無農薬リンゴ栽培農家木村秋則さんの 生き方から希望・夢について考える(坂本哲彦先生)


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1 【はじめに】

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→http://sakamoto.cside.com/
本記事で紹介する実践はこちらです。
http://sakamoto.cside.com/sakamoto2007/apple.htm

2 【対象】

小学5・6年生(または、中学校)

3 【ねらい】

「ヒューマン・ドキュメント 情熱は不可能を可能にする」から、木村さんの生き方について話し合うことを通して、家族の支えが自分の希望・夢を支えていることに改めて気付き、より高い目標を立て、希望と勇気をもってくじけないで努力しようとする心情を高める。1-(3)

4 【学習内容】

(1)無農薬リンゴ栽培農家木村秋則(きむらあきのり)さんの生き方

  • 無農薬への強いこだわりと一日百円での生活
  • 死を覚悟して岩木山へ登ったときのこと
  • 無農薬のリンゴ栽培ができたときのこと

(2)自分の希望・夢は家族に支えられていること

  • 妻や長女の木村さんを思う気持ち(資料)
  • 自分の希望・夢とそれへの家族の支え(生活)

5 【資料】

「情熱は不可能を可能にする」(取材・文 小原田泰久)『PHP No.709』平成19年6月号所載

無農薬リンゴ栽培農家である木村秋則さんの半生が描かれている。粗筋は次である。

  • リンゴの自然栽培(農薬、肥料、堆肥を使わない栽培) に挑戦し始めたのは1978年。年に十数回も農薬を散布することで、妻美千子の皮膚がかぶれ、重い症状となったから。
  • 害虫をひたすら手で取る仕事に忙殺されるも、800本もあれば、無理で、収穫はゼロに。一日百円での生活を余儀なくされる。
  • 長女が学校の作文で「父の仕事はリンゴづくりです。でも、わたしはお父さんのつくったリンゴを一つも食べたことがない」と書く。
  • 「家族につらい思いをさせてしまったことに、死んでおわびをしようと思って、ロープを手に持ち、ふらふらと岩木山へ。そこで、リンゴの木を見て、「リンゴの木が、もっと生きろといってくれているような気がして、死ぬのを止める。
  • 山では農薬も肥料も使わないのに、どうして木が育つのか。山の状態を畑に再現すればいい!と気付く。
  • 自然栽培をはじめて9年目の5月、やっとリンゴが花をつける。

その他にもNHKのプロフェッショナルで取り上げられたり、HPもあったりするのでぜひお使い下さい。
http://www.nhk.or.jp/professional/2006/1207/index.html
http://www.brown.co.jp/network/issue_015.html
http://www.sun-act.com/kimura/
※Web上には、その他にも様々な情報があります。

6 【学習過程】(45分授業)

①リンゴを見て感想を発表する。(5分)

発問1:「リンゴが好きですか?」

リンゴの写真か、あるいは、実物を見せて問う。木村さんのリンゴならなおいいが、手に入らないほど売れているという。

好きな理由、嫌いな理由を2,3出させながら、「リンゴ農家の思い、願い」を紹介し、「わたしたちは、リンゴを食べているけど、本当は、リンゴ農家の方々の努力や苦労、願い、思いも一緒に食べているのだよ。」とまとめる。

そして、「今日は、無農薬リンゴ栽培農家 木村秋則さんの生き方から、(希望や夢について)学びましょう。」と大まかな課題を提示・板書する。※展開前に(  )内を示すかどうかは、迷いますね。

導入は、短時間でさっさと資料提示へ。この導入は、価値内容にほとんど関係ないので、必ず5分以内で。②からはじめてもいいくらいです。

②「情熱は不可能を可能にする」を読んで話し合う。(30分)

発問2:「真っ白な花につつまれたわたしの畑が見えた時の木村さんの心には、どんな思いがあったでしょうか。」
 
資料の一番最後の思いを考えることで、それまでの2,3の場面の心情も一緒に考えてしまう、という方法。

(1)一日百円で生活していたときの生活を思い出し、やっと報われたという思いがあった。→人間らしい生活ができる安心感。

(2)岩木山で死ななくてよかったという思いがあった。→夢をもって生き続けることのすばらしさ。

(3)妻や子どもへの感謝の思いがあった。→希望や夢は、家族の支えによって実現されたことへの自覚。感謝。

出てくる発言は、概ね、この3つの事柄のどこかに位置付け、資料の内容理解を確かにするとともに、木村さんの気持ちや生き方を共感的に受け止めることができるようにする。もちろん、(4)(5)があっても構わないけれど、あまり多くに分類すると、次の活動が難しくなります。

発問3:「木村さんは、(1)~(3)の中で、どの思いが最も大きかったと思いますか?」

最も大きい思いを決めることそのものには、意味はない活動。決める話し合いをする中で、一人ひとりの「希望・夢をもつ生き方の難しさやよさ、そして、家族の支え・協力があることでそれが可能になるという見方・考え方」を高めることがねらい。

したがって、(A)「どうして、あなたはそう思うのですか?」(理由の明確化)、(B)「あなたが、木村さんなら、そう思いますか?」(役割取得)、(C)「あなたにも、似たような経験がありますか?」(生活の振り返り)による「問い返し」を適宜行うことがポイント。

このような学習活動の時には、テンポよく進めることが非常に重要だから(時間的にも内容的にも)、教師による「無用な子どもの発言の繰り返し」や「無駄に資料に戻って、記述を確かめる」などは、厳禁である。

どうしても、合いの手を入れるなら「○○さんの言っている意味が分かりますか?」とか「同じ意見の人、手を上げてごらん」とか「○○さんの意見は、□□君の意見ととってもよく似ているね」などと、個々の発言を一人ひとりの考えや気持ちに引きつけられるようにすると効果的。でも、基本は、子どもの発言の連続。一人ひとりの考えが深まるには、20人程度の発言は必要か。

はじめに(1)の意見が落ちて、(2)と(3)のどちらが大きいかという話し合いになる。どっちが大きくなっても構わないのだけど、きっと拮抗する。そのうちに、(2)の「希望や夢を追い続けて実現することのすばらしさを感じること」と(3)の「それを支えてくれた家族の存在に改めて気付き、感謝の思いをもつこと」は、裏腹であり、どちらか一方の気持ちだけということにはならないという意見が出てくる。(に違いない? 希望的観測)両者を黒板の左右に対比的に板書し、最終的に=で結んで、二つの大きな○で囲み、「両方の思いが木村さんの中で大きかった」とまとめる。
 
上記(A)(B)(C)の「問い返し」で出た子どもの意見は色違いのチョークで随時板書しておき、最終的には、こちらの方の意見や気持ちを広げ、共感的に受け止めることができるようにする。

③自分なりの考えを温める。(10分)

発問4:「みなさんは、どんな希望や夢を持っていますか?そして、それを家族が支えてくれていると感じたことがありますか? また、逆に、みなさんの家族のだれかが、どんな希望や夢を持っていますか。そして、その夢を自分が支えるとか、一緒に追い求めているなと感じたことがありますか? すごく具体的でもいいし、大雑把にこんなことがあると思い出してもいい。少し時間をとるので、プリントに書いてみましょう。書けなければ、考えるだけでも構いませんよ。」
 
道徳の時間以外でも構わないので、上記Webページを紹介するといい。NHKのプロフェッショナルを録画して、視聴するのが最も効果的ではないか。アンコールで再度放映されるといいのですけどね。

7 【実践者プロフィール】

坂本哲彦(さかもとてつひこ)

山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。 山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 水島淳)

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