『リュックのりゅう坊』で参観日の道徳授業(坂本哲彦先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→http://sakamoto.cside.com/

元気で楽しい「リュックのりゅう坊」のお話です。
泣くことの価値、意味について、子供たち、そしてその親たちに考えてもらう授業です。「涙は、元気の素」「泣くことは心を元気にする行動」であることを分かってもらいたいと考えて、この授業を構想しました。

2 授業のねらい

【児童のねらい】
(泣くことで)明るく伸び伸びと生活しようとする心情を育てる。

【お家の人のねらい】(参観授業なら…)
 子供をしっかり抱きしめたり、子供が真剣に泣くことを手助けしたりして、子供の成長を促そうとする態度を養う。

3 対象

小学1・2年生

4 資料

【資 料】 『ともだちいっぱい リュックのりゅう坊①』
工藤直子 作・長 新太 絵 2005年4月、文渓堂

5 学習過程(45~60分授業)

  • 朝の読書や語り聞かせの時に同書を一度読み聞かせておきます。

それができない場合は、60分授業にして、初めの20分は、語り聞かせの時間として確保する必要があるでしょう。
* この本は、4つの短いお話でできています。ここでは、3つ目の「あとからあとから、なみだがこぼれる日」を取り扱います。
* 保護者参観の時に公開するのが効果的だと考えます。

①「4つとも楽しいお話ですね。4つの内、一番心に残ったお話はどれですか?」(15分)

  • 全員に手を挙げさせる。それぞれのお話ごとに2,3人指名して、理由と印象に残った場面を尋ね、再提示する。長めに時間を取り、リュックのりゅう坊の「明るさ」「元気のよさ」などを強調し、楽しく生活することのよさを広げる。板書で押さえる。
  • 3つめのお話「あとからあとから、なみだがこぼれる日」の印象を尋ねる。元気なりゅう坊も、涙がこぼれる日があることの不思議や疑問を引き出す。

②「今日は、涙がこぼれる日の話を取り上げて、話し合ってみましょう。ほらあなの中で目をあけているのはなぜだろうか?」(10分)

  • 「こわいゆめみて目がさめたんだ」と話者が書いていることを最初に確認する。同時に同じような経験はないかと尋ね、子供たちの生活とつなげる。経験を発表させてもいい。暗くならないように明るい雰囲気で進行する。
  • そのほかにも、夜眠れないことがあった経験などを発表させることも可。でも、あくまでも楽しい雰囲気で行う。

③「『お月さん、ぼく、きた』りゅう坊は、お月様にほっぺたをこすりつけた。とあるんだけど、このときのりゅう坊はどんな気持ちなのかなあ?同じような経験がない人もいると思うんだけど、りゅう坊になったつもりで想像してみましょう。」(10~15分)

  • 「ないたらさびしさがどっかにいくから、いっぱいなきたい」「お月さんに甘えたい」「たっぷりなきたい。ないて元気になりたい」「どんな気持ちなのかりゅう坊にもわからない」「どんな気持ちなのかわからないけど、自分にもそんなことがある。」「そんなこと先生にたずねられても困る」等々の考えが出てくる。
  • それぞれ認めると共に、「泣くことが恥ずかしいことではないこと」「泣くことで、元気がでることがあること」「甘えられる人がいることはいいこと」などを共通理解する。②と同じように、「なんだかわからないけど、泣きたくなるときがあった経験」を尋ねたり、「泣いた後の気持ち」「気持ちの変化」等を発表させたりする。
  • 「恥ずかしがらずに泣く」「精一杯泣く」っていうことが、生活する上で大切なことであることに気付かせる。担任の経験を語ってもよい。
  • 動作化や役割演技などに慣れている学級なら、先生がお月様のお面をかぶって、前に座り、そこへ子供が出て、りゅう坊の役を演じさせる。

~以下会話文~
◇りゅう坊「お月さん、ぼく、きた」
◇月   「こんばんは、りゅう坊。ここへおすわり」
◇りゅう坊「あのね、お月さん」
◇月   「うん。どうしたの?」
◇りゅう坊「ぼくね、なんだかさびしくなったの」
◇月   「よしよし」
◇りゅう坊「ぼくね、なんだかなきたいの」
◇月   「そうかい、そうかい。それでは、ここで、たっぷりおなき。そういうときは、なくのがいちばん。たっぷりないて、さびしいのを、ぜんぶこぼしておしまい。」
◇りゅう坊「うん、そうする。ぼく、なく」・・・・
(同書、42,43ページより抜粋引用)

  • もっと、子供たち同士の雰囲気ができているところなら、二人組でやらせてみるのも可。ただし、相当難しい。
  • 参観授業で、参観に来られているお家の方との代表ペアーというのももっといい。全員のお家の方が参観に来られていることは通常ないので、代表のお母さんとその子供さんに前でやってもらうということになる。最も望ましい授業像。

④「先生はね、・・・(教師の思いを語る)」(5~10分)

  • 泣いた後、「せんべいを食べた」というとことがミソ。泣くだけではなく、しっかり泣いた後は、おいしいものを食べて、体に栄養を与えることも大切なことを伝える。
  • 参観されているお家の方に、ねらいにかかわることを話す。後の学級懇談の時でもよい。

(以上http://sakamoto.cside.com/sakamoto2005/ryuubou.htmより引用)

6 編集後記

授業参観で取り扱うに適した題材です。登場人物の気持ちなどを深く考えることで、児童には泣くことは決して恥ずかしいことでも悪いことでもないことや、泣くことで明るくのびのびと生活していこうとする信条を培うことを目指しています。また保護者には子どもが泣いていてもしっかりと抱きしめたり、子どもの感情に向き合って子どもの成長を促そうとしたりする態度を養うことを目指しています。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 水島淳)

7 実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。 山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

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