ライバルと高い目標を目指す(坂本哲彦先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が、運営されているホームページ「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させていただいたものです。
坂本先生のホームページはこちら → http://sakamoto.cside.com

2 授業のねらい

投稿者(高校生)が負けたときの気持ちについて話し合うことを通して、闘争心やライバルのよさについての考えを深め、より高い目標を目指し、着実にやり抜く強い意志をもつ。

そもそも「負けたら悔しいと思うことが大切である(そんな心情をもつことに価値がある)」、そして「次には勝ちたいという気持ち(闘争心)を持つことが大切である」、そして「自分の目標を達成するためには、ライバルが必要である(必要な場合もある)」ということに気付かせます。

今の中学生には、負けたら悔しいとか、負けないために努力するとか、ましてや「よきライバル」なんて考えてしまう子どもが少なくないからです。(かっこわるいとか考えているんですよね。ただ、これらの内容が道徳授業の内容として相応しいかどうかは?です)

3 対象

中学生

4 学習内容

(1)高校生の気持ちについて考えること

  • 負けて悔しいと思う気持ち
  • 次は負けたくないと努力する気持ち
  • ライバルがいることがうれしい気持ち

(2) 自分の日常について振り返ること

  • 負けたくないという気持ちをもつことのよさ
  • 自分の目標を達成するために努力することのよさ
  • ライバルを意識することのよさ(ライバルは友達の場合が通常だが、「昨日の自分」などのように「自分の中」に設定することも可能である)

5 5.資料

「ライバル登場 闘争心燃える」 読者(高校生)投稿(朝日新聞 声 2007/10/28掲載)

  1. 小学4年生から陸上競技を続けてきたが、誰かに対して闘争心をもったことがなかった。
  2. 先日、高校になって陸上競技を始めたという友達(中学の時に塾で知り合った友達)に少しの差で負けた。
  3. 同じ年とは言え、新人ランナーに負け、しばらくの間ショックから抜け出せなかった。「自分は今まで何をしていたのか」。
  4. 友達が「おれたちはいいライバルになるね」と言われ、自分の中に今までになかった「闘争心」が芽生え、今でも燃え続けている。
  5. ライバルがいると、毎日が面白くなると実感している。

6 学習過程

①持っている目標を出し合う。(5分)

いろいろな導入が考えられます。

  1. 事前アンケート「個々の生徒の目標」の結果を提示する、
  2. 直接、「今、頑張っている目標にはどんなことがありますか?」と問う(でも、それに堂々と答えられる子どもは少ないだろうな)、
  3. 「部活の目標」を問うなどです。

※いずれにしても、「自分の目標を達成することはなかなか難しい。だから、目標達成について深く考えてみましょう。」と課題を提示する。

②新人選手に負けた高校生の気持ちについて話し合う。(35分)

資料提示(5分)

発問1:「ショックから抜け出すことができなかった時、高校生は、どんなことを考えていたのだろうか。できるだけ多くの気持ちを出し合ってみましょう。」(20分)


※この話程度の問題状況なら、わざわざプリントに考えを書かせる必要はありません。あらかじめ書かせないと自分の意見が持てないだろうからと、丹念にプリントに書かせる授業は少なくありません。しかし、書かせることで、かえって意見を出しにくくする雰囲気が生まれる場合もあります。どんどん指名していきながら、受容的な雰囲気の中で、様々に高校生の気持ちを想像することにしましょう。
※因みに、「できるだけ、多くの気持ちを想像させる」ことが大切な場合もあります。多くの道徳の授業の場合、感じたままを単に発表して終わっている場合が少なくなく、(それはそれで言い場合も多いわけですが、自分がどう感じるかを超えて、その人の立場に立って、しっかり想像の翼を広げさせることが大切な場合もあるわけです。特に、中学校の道徳の場合は、このような思考を鍛えたいものです。)

  1. 「負けたことが悔しい」「負けたくなかった」など負けたという事実(結果)そのものがショックだった。
  2. 「高校から陸上競技を始めた人物に負けたことが悔しい」「自分の方が長く取り組んでいるのに負けたことが残念」など今までの経歴や努力が結果に生かされなかったことがショックだった。
  3. 「仲のよい友達に負けたことが悔しい」「他校の選手ではなく、自校の友達に負けたことが残念」など、知っている人物に負けたこと、毎日出会う人に、自分より強い選手がいることがショックだった。
  4. 「このまま負け続けるのではないか」「そのほかの選手にもどんどん負けていくのではないか」「自分はこれ以上伸びないのではないか」など、今後の記録が悪くなる、あるいは選手として自分は相応しくないのではないかという不安、の4通りは出したい。


※ 教師は、「なるほど、そういうこともあるかもしれないね」と受容することに努める。決して「いい意見だね」などと評価を加えてはならない。
※「その意見は、これまでに出されたどの意見と似ている?」とか「その意見は、このグループに入る意見だね」とか、「ほう、新しい考え方だなあ。(2)というグループをつくることにしよう」などと、類別しながら板書する。
※特に、(2)と(3)はつながっている意見で、(3)の気持ちが(2)を際だたせていること、また、(1)(2)(3)と(4)は内容が違い、本人も気付かないのかも知れないが、(4)が最も大きなショックではないか、などに気付かせる。そのような気持ちに共感させた後、発問2。

発問2:「『おれたちはいいライバルになれる』と言われた時、どんなことを考えただろう。」(10分)


※(1)「お前なんかにライバルと言われたくない」「ライバルと言うにはまだ何年も早い」などその言葉を前向きに捉えられない気持ちと(2)「よし、よきライバルとして競って、次は勝ってやる」という「友達の提案を素直に受け止め、頑張ろうとする気持ちの2つに分けて意見を取りまとめる。
※そして、「(2)のように受け止めることができたからこそ、この高校生は、『毎日が面白くなる』と感じているのだ」と、この高校生のよさを示した後、教師の方から、①「負けて悔しいと思う気持ち(負けを負けとして認めること)の大切さ」②「次は負けたくないと思う気持ちの大切さ(そのことを「闘争心」とも言うこと)③「ライバルをもつことの大切さ」を板書し、学習内容として押さえる。(押しつける感じではなく、ゆっくり話して聴かせる感じ)

自分の生活を振りかえる。(10分)

発問3:「あなたの中に『この高校生のような気持ちやライバル』がいますか?プリントに書けたら書きましょう。書けなければ、授業の感想、授業学んだことを書いてもいいです。」


※ライバルを「昨日の自分」のように設定することも可能であること、そして、「負けて悔しいと思う気持ち」「次こそ負けたくないという気持ち」「ライバルのいるよさ」について、教師の経験などを含めて、やさしく分かりやすく話す。
※学級通信などで授業の様子について家庭に知らせる。

実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)

山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦先生 道徳・総合のページ はこちら
→  http://sakamoto.cside.com/

編集後記

長い人生の中で失敗や挫折というのはつきものです。しかし、最近の中学生は失敗を恐れて色々なことに挑戦せず、失敗しても次に気持ちを切り替えられない生徒が多くいると言われています。それだけに、負けた時の気持ちを想像して考えることは少し難しいかもしれません。授業では、一人一人の生徒が自分なりの意見を必死に考え、発表を行います。いつか自分が実際にそのような境遇に立たされた時、うまく対処できるヒントにこの授業がなるかもしれません。
(編集・文責 EDUPEDIA編集部 石川瑛士)

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