「あの日の奈良」で自己をみつめる(坂本哲彦先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。

坂本哲彦先生のホームページはこちらです。→ http://p.tl/a-TK-

2 授業のねらい

自己を見つめ、自己の向上を図るとともに、個性を伸ばして充実した生き方をしようとする心を育てる。

3 対象

中学3年生 (特に卒業文集を書く前あたりの時期)

4 学習内容

(1) デビュー前、お茶屋さんで色紙にサインしたときに「ももちゃん」の気持ちを想像すること。

(2) 各自が15年後の自分を想像すること。

5 資料

『あの日の奈良』 さくらももこ作 (「さくらえび」 新潮文庫 (2004年) 所収)

〇概要〇
1984年11月14日静岡英和短大の学生で19才だったさくらももこが、学校の研修旅行で奈良を友達と自由に見て回っているときに寄った「お茶屋での出来事」。

店内は、訪れた学生たちの色紙がいっぱい飾ってあった。店のおばさんから色紙とクレヨンを渡され『記念に何か書いてくださいな』と頼まれ、はじめてペンネームでサインをしたももこ。「何とも照れくさいし、緊張した」。
それから16年後、友達と再び奈良を旅行し、「どうしよかと迷った」が、お茶屋を訪ねることに。

店に入ると、入った途端によく見える所にももこの色紙が飾られていた。ももこと友達は「黙ってそれを見ていた」。店のおばさんが出てきて、「いらっしゃい。どうぞおあがりください」と声をかけてくれたが、それでも「まだ黙って色紙を見ていた」。

おばさんが「ああ、この色紙ね、ちびまる子ちゃんのさくらももこさんが、まだ、学生さんだった頃にうちにいらして描いていってくれたんですよ。・・・うちの家宝なんですよ」とにこにこして説明してくれる。「ファンの方ですか?」
返事にとまどっていると、おばさんは「・・・もしかして、さくらももこさんですか?」と尋ねる。「・・・はい、そうです。本当におひさしぶりです」。胸がいっぱいで、やっと言えた。それを聞いたおばさんは、ものすごく感動した表情で「本当に?さくらももこさんですか。やっぱり・・・」

お店の人とのしばしば懐かしいふれあいの中、ももこは、「あの日から再びここへくるまでの月日は長いとも短いとも言えないが、良いことも辛かったことも全て含めて私自身になっている」「16年前の私は、16年後の私に、どのようになっていてほしいと思っていただろうか。」と振り返る。

6 学習過程 (45分授業)

①15年後の自分はどうなっているか想像する。(10分)

発問1:「みなさんは、15年後どうしているでしょうか?」

  • プリントに書いてもよいし、自由に発表してもよい。そのクラスの雰囲気によるが、できれば、笑い合いながら、自由に(しかし、悪ふざけはなく)発表できるのが望ましい。

②「初めて色紙にサインをするももこの気持ちを話し合う」(15分)

提示1:「あれから16年も経った」の前まで読む。

  • さくらももこの作品(ちびまる子ちゃん等)を紹介するなど、主人公についての理解を広げてもよい。(19才、在学中にあの有名な少女雑誌「リボン」にデビュー。翌々年から同雑誌にちびまる子ちゃん連載開始等)

発問2:「ももこは、色紙にサインしているとき、どんな気持ちだったろうか?」

  • 将来に向けて希望や期待が膨らむと同時に、不安なども大きかっただろうということを、子どもたちなりに捉えさせる。
  • 卒業を間近に控えた子どもたちと似た心情であることを掴ませる。

③再度15年後の自分について想像して、プリントに書く。(20分)

提示2:最後まで読み聞かせる。(10分程度)

発問3:「16年前の私は、16年後の私に、どのようになっていて欲しいと思っていただろうか。」の部分を引き合いに、「15年後の自分に、どのようになって欲しいと思っていますか」と問う。

(この話に沿って16年後でもいいが、15年後だと30才となり、きりがよい)

  • 静かにプリントに書く。
  • 卒業を控えて、自分の将来についての思いを膨らませることの大切さについて、教師の方から話す。

7 編集後記

日ごろ、将来の自分の姿を想像する機会はあまりないと思います。また、卒業前の子どもたちの心は、卒業後に進む次のステップへの不安でいっぱいです。

しかし、そのような時期に、15年後の自分を想像する機会を設けることで、子どもたちは将来の自分の姿を実現するための道しるべを見出すと同時に、将来の生活への期待や希望がより大きくなるのではないかと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 嶋村弥寿)

8 実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。

坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

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