な子どもの顔を浮かべながら、それぞれの子にどんな支援をしようか、と考えることでした。

4.おわりに

本記事は多くの方々にご協力頂いて完成させることができました。質問に回答してくださった滋賀のタカブーさんはもちろんのこと、twitterを通じて質問を寄せていただいた大学生の方々のご協力がなければ本記事を書き上げることはできませんでした。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

EDUPEDIAは今後もユーザーの方々に寄り添い、ニーズの高い記事を提供しつつアンケート等で交流を行いたいと考えております。その際は是非またご協力いただければ幸いです。

本記事は二部構成です。以下の記事もあわせてご覧下さい。

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