「十進位取り記数法」の指導(はなまるサポート)

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目次

1 概要

この実践は(株)教育同人社の許可を得て、「はなまるサポート」の学習指導ポイント一覧より転載しています。
実践の続き(無料)は最下部のURLからご覧ください。
また、以下より実践をPDFでダウンロードできます。
添付ファイル

2 導入

夏休みも残り一週間,ところによっては二学期が始まっている頃ですね。そして,そろそろ9月以降の指導内容が気になり出す時期です。

これまで,いろいろな校内研修に参加させていただきましたが,算数科の指導の基礎的な内容として「十進位取り記数法」があり,そのあたりの理解が不十分なまま指導が行われている現状に直面しています。そこで今回は以前に取り上げた「十進位取り記数法」(http://www.djn.co.jp/support/special/point/docs/2011/8/2/1.php)についてもう一度提案いたしますので,参考にしていただければ有り難いです。
(初等教育研究所 山﨑 憲)

指導に「位取り表」を生かそう。こんな場面で使いませんか

3 0,はじめに~十進位取り記数法とは~

(1) 十進記数法

十進記数法とは、ある数の個数が10まとまったとき,別の単位を作る数の表し方。つまり10個のまとまりのまとまりを作る考え方である。

例)漢数字で数を表す場合:「一」が10個で「十」,「十」が10個で「百」,「百」が10個で「千」のように。もし,数量が3056個あった場合,その数量は「三千五十六」と表される。これは縦書きでも横書きでも自由である。


上の画像は,十進記数法である。しかし,どんな位置に書いても良いから位取り記数法ではない。

(2) 位取り記数法

数字を書く位置によってその単位が決まる。つまり単位を表す新しい”記号”は必要としない。必要なことは数字を書く場所をはっきりと決めることである。

十進位取り記数法

例えば,数量が3056個あったとき,それを位取り記数法によって表すならば,10個で1つ上の単位になる場合は,左の部屋に1つ繰り上がるのである。つまり,各部屋にはその単位の個数を記入すればよいのであり,その個数が無いところ(「空位」)には,空位を表す「0」を書くのである。全体の数量は, で表される。

上の位取り記数法は,10個になったら左の位に1つ進むので,十進位取り記数法である。従ってどの部屋にもその個数を表す1~9の数字が用いられ,空位には0が使われる。

二進位取り記数法

例えば,「2進法」と言われる記数法があるが,これは正しくは「二進位取り記数法」である。すなわち,2個になったら左の位に1つ進むことになる。従ってどの部屋にも1か空位の0が用いられる。下の位取り表で表された数量は,

となる。

4 1,2位数+2位数=3位数の筆算(2年)

  • 上の計算は既習事項である。すなわち,一の位が10個以上になったので十の位に1繰り上げたのである。
  • このように筆算は位取り表そのものを媒介にした計算である。従って十進位取り記数法に基づいて表記されるべきものである。

  • ところが,位取り表に上のような絵を挿入している指導が見られる。これは,それぞれの位の量的感覚を持たせた方が理解しやすいという考え方によるものだろうが,指導の仕方に気を付けないと次のようなことが起こる。すなわち,「十の位」にはブロックは9個までしか入らないはずが,50個も入っていると受け取られ,十進位取り記数法の意味が損なわれかねないのである。このことがはっきりしていないと,2位数+2位数=3位数の筆算では,新たに「百の位」を起こす必要性がなくなる。

  • つまり,十の位にも「12」と表記してしまい,新たに1つ上の単位を必要としないと考える子どもが出てくる心配があるのである。
  • この場面は,「新たな位」が必要だという認識を持たせ,十進位取り記数法の正しい表記に基づいて,0~9の数字を用いて筆算を指導する必要がある。

2,10000より大きな数の指導(3年)

  • 00000より大きな数の量感を養うために色々な実物を用意して体感させている授業展開を見ることがあるが,それはこの単元の真の目標だろうか。答えは否である。
  • 子どもたちは,一万までの数では,その表し方の原理は一,十,百,千,万の位にそれぞれ10個で左に1つ繰り上がることを学習している。このままで進むなら,「万」の次には,その10個分を表す新たな単位があるはずだと考えるのが当然である。
  • ところが,実際には新たな単位は「十万」「百万」「千万」であり,それを知ることによって,新しい単位は,今までの「一」「十」「百」「千」に「万」をつけた言い方だと気づくのである。下の位取り表は,4年生の単元で利用されとよいものであるが


その前の段階として,次のように位取り表を示して「億」以上にも,表記上の決まりがあることに気づかせていくことが大切である。すなわち,自分たちが利用している位取り表は,十進法と万進法の併用であることに気づかせたい。

  • それを顕著にするために,下記のように欧米の十進法と千進法の併用を紹介するのも1つの方法であろう。

参考文献

算数教育の新しい体系と課題(シリーズ,全10巻)
第2巻 数学的な考え方を育てる「数」の指導(片桐重男著、明治図書、1995年)

実践の続き

全4部構成なのでこちらからご覧下さい。

5 実践者紹介

山﨑憲
元東京都算数教育研究会会長。
「小学校時代から現在までで,今が最も算数がすき」と,小学校退職後も算数教育に没頭し,現職時代に引き続き年に数回研究授業も試みている。
現在東京学芸大学講師として初等算数科教育法を担当。
またボランティアとして東村山市算数教室を開催し算数好きの子どもの育成を目指している。

6 サービス紹介

同社の「はなまるサポート」では、若い先生のための授業ヒント集として、毎月の学習指導ポイントを細かく解説をしたり、不明点や疑問点などを無料で相談できたりします。
http://www.djn.co.jp/support/
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 水島淳)

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