「ウシと車の軸」で助け合うことについて考える(坂本哲彦先生)

はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://sakamoto.cside.com/

概要

対象

小学校3,4年生(以上なら何年生でも可) 
 

ねらい

ウシの言葉を話し合う中で、友達として「してよいこと悪いこと」についての気付きを深め、互いに助け合おうとする態度を養う。
 

資料

『イソップのお話』編訳:河野与一 岩波少年文庫020(1995年7月)

①ウシが車をひっぱっていた。車の軸が、ギイギイ音をたてたので、ふり向いてこういった。

②「われわれが重いものをひっぱっているのに、なにをガミガミいうのだ。」

③こういうふうに、ほかの人がほねを折っているのに、じぶんのほうがつかれているような顔をする人がある。

学習内容

友達として行うべきこと(友達のよさ)

  • 困っている友達を助けること(困っているときこそ助け合えること)
  • 自分だけ楽をしないこと(一緒に楽しんだり苦しんだりすること)

自分の生活について振り返って考えること

  • これまで、これからの生活(自分なりの友達観、友達観の捉え直し)
  • 友達を大切にしようとする気持ちの高まり(友達を大切にしたいという気持ちと、なかなかできない自分への気付き)

授業指導案

学習のポイント

  • 朝礼などの5分程度の説話で使うのも効果が高い。
  • 「熊が教えてくれたこと」(https://edupedia.jp/entries/show/1353)終末での教師の話に使うのも有効だと思います。それを敢えて、45分に引き延ばして指導すると、以下の授業指導案です。
  • 上記資料①②③を順に提示しながら内容を予想させながら学習を進めます。

友達の「頑張り」を発表する。(10分)  

発問1:「みなさんには、たくさんの友達がいると思います。この人のこんなところはすごいなあという友達がいるでしょう?周りを見渡しながら、黙って、そんな『友達の頑張り』をおもいだしてください。」

(1分時間を取る。静かな時間)

「では、すごいなと思う頑張りを見付けられた友達は何人いましたか?指で示して、みんなに、そして先生に教えてください。」

価値への導入を図る活動です。別に何人でもよく、多いのがよいわけでも、少ないのが悪いわけでもありませんから、そのことをさらっと伝えながら、「みなさんには、周りにお手本となる『頑張っている友達』がたくさんいますね。とってもすばらしいことです。」と受容します。

「今日は、友達、あるいは、一緒に生活する人として大切なこと(心がけ、物の見方)をみんなで考えてみることにしましょう。」と伝えて、資料提示に移ります。

資料は大変短いので、それぞれ資料①②③を短冊黒板などに書いておいて、順に提示することにします。まずは、資料①だけ(及びそれを分かりやすく示した場面絵)を提示して「発問2」です。

この寓話のいいたいことについて話し合う。(25分)

発問2:「ウシは何といったと思いますか?」

ア 少し黙っていてくれないか。イ ギイギイいうと力が入らない。
ウ お前(車の軸)がもう少し滑らかに動くなら、もう少し軽く引っ張れるのだけど。
エ 引っ張っている方の身にもなってくれ。オ 疲れたなあ、少し休みたい 等々いろいろな考えを笑顔で受容し、他の子どもに広げます。

ア~オなどに束ね板書します。そして、a)「あなたがウシだったら、どうかなあ、ギイギイいわれるとイライラするかな?」、b)「先生だったら、ちょっと手伝ってほしいと思うだろうなあ」、などと適宜全体に問い返しながら、ウシの気持ちを理解させます。そして、資料②を提示して、「みなさんが予想したことはおおよそ当たっていたようですね。」と褒め、発問3に移ります。

発問3:「これは、イソップ童話です。イソップ童話は、『寓話』といって、人間のようにしゃべる(擬人化したという)動物などを主人公に、人間が生きる上での教訓(教えさとすこと。また、その内容・言葉のこと)や風刺(社会や人物の欠点・罪悪を遠回しに批判すること)を織りこんだ物語です。では、このお話は、真面目に一生懸命働いている人(ウシ)に対して、周りにいる人(ここでは、車の軸)のどんなところが悪くて、どうしたらいいと注意している(諭している)のだと思いますか?次の文の続きをプリントに書いて、話し合いましょう。」

「こういうふうに、ほかの人がほねを折っているのに(一生懸命努力、苦労しているのに)、……ような顔をする人があります。」と書かれたプリントに一人ひとりの考えを書かせます。

時間があるので、発表させましょう。ア もっと頑張れ、頑張れと叱るような顔をする人がいる、イ 自分が命令してやらせているような顔をする人がいる、
ウ 全然手伝わないで、平気な顔をする人がいる、エ 全然関係ないことをいったりしたりして、頑張っているのを邪魔する人がいる などが出るでしょう。それぞれに括りながら板書します。

 ある程度出尽くしたら、寓話の資料③(「こういうふうに、ほかの人がほねを折っているのに、じぶんのほうがつかれているような顔をする人があります」)を知らせます。短冊などに書いて、それを少しずつ見せるようにしながら(じらしながら)知らせると効果的でしょう。そして、車の軸は、特に何もしていないのに、「ギイギイ」音をたて、自分も頑張っているようなふり、あるいは、自分の方がもっとすごいことをしているようなふりをしている、それは、本当に頑張っている人にとっては失礼な行動であること、自分ができることを黙ってすることが大切であることを話して聞かせます。

自分の生活を振り返って、感想を書く。(7分)

発問4:「授業中に考えたことや、普段自分が友達に対してしていることや、友達に対してどんなことをしているのかなどについて、プリントに書きましょう。」

あまり押しつけがましくならないことが大切です。さらっと発問して、自由に書かせるのがよいかもしれません。

教師の話を聞く。(3分)

自分が友達よりも優れていると思いたい気持ちは誰にでもあります。同様に、友達が努力していたら、自分はそれ以上に努力していると自分や周りの人に認めてもらいたい気持ちもあります。時には、そのことを周りの人にしっかり伝えることも大切ですが、それは、数少なく、控えめにすることです。特に、周りの人が一生懸命何かに努力して、大変なときに、あれこれ言うのは失礼でしょう。自分に与えられた仕事を淡々とやり、それをひけらかさないことが、周りの人と上手く生活していくためには大切でしょう。また、あまり「疲れた、疲れた」「頑張っている、頑張っている」言わないこと(または、すぐに話題を自分の話にしたがるようにしないこと)ともエチケットとして必要でしょうね。

編集後記

「能ある鷹は爪を隠す」という言葉を想起する授業案でした。周囲の人の頑張りを認める姿勢、人知れず努力する姿は、自分がしんどい状況にたたされたときに忘れがちなものです。ただ、同時に本当につらい時にSOSを出す力、友人のそうした状況に気づける力も身につけられるとよいと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 小屋松ちひろ)

実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。

自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

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