学校の先生方へ「知ってほしい…病気の子どもたちのこと」⑦


17

本記事は、赫多久美子(かくたくみこ)さんによる全10回連載の第7回目となります。
 第1回『A君の入院』  https://edupedia.jp/entries/show/1415
 第2回『保健室で』  https://edupedia.jp/entries/show/1480
 第3回『校長室で』  https://edupedia.jp/entries/show/1518
 第4回『靴箱の前で』 https://edupedia.jp/entries/show/1548
 第5回『教室で』   https://edupedia.jp/entries/show/1568
 第6回『メール』   https://edupedia.jp/entries/show/1682

この連載で扱われるケースは全て赫多さんのご経験などを基にした架空のお話です。今回は学校の先生が入院している子どもの病院を訪れた時について書かれています。

1 第7回 お見舞い

「春野先生!…お忙しいところ、本当にありがとうございます。遠かったでしょう?」

「いえいえ、バスがタイミング良く来たので、思ったより時間がかかりませんでした。お母様、こちらこそすみません。あの、わざわざロビーまで迎えに来ていただいて。」

「とんでもない。あっ、面会受付はこちらです。こちらで登録して面会者用のバッジをもらわないと病棟に入れないんです。…6階の○病棟です。お名前と…」

「ここは、学校担任って書けばよろしいですか?」

「はい、大丈夫です。師長さんにもお伝えしてありますので。小児科の面会は、一応家族だけということになっているんです。でも、担任の先生はウエルカムって、師長さんが仰ってました。Aも先週から楽しみにしていて…あっ、先日の保護者会では、お時間をいただきありがとうございました。」

「いいえ、こちらこそ。クラスのお母様方に直接お話しいただけてよかったです。」

「お子さんたちから本当によくしていただいて、親御さんにも是非お礼を申し上げたくて…。Aのこともお伝えできて良かったです。」

「あの後、皆さん残って鶴を折っていかれたんですよ。…そうそう、6年生だけじゃなくて、3年生や他の学年からも参加したいからって、休み時間になると教室にたくさん子どもたちが折り紙を取りに来るんですよ。」

「まぁ、そうなんですか。そういえば、マイが言ってました。大熊先生やお友達がお兄ちゃんのために鶴を折ってくださってるって。」

「マイさんの表情も明るくなったって、大熊先生が教えてくれました。あっ、もちろん、職員室や事務室でも折ってます。熱井教頭先生は、もう何年もやってないなぁ…なんて、最初はかなり苦戦してましたけど、随分上達されましたよぉ。…もう、だいたい半分は集まってるんじゃないかな?きっと、次の面会には持参できると思います。…あの…千羽鶴のことは、A君にはまだ内緒なので。」

「分かりました。でも、そんなにしていただいて…本当にありがたいです。先日いただいたCDも、もう何度も聴いてるようです。目をつぶって聴いてるとひな三にいるみたいだって…」

「そうですか。何度も聴いてくれてるんですね。みんなA君に会いたがっていました。先生はクラスの代表なんだから、しっかりお見舞いしてくるようにって、今日も子どもたちから送り出されて来たんですよ。責任重大です。…なんだかドキドキします。あの…A君の体調はどうですか?」

「はい、おかげさまで今日はとても気分が良さそうです。先生に会えるからでしょうね。一昨日検査があったんですが、化学治療が効いてきて腫瘍も小さくなっているそうです。このまま順調にいけば、夏休みに入ったあたりで手術ができるそうです。」

「そうですか…やっぱり手術なんですね…。」

「…治療法について、 主人といろいろ調べましたが、やはり手術は避けられないようです。でも、こちらの整形外科は人工骨の研究で有名みたいなんです。化学治療は小児科でしていただいて、手術は整形外科なんですが、2つの科がチームになって最新技術でサポートしていただけると聞いて、このままこちらの大学病院でお願いすることにしました。それに、この病院なら、あおば学級で勉強もできますし。」

「ええ、そうですね。A君がメールで、あおば学級で楽しく学習している様子を教えてくれるので、私も嬉しいです。」

エレベーターが6階に止まる。小児科病棟のドア横で、お母さんに教わりながら、まず手を液体石鹸で洗ってペーパータオルで拭き、次に備え付けのアルコール消毒剤を手に噴霧する。さらに用意されている紙マスクを付ける。感染防止のためだ。

 インターホンでお母さんがナースステーションに連絡すると、ドアがゆっくり開いた。

「センセイ!!おひさしぶりです!」

「まあ、A君…ここで、待っていてくれたのぉ?」

 A君もマスク…ちょっと照れたような、でも笑ってる目。

「では、僕があおば学級にご案内します!」

 そして、クルリと車椅子を回転させた。

 お母さんと顔を見合わせる。

 ふふっ…やっぱりそっくりな優しい目。

「あっ、A君、ちょっと待って~!」

保護者と連絡を取り合ってからお見舞いを

お見舞いに行くタイミングは、保護者の意向に沿って決めてください。本人や保護者に負担がかからないように配慮が必要です。

なお、学校で感染症が流行っていたり、自分が風邪気味の時には病棟に出入りするのを遠慮しましょう。

第8回 学級だより

https://edupedia.jp/entries/show/1799

2 投稿者プロフィール

赫多 久美子 (かくた くみこ)
元都立特別支援学校病院内分教室・訪問学級担任。
現在は大学非常勤講師として教員養成に従事。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA