「ディズニーランドのお子様ランチ」で 人間愛の精神を培う(坂本哲彦先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→http://sakamoto.cside.com/

2 対象

中学校

3 授業のねらい

この話に心を動かされる訳について話し合う中で、相手の立場に立って行動することのよさに改めて気付き、思いやりの心をもって生活しようとする心情を高める。学習内容の(2)参照

学習内容

①感想をもつこと(無理に学習内容と言う必要がないかも…)

  • レストランのウェイター(キャスト)の行動に対して
  • 夫婦の心情に対して

②思いやりをもって生活することのよさ・すばらしさ

  • 臨機応変に(その場の状況に応じて)相手の願いを叶えること
  • 相手さえも意識していない願いを併せて叶えること
  • さりげなく、自然に振る舞う中で、思いやりの行動をとること
  • 自分の生活に生かせる事柄

資 料

大変有名なエピソードです。一般には、マニュアルを超えた臨機応変な接客のすばらしさ、あるいは、ディズニーランドが愛される理由としてとりあげられることが多いようです。

道徳の授業としてよく行われているのは、前者をねらいにしたものでしょうか。
本授業では、ウェイターが相手の立場に立って行動したことのよさについて、授業前半は登場人物の立場から、後半は読み手の立場から(つまり少しこの話や登場人物から離れて)、人の立場に立つことのよさについて話し合うこととしました。

エピソードの内容(話の筋)は、紹介されるサイトによって、少しずつ異なっているようですが、たとえば、

http://blog.goo.ne.jp/dococulinfo/e/19e270ae925b2c9dc090304e505b9773
が一般的です。

バリエーションについては、次のようなものがあるとのことです。

http://blogs.yahoo.co.jp/ussyamato/34234417.html

ここでは、①を元にして授業化します。

4学習過程(50分授業)

① ディズニーランドへの感想を発表する。(10分)

「今日は、ディズニーランドが舞台のお話です」と伝え、公式Webページなどを紹介する。
http://www.tokyodisneyresort.co.jp/

発問1:「ディズニーランドについて知っていることや感じていることなど、何でもいいですので、発表してください。」

資料への関心を高めるための導入なので

①行ってみたい

②行ったときに楽しかった 

の2種類に分けて、「どうして行ってみたいのか」あるいは、「どうして楽しかったのか」の理由に焦点化する。

③キャラクタの魅力

④アトラクションの魅力などを引き出しながら、「今回は、多くの国民に愛されているディズニーランドの魅力の一つについて考えてみましょう。」と課題を提示して、資料の読み聞かせに移る。

② 資料を読み、ウェイターと夫婦の気持ちについて話し合う。(20分)

内容が理解できているか確認しながら、少しずつ読み聞かせ、ウェイターが夫妻を4人席に移動させたところまで読んで問います。

発問2:「ウェイターは、お子様ランチを運ぶと同時に他にももってきたものがあります。それは何だと思いますか?」

この話のツボです。クイズではないので、少し予想させ期待感を高めたら、必要以上に引っ張らず、教師から「子供用の椅子」であることを伝えます。そして、最後まで読み聞かせます。

発問3:「ウェイターと夫婦の気持ちを想像して、出し合ってみましょう。」

※時間がない場合は、どちらか一方の気持ちを想像してもいいです。ここでは対比してとらえさせます。

ウェイターについて……

  1. 本当に子どもがいる場合にすることを同じようにして差し上げたい
  2. 子供用の椅子がある方が夫婦にとって子どもがいるように感じることができるのではないか
  3. マニュアルを破ってしまったが、これでいい
  4. もっと喜んでもらえるようにするためには、椅子以外にも何かできないだろうか、等々

夫婦……

  1. マニュアルを破ってまで、私たちのためにしてくださってとってもうれしい、心の優しい青年だ
  2. 本当に子どもと一緒に来ているような気持ちになった、いい時間を過ごすことができた
  3. 来年も必ず来たい、ずっと来たい
  4. 子どもに生き返って欲しい、等々

①と①、②と②がそれぞれ対応するように板書します。
※小学校や中学校1年生の場合は、次の③に移らないで方がいいでしょう。その場合、このまま、ウェイターと夫婦の心情の響き合い、重なり合いに焦点を当てて、「相手の立場に立つことのよさ」「思いやりのある行動のすばらしさ」などについて改めて感じ取らせます。その後、「振り返り」である④の活動に移ります。中学校2,3年生の場合は次です。

③このお話が心を動かす理由について話し合う。(10分)

発問4:「このお話が私達の心を温かくするのは何故だと思いますか。その理由(つまり、私達の感じたこと、受け止めたこと)を出し合ってみましょう。それが、思いやりのある行動の大切な事柄(秘密・秘訣)だと思います。」

  1. ウェイターがマニュアルを破ってまで夫婦の願いを叶えたこと
  2. 夫婦の願いが、非常に切ない、亡くなった子どものことだったこと
  3. ウェイターにも、夫婦にも「本当に子どもがそこに来ている、あるいは、その椅子に座っている姿」が見えているように感じ取れたこと、など様々に「それぞれの子どもの感じ取り方、受け止め方」を出させる。

最終的に「相手を十分に重んじ、望んでいることを叶える(つまりマニュアルで禁じられているお子様ランチを提供する)だけではなく(それだけでも素晴らしいことなのだが…)、相手さえ気づかない(意識していない)願いを見抜き、それも一緒に実現(子供用の椅子を用意すること)している」また、「そのことがさりげない」からこそ、相手(夫婦)及びそれを知った周りの者(つまり生徒、読み手)を感動させているのだということに気付かせる。

黒板に「相手の立場に立って臨機応変に行動し、相手の願いを実現する」+「相手さえ意識していない願いも叶える」+「さりげなく(自然に)行う」=「本当の思いやり」あるいは、「一ランク上の思いやり」という式を書く。

④ 自分の生活を振り返って、一ランク上の思いやりについての考えを書く。(10分)

発問5:「黒板の『臨機応変』『相手さえも意識していない願い』『さりげない行動』の3点に棒線を引き、これらの3つの言葉を使って、これからの自分やこれまでの自分の生活や経験について、自分の考えを書きましょう。」

◆の式は、画用紙などの短冊に書き、教室の掲示板に貼る。

※ 定番ですが、式の+の記号をどこか一箇所×にすることも可能です。この授業の場合、『相手さえも意識していない願い』(つまり子供用の椅子)を叶えたことの前に×を置いて、それがなければ、この式の答えは、ゼロ、それが、二つ、三つのあった場合には、二倍にも三倍にもなる、と印象づけても構いません。

また、導入で提示された「多くの国民に愛されているディズニーランドの魅力の一つ」という課題に対応させて、その魅力を一言で書かせてまとめるというのもいいでしょう。

5 編集後記

ディズニーランドが夢の世界と言われる所以が、オリエンタルランドの徹底的なキャストのトレーニングだと思います。ディズニーランドに遊びにくるお客様に、夢のひと時を過ごしてもらうためには、その人のどんな小さな願いも叶えてあげようと言う姿勢が大事なのだと感じました。心を動かすと言うことは、人の思いを汲むと言うことになると思いますが、これらは実際の生活の場でもできることだと思います。中学生という多感な時期に、これらの授業を行い人間の表面の言動や行動だけから人を判断するのではなく、見えない気持ちを理解するということを知るにはとても大切な授業なのだと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 肥後京子)

6、実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。

自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

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