1 概要
この実践は(株)教育同人社の許可を得て、「はなまるサポート」の学習指導ポイント一覧より転載しています。
実践の続き(無料)はこちらのURL からご覧ください。
http://www.djn.co.jp/support/special/point/docs/2012/7/2/1.php
2 はじめに
わり算はどのような計算だったか
わり算の意味には「等分除」と「包含除」の2つがあり,その両方を統合した形でわり算の計算式を表記します。つまりどちらの場合も,例えば12÷3=4のように表されるということです。
また,もう1つ大切なこととして,わり算の計算の範囲は「九九の答えの及ぶ範囲」だということ,言い換えれば「九九を唱えれば答えが見つかる計算」だということです。ですから,わり算の対象は,例えば24や36,15,48…のように九九の答えになっているもので,これまで学習したわり算は「○の段」を唱えることによって答えが見つかる計算なのです。つまり,この段階では,23,51,19…などのいわゆる「わりきれない数」はわり算の対象外の数値なのです。
3 あまりのあるわり算の指導例
(1)問題を提示する。
「みかんがあります。ネットのふくろに4個ずつ入れます。何ふくろできるでしょう。」
これは,いわゆる条件不足の問題です。ただ,ここで何算で求められそうか考えることはできます。
「この問題は解けそうですか。」
「解けない。みかんが全部で何個あるのか分からないから。」
と子どもたちから反応があります。
「これは何算で求められそうですか。なぜそう思うのですか。」
「たぶん,わり算。」
「どうしてかというと,「ふくろに4こずつ分ける」から,前にやったわり算に問題が似ているから。」
という答えが返ってきます。ここで、わり算で求めることができそうだという見通しが立ちます。
(2) 問題を再提示する。
「みかんが23個あります。ネットのふくろに4個ずつ入れます。何ふくろできるでしょう。」
子どもたちからは23じゃできないよ、20や24ならできそう、という声が上がります。
20÷4=6や24÷4=6とすることができるからですね。
「じゃあ23個の時は、どんな式になりそうですか。」
「23÷4かな?」、「だめだよ。23は4で割れないから。」、「4の段の九九が使えないから。」などといった反応があります。
「そうすると、23÷4は怪しい?」
怪しい怪しい、という反応があります。ほかにも23の近くで「怪しい数」として22、21、25などがあがります。
(3) 「本時のめあて」を明確にする。
めあて1:みかんが「あやしい数」のとき、どんな計算をしたらよいか、考えましょう。
A みかんが21個あります。ネットのふくろに4個ずつ入れます。何ふくろできるでしょう。
B みかんが22個あります。ネットのふくろに4個ずつ入れます。何ふくろできるでしょう。
C みかんが23個あります。ネットのふくろに4個ずつ入れます。何ふくろできるでしょう。
以上の3つを例題としてあげます。
(4) 問題を選択して自力解決させる。
「自分でやってみたい問題を決めましょう。自分でよく考えて答えを出してごらん。」
想定される児童の解答
問題Aの例
21個のみかんを4個ずつに区切る絵を描いて、答えを5袋と求め、「1個あまる」とまとめる。
問題Bの例
22個のみかんをおはじきで表し、4個ずつのかたまりを作って、答えを5袋と求め、「2個あまる」とまとめる。
問題Cの例
23÷4=5あまり3と書き、答えを5袋と求め、「3個あまる」とまとめる。
(5) 発表・検討の場で具体的な物から順に説明させる。
- 具体物の操作で答えを出す。
- 絵を描いてそれを区切って答えを出す。
- 絵を単純化して表し、それを区切って答えを出す。
- あまりのあるわり算の計算の表し方をすでに知っていて、立式する。
- 既習のわり算の表記を変形しようとする。
以上のような具体的な求め方から順に説明させていきます。そして、
「これらの答えの出し方を計算でするにはどう書けばいいのでしょうね。」
と投げかけます。
児童は各問題の解答ごとに、解き方を式表示しようとします。
- 21÷4=の次が?
- 22÷4=の次が?
- 23÷4=の次が?
「わり算みたいだけれど、九九の答えが使えないですね。皆さんは、20÷4だと安心なのですね。」
新しい表記を指導する
「21÷4の時も、21÷4=5と、ここまでは同じに書きます。そして、21÷4=5あまり1と書き加えるのです。」
「22÷4=5あまり2 、23÷4=5あまり3 と書けばいいんだ。」と新しいわり算の仕方を教えます。
「この書き方でやると20÷4はどう書けばいいのでしょう。」
この投げかけで、20÷4=5あまり0 と表記すること、今までのは、あまり0のわり算であることに気付かせます。
(6) まとめをする。
「このように、AやBやCの問題の計算も、
21÷4=5あまり1
22÷4=5あまり2
23÷4=5あまり3
と書いた「わり算」です。」と授業全体のまとめをします。
4 この授業の流れはどのような「学力」育成を目指したものなのか。
この授業の展開は,既習としてのわり算の定義からわり算の意味を理解してその計算の習熟を図り,問題場面からわり算の演算決定ができるような学力を育てることをまず前提とします。
次に,条件を変えて新たな問題に直面させ,そこから新しい事柄を学び,これまでの「わり算」の意味を拡張して行きます。さらに,これまでのわり算は「あまり0の場合」というようにして,わり算を統合します。
5 実践者紹介
山﨑 憲 初等教育研究所
元東京都算数教育研究会会長。「小学校時代から現在までで,今が最も算数がすき」と,小学校退職後も算数教育に没頭し,現職時代に引き続き年に数回研究授業も試みている。現在東京学芸大学講師として初等算数科教育法を担当。またボランティアとして東村山市算数教室を開催し算数好きの子どもの育成を目指している。
6 サービス紹介
同社の「はなまるサポート」は、若い先生のための授業ヒント集として、毎月の学習指導ポイントを細かく解説したり、不明点や疑問点などに関する無料相談を受け付けたりしています。
7 編集後記
既習事項としてのわり算の定義からわり算の意味を理解し、計算の習熟を図ったのちにあまりのあるわり算に入るように、段階を追って知識の定着をはかることが大切です。(編集・文責:EDUPEDIA編集部 佐藤あかり)
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