「アフリカの少年」で 「希望・勇気」(坂本哲彦先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://p.tl/a-TK-

2 概要

人生の様々な困難を「自分の力で乗り越えていく」というのは大変難しいことで、それは大人も子どもも一緒です。「希望・勇気をもってくじけないで努力する」ことについて考える授業です。

【対象】

小学校6年生(中学校の方がいいのかも知れません)

【ねらい】

アフリカの少年がうずくまっていたときに考えていたことと、それを見て高倉健が考えたことを併せて話し合うことを通して、「希望と勇気をもつこと」「くじけないで努力すること」に改めて気付き、夢をもってやり抜こうとする気持ちを培う。

【学習内容】

(1)「アフリカの少年」の気持ちについて考えること

  • 助けてほしいのだけれど、現実としては、誰にも頼らずに、砂あらしに耐えなければならない。
  • 困難は自分自身の力で乗り越えるものだ。
  • 自分の生活の中にある「自分にとっての砂あらし」を想起しようとする。

(2)「高倉健」の少年へ気持ちについて考えること

  • 砂あらしを自分の力で耐えなければこの土地で生きていくのはつらい
  • ずっと少年の側にいるわけにはいかないのだから、手を貸すのはかえって少年のためにはならない。
  • 希望と勇気をもち、夢に向かって生きて欲しい。
  • 自分にとっての夢や希望、勇気を考えてみる。

【資料】

『南極のペンギン』(高倉健 集英社 2001.2)所収

(以下あらすじ)
アフリカでの撮影で、「数時間から半日、長いときには数日続く」と言われる砂あらしに見舞われそうになった高倉氏は、ホテルに戻る途中、道端にうずくまる悲しそうな目をした少年と視線を合わせた。その場で、少年は砂あらしが通り過ぎるのを待つつもりなのだ。

「車で少年を家まで送り届けることは簡単だった。だが、ぼくはあえてそうしなかった」し、また「少年はだれにも助けをもとめていなかった」。
「砂あらしにうずくまる君を、現地の大人たちは助けない。砂あらしにたえる力を、子どもの時から身に付けさせるためだろう。そうしなければ、この土地で生きていくのはつらい」。

高倉氏は、「心のなかで、少年に『夢を見ろよ』と話しかけた」「どんな土地に生まれるのか。どんな親に育てられるのか。だれにもわからない。子どもはなにも選べず、ただ生まれてくる。だが、夢なら自由に見ることができる。その夢をかなえる時間は、まだ君にはかぎりなくあるはずだ」と書く。

※参考までに、朗読CDも出ています。

3 授業指導案(45分授業)

①(すぐに)資料を読み聞かせる。(10分)

余計な前振りは、逆効果でしょう。すぐに読み聞かせを始めます。資料はゆっくりでも数分です。
朗読CDがあるので、それを活用するといいでしょう。

高倉健さんやアフリカの過酷な自然の写真や映像などを用いて、資料や作者に対する関心を高めることも考えられます。大切なのは、短時間だということです。

②「うずくまっている少年」の気持ちを話し合う。(10分)

発問1:「砂あらしが通り過ぎるのを道端でうずくまって耐えようとしていた少年は、どんなことを考えたり、思ったりしていたでしょうか。様々に想像してみましょう。」

(1)高倉健さんたちの車で、家まで送り届けて欲しい (2)送り届けて欲しいとまでは思わないが、車でホテルまで帰ることのできる人たちが、うらやましい (3)この砂あらしは何時間くらい続くのだろうか (4)自分に耐えられるのだろうか。耐えなければならない (5)いつものことなので、あまりあれこれとは考えていないのではないか などに分けながら、板書します。

それぞれの考えを受容しながら、(1)(2)と(3)(4)を左右にかき分け、ナンバリングして、人をうらやましく思ったり、助けて欲しいと思ったりする気持ちと、自分の力で乗り越えていこうとする気持ちの「大きく二つの気持ち」があるんですね、と確認します。

国語ではないので、叙述に即した根拠が出ても、特に全員でその叙述を確認することはしません。

そして、「あなたなら耐えられそうですか?」や「あなたにとっての『砂あらし』は、たとえて言うと何かなあ?」などと投げ返して、自分事として捉えることができるようにします。もちろん、まとめて時間をとって自分にとっての砂あらしを想像させてもいいけれど、どちらかというと少年の気持ちを考えるなかで、何となく想起させる程度でよいように思います。
 
話し合いの最後に、子どものそれまでの「印象的な発言」を借りながら(ここが結構大切で、ちゃんと価値付ける子どもの発言を覚えておかなければなりません)「長い間生きる中で、人間は自分の力で乗り越えなければならないことにたくさん出会いますね。そんな時、どうすればいいのか、大人も子どももいつも考えておかなければならないのかもしれません。」として、次の発問に続けます。

③「高倉健さんの少年への気持ち」について話し合う。(15分)

発問2:「高倉健さんは少年にどんなことを伝えたかったのでしょうか。みんなで話し合ってみましょう。」

この発問に対する答えは文章にたくさん書かれているので、「国語的な読み」になってしまいそうですが、それはこの発問とこの読み物資料の性格によるので、ある程度仕方ないように思います。児童生徒に伝えたいことが過不足無く書かれているのがこの読み物のよいところです。

(1)車で家に送り届けるのは、簡単だけど、それは、少年のためにならない (2)砂あらしにたえる力を子どもの時から身に付けさせることはこの土地で生きていく上で必要なことである (3)うずくまることはこの少年の今までの経験からの判断である (4)見て見ぬふりをすること、置いてきぼりにすることも、「大人のやさしさ」である。だからこそ(5)夢をもってほしい。夢に向かって生きて欲しい (6)どんな土地に生まれるのか、どんな親に育てられるのか、だれにもわからない、子どもは何も選べず、生まれてくる (7)夢なら自由に見ることができる、その夢を叶える時間はまだ、限りなくある などが出ています。いずれも、叙述に即した回答です。

※ (1)~(4)と(5)~(7)は括りが異なります。それを板書上で示し、両方とも現実にはあり、自分の力で乗り越えることが必要で、そのためには夢を持つことが大切である、などの関係を捉えさせます。

ここでも「問い返し」として、「あなたの夢は何ですか」などとします。まとめて時間はとらず、何となく話を向けることがよいと考えます。

あまり押しつけがましいとしらけるので、読み物資料の温かい雰囲気のなかで(学習内容を)ゆったりと感じ取らせる程度がよいのかも。

④授業の感想を書く(10分)

自由に感想を書かせるか、「あなたにとっての砂あらしとあなたにとっての夢、希望などについても触れながら、感想を書いてください」とするか、ですね。

4 編集後記

年齢が上がるにつれて、子ども達は多くの悩みを抱えるようになると思います。「希望・勇気をもって」困難を乗り越えてもらいたいものです。 
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 前田豪士)

5 実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

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