鈴木寛先生ご講演「グローバル化の本当の姿」関西教育フォーラム2014「グローバル化×人材」①

※本記事は、NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)のホームページより転載しております。

1 概要

テーマ:「グローバル化×人材」~グローバル化でどうなる?どうする?地球市民の育て方~

日時:2014年11月23日(日)14:00〜16:30

場所:京都大学吉田キャンパス 法経本館第7教室

後援:文部科学省、京都府教育委員会、京都市教育委員会

合計来場者数:222人

グローバル化は止めようのない現象として進んでいます。グローバル社会に関わりがあるのは、いわゆるグローバルリーダーといったエリートだけだと連想されがちですが、そうではありません。それ以外の人たちもグローバル社会を生き抜かなければならず、そのことを私たち一人ひとりが自覚しなければなりません。そのような意味を込めて、今回のフォーラムのテーマは「グローバル人材」ではなく、「グローバル化×人材」としました。
 また、グローバル化が進む社会においては、あらゆる人やモノ、情報が国境を越えて触れ合います。つまり、多様な人・モノ・情報との関わりが生まれるということです。そこでは、多様な人と共生できる能力は特に欠かせません。それでは、多様な人と共生するためには、いったいどのような能力が必要なのでしょうか。また、そのような多様な人と共生するために必要な能力を育むための教育・学習方法にはどのようなものがあるのでしょうか。本フォーラムでは、それらについて登壇者による講演やパネルディスカッションを通して会場全体で考えていきます。

2 登壇者(敬称略、肩書きはいずれも当時)

鈴木寛氏(元文部科学副大臣、東京大学大学院・慶応大学教授)

苫野一徳(教育哲学者)

瀧澤勇弥(学生登壇者:立命館大学2回生)

3 鈴木寛先生ご講演『グローバル化の本当の姿』

今の世の中、新聞やテレビを見ても「グローバル化」というキーワードが洪水のようにあふれています。情報洪水と言っているのですが、その原因の一端を作ったのは私かもしれない。私が2009年に文部科学副大臣をやっていたとき、政府がグローバル人材育成推進会議というものを作りました。そのときに「グローバル人材」という言葉を使い、その言葉がその会議を担当した私の思いとはちょっと違った形で世の中にどんどん広がっていきました。その広がりにはやや疑問を感じています。

今、色々な東京からキーワードが発信されていますね。それに対する人々の反応は大きくいうと、2つに分かれるのです。不安をかきたてて利益を得ようとするタイプA。とにかく東京から発信されたものは一切無視。それか否定する、タイプBの2つです。このどっちもダメだと私は思います。複眼的思考をして、色々な角度からとらえて欲しいです。

グローバル化の話というのは、新しくて古い話なのです。日本の歴史を振り返ると遣隋使や遣唐使の時代から、それこそ「グローバル化、どうする!?」「遣唐使やめる?」という状況だったのです。

それでは今のグローバル化にどう対峙していったらいいか。
同志社大学設立の話を挙げると、新島襄が同志社をつくるときに京都の人はすごくて、京都のど真ん中にある御所の真北に異文化の極みを設立しようとしました。もちろん大論争がありました。大論争を経て、あの場所にキリスト教文化というものを入れて、色々な意味での近代化を切り開いた。これには色々な教訓が含まれていています。このような教訓があれば、今言っているグローバル化というのは屁でもないと思います。ぜひそういう心を持って欲しいと思います。

既に「もののグローバル化」は達成しています。戦後は、若干の農産物などの例外品目はありますけどものの輸出入がどんどん自由になってくる時代でした。皆さんの体はもうすでにグローバル化しているのです。なぜなら、輸入食品や輸入食材を全く食べていない人は居ません。1980年代には「金融のグローバル化」がありました。皆さんも貯金をしていたりクレジットカードを使っていたりと、グローバルな金融の中に組み込まれていると思います。それから、最近の大きな波は何かというとインターネットによる「情報のグローバル化」ですよね。ブラジルからでも情報は得られるし、距離というものを感じさせなくなりました。

今何が起ころうとしているかというと、「人のグローバル化」が起ころうとしています。これも、人の移動については既に経験済みです。1985年の9月にプラザ合意があり、そこで円の為替レートが大きく変わりました。だから50歳以上の人は一部の例外を除きみんなグローバル化出来ています。なぜなら、それまで大学4年間貯金してやっと1回海外旅行に行けたのが、プラザ合意以降春休みや夏休みのたびに行こうと思えば自由に行けるような時代になったのです。

これから起ころうとしているのが「居住のグローバル化」です。人が住むということであり、学ぶということであり、働くということがグローバル化します。今の大学生でいうと、学年の1割ぐらいの人が日本と外国の両方で住んだり学んだりということになるというようなシミュレーションがあります。もう1つは、社会に出ると必ず、日本語や日本文化に慣れ親しんでいない人と仕事をする時代が来るであろうということ。そういうことを受け止めて、その流れを理解し流れの中で自分をしっかりもって幸せに生きてほしいと思います。

ただ、グローバル化といったときに人の移動・人の居住、働く場というものに気を取られるわけですが、その後ろ側にあるのはグローバル経済です。僕が「卒近代」と言っている背景にあるのは、お金は大事ですがそれは全てではないということです。この手段と目的の倒錯というのが私はものすごく気になるのです。私は経済を否定する立場ではありませんが、経済の行き過ぎは気になります。否応なしにグローバル経済のなかに組み込まれてしまったわけです。

今の経済は実体経済化から、記号商品になっています。「グローバル化」というキーワードですら、記号商品に入っているのです。消費できれば、あるいは投資の対象であればなんでもいいから消費・浪費させてしまうという形で経済が回っています。その超高速の、濁流のような流れの中で、1人1人の人間社会や地域が迎合させられなければならない状況に私は大きな危惧をもっています。私にとってのグローバル化、1人1人にとってのグローバル化は違うはずなのに、「グローバル化」を記号化・ブランド化しているのです。

 グローバル化というのは否応なく進展してくるグローバル経済化。一方で、「なんでも経済・なんでも市場」ということに対しておかしいと思っている人たちは世界中に多くいます。その人たちがつながって、協力して協動してチャンスを広げているのだけど、そのような人は相当意識して努力して頑張らないといけません。

そういうことを意識したり試行錯誤したりする人たちのコラボレーションがうまくいくことのお手伝いが出来たらいいなと思っているからこそ、私は若い人たちと色々なこと(熟議やNPO支援など)をしているのです。

4 苫野一徳先生ご講演『グローバル化を考える~自由の相互承認とは~』

【まとめ】

「一般化のワナに陥らない」「問い方のマジックに陥らない」ことを常に意識する。

・グローバル化する世界で大切なのは、多様な人たちをお互い認め合い、「競争」というよりは「協働」していくこと。

・教育の本質は「自由の相互承認」。世界中の多様な人々と協働してゆくためにも、その感度を育む教育が大切。

→記事はこちら

5 『パネルディスカッション』

以下の3点について、ゲストのお二方からお話を伺いました。
・多様な人と共生するために私たちに必要な能力にはどのようなものがあるのか
・信頼と承認の空間をつくりだすためには具体的にどのようなものがあるのか
・多様な人と共生するために私たちが個人的にできることにはどのようなものがあるのか

→記事はこちら

6 団体紹介

NPO法人日本教育再考連盟(ROJE)

日本教育再興連盟 (ROJE : Renaissance Of Japanese Education)は、「日本の教育をよくしていきたい」という強い思いを抱く各界のエキスパートたちが、全国の教職員の方々や、保護者の方々、企業や学生たちと共に立ち上げ、活動している団体です。子どもたちの豊かな成長のために、それぞれの強みを生かして行動し、それを互いに評価しあい、連動させていきます。

7 登壇者プロフィール(敬称略、五十音順)

◆鈴木寛

1964年、兵庫県生まれ。灘高校、東京大学法学部卒業。
通商産業省入省後、参議院議員や文部科学副大臣などを経て、
現在は東京大学公共政策大学院教授、慶應大学政策学部教授。

若い世代と共に、日本の教育について日々考えている。

著書に『熟議のススメ』(講談社)、『テレビが政治をダメにした』(双葉新書)、『「熟議」で日本の教育を変える』(小学館)、『先生復活 にっぽんの先生を再生する』(アルク)などがあり、共著も多数ある。また、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」にも出演した。

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◆苫野一徳

1980年、兵庫県生まれ。早稲田大学教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。
早稲田大学教育・総合科学学術院助手などを経て、現在、熊本大学講師。

多様で異質な人たちが、どうすれば互いに了解し承認しあうことができるか、探究している。

著書に『どのような教育が「よい」教育か』(講談社選書メチエ)、『勉強するのは何のため?』(日本評論社)、 『教育の力』(講談社現代新書)、『自由はいかに可能か』(NHKブックス)があり、共著も多数。
また、NHK「ニッポンのジレンマ~僕らの救国の教育論~」にも出演した。

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