かけ算のつまずきを「わかる」「できる」喜びに変える3つの工夫(梶浦先生)


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1 はじめに 〜つまずきへのアプローチ〜

「私、算数が苦手だな。」

休み時間に私のところへやってきてAさんがつぶやいた。算数の授業で、時折不安げな様子を見せていた彼女の言葉が、私をはっとさせた。「苦手」という言葉から算数の学習が分からない・できないというつらさが伝わってきたのだ。Aさんのように苦手意識を持っている児童が他にもいるのではないかと思いを巡らせた。

「かけ算」は日常生活において活用する大切な考え方であり、算数を学ぶ上での基礎となる。私はAさんのつまずきに対応することが、学級全体のつまずきに対応することにつながると考え、「わかる」「できる」喜びを味わう授業づくりに向け、Aさんのつまずきに対する指導・援助の工夫を試みることにした。

<つまずきの例>

  • かけ算とたし算の違いがわからない。
  • 「◯個ずつ」「◯つ分の大きさ」の言葉の意味がわからない。または、うまく表現できない。
  • 「△が1個分」という考え方がわからない。

2 実践 〜つまずきに対する3つの工夫〜

工夫1 〜学びの足跡をノートに残す〜

ノートは間違えても消さずに、新しく書き足すように促した(自分の考えを残す)。これにより児童にどこで間違えたかを自ら気づかせ、同じ間違いを繰り返さないよう意識させることができる。

工夫2 〜全員が見える場所に基本概念を掲示する〜

本単元の柱となる考え「1つ分の大きさ×いくつ分=全体の数」について、単元を通して一貫した指導をするため、教室の全員が見える場所に掲示にした(図1、2)。授業の導入時に短時間で振り返りを行うことができ、児童が考えに詰まった場合に立ち返ることができるようになっている。


図1:かけ算の基本概念についての教室掲示


図2:既習内容の教室掲示

工夫3 〜アレイ図と言葉カードを全員に配る〜

個人追究時の補助教材としてアレイ図を配布した(図3)。交換法則の学習の場面で「1つ分の大きさ」を変えた時など、「1つ分の大きさ」と「いくつ分」の考え方で混乱が生じることがある。しかし、アレイ図に1つ分の大きさを囲んで示すようにすることで、視覚的にかけ算の理解を深めることでき、事前に児童のつまずきを軽減することが可能となる。
また、言葉カードは発表の際に自分の言葉でまだ説明できない児童に対して有効な手段の1つである。


図3:アレイ図と言葉カード

3 効果 〜Aさんの言葉〜

9の段の学習時には、Aさんはアレイ図を指で指し示しながら1つ分の大きさを意識して、自分の力で構成・理解することができた。さらに、今までどう発表してよいかわからなかったAさんが、タイル図と言葉カードで話し方を明確にして進んで発表できるまでに成長した。

「算数のかけ算が好きだ。」

懇談時にAさんの母親からそう聞いた。算数が「わかる」「できる」ようになったからこそ出てきた言葉だろう。心からこみ上げてきた喜びを、今でも私は覚えている。

4 終わりに

EDUPEDIAは全国の先生方の実践やノウハウを共有し、学校現場を応援するサイトです。この記事が先生方の一助となれば幸いです。
 最後に、授業実践の転載を快く承諾していただいた梶浦先生に感謝申し上げます。

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教室の掲示1.jpg

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