話す力・聞く力を育てるために(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

話す力・聞く力を育てるための工夫

ある研究会で、話す力・聞く力がとても育っていて「すごい!」と思ったクラスがあります。教室内の掲示をよく見ると、そのための工夫がありました。
授業10のやくそく  
1. 自分の考え
2. 思ったこと
3. にている
4. つけたし
5. 賛成
6. いい発表
7. 自分で確認
8. 意見がえ
9. まとめ
10. みんなに質問

こんな小型カードが児童の机に貼ってありました。発言の前に「つけたしなんだけど」などと、1~10のうちどれについて話すのかをはっきりさせてから、発表をしていました。

また、どの力を育てるのか指導者が明確に意識して取り組んでいました。「今日は、○番と○番を注意してやろう」などと声をかけ、話し合いの授業に臨むのだそうです。こうすることで「10のやくそく」が子どもに浸透していきます。

話す力・聞く力を育てるための発問について

これまでずっと聞き合える授業をしたいと取り組んできましたが、できませんでした。それは、発問づくりに違いがあったからなのではと気づきました。

発問には大きく二種類あると思います。一つ目は、二者択一型の発問。二つ目は、「○○の気持ちを考えてみよう」のように正解がなく、考えを深めていくような発問です。

これまで二者択一型の発問を意識して授業を作っていました。いかに相手を説得しつぶし合うか、これが子どもを動かします。対立することで授業が盛り上がるのですが、「うん」「あぁ」など共感し合う面がどうしても弱くなります。だから、聞き合える(共感しあう)授業ができなかったのではないかという仮説を立てました。

この発問づくりについて、聞きあう力が育っているクラスの先生に直接うかがったところ「二者択一型の発問はほとんどしないよ」とのことでした。やっぱり。だから、あのように共感し合う温かい授業になるのだと納得しました。

発問作りを後者に方向転換するには、とても迷います。後者は「どうしたら」「なぜだろう」という問いかけ中心になり、鋭く分析や吟味をすることには向きません。こうした曖昧な発問は、これまで徹底して排除してきました。結局のところ「自分はどっちが好きなのか?」ということに尽きると思うのですが、決めかねています。どちらも魅力があって捨てがたい。

発問の種類によって、授業態度のしつけを変えていこうかと今は考えています。前者のときには、同じ意見の仲間との連携を深めさせることに重点を置き、後者のときには、特に聞き合うことを意識して声をかけていこうと思いました。

授業の構成について

発問は二者択一型、共感・共有型の二つに分けられるものではなく、共感・共有型 → 二者択一型 のように発展していくのが望ましいと考えています。その流れは、次のようなものです。
> 子どもから問いが出て、その答えがいくつか出て、絞られていき、
> 二者択一になり、教師が今話し合っていることを確認の意味で発問する。

今、3年社会では単元の初めに、学習問題作りを取り入れています。社会科では、子どもの作る学習問題(ハテナ)が、教師の学ばせたい学習内容に近くなると感じています。つまり、子どものハテナをそのまま学習問題につなげることができます。これは、他教科(国語、算数、理科)よりも顕著です。だから有田先生がさかんに「ハテナ?」とおっしゃるのかもしれません。

「スーパーマーケットではたらく人々」では

  • 扉の向こう(バックヤード)の向こうには何があるのだろう?の問いが

「農家のしごと」では

  • 茶畑の木はどうして、きれいに並んでいるのだろう

という問いが自然と生まれました。これらは私が扱いたい学習内容と一致しました。

こうした問いを共感・共有型で話し合っていくうちに様々な考えが生まれて、二者択一型になっていくのが望ましい話し合いなのかもしれません。しかし、共感・共有型は、絞り込むまでに時間がかかります。

もしかしたら、二者択一にたどりつかないかもしれない。共感・共有型は「あれもいい、これもいい」なので論点が絞りにくく、話し合いがぼやけることがあります。参加できない低次の子が出てくる場合もあるでしょう。だからそれを防ぐために「うん」「あぁ」があるのかもしれません。今、この訓練を相当やっていますが、「うん」「あぁ」が入ると、かなり集中して話を聞くのがわかりました。

3年理科「日なたと日かげ」で「あの山の向こうから鏡で反射させた光は学校まで届くだろうか?」という学習問題を話し合いました。山の上から見える学校は豆粒のようです。

この発問は、紛れもなく二者択一型です。「うん」「あぁ」(共感・共有型の話し合い)がだいぶできてきたので、どんな聞き方をするのかな?と見ていたところ最初は、相手方の意見も「うん」「あぁ」と聞いていましたが、次第に、自分たちの仲間の意見で共感できるときや、意見変更をした子がいたときに、拍手が起きるようになりました。

「うん」「あぁ」は減っていったのですが、生活体験を話したり、仮説を立てたり、仲間とひそひそ話をしたり、相手の意見に思わず「でもさぁ」とつぶやいてしまったり頭をフル回転して話し合っている雰囲気が学級全体を包みました。それはそれでいい授業なのだと思いました。

話し合いは、共感・共有型と二者択一型の二種類があるけれども、それは、相反するものではなく発展していくものなのかもしれません。二者択一型 → 共感・共有型 という流れもありそうです。「相手チームの言いたいこと分かってあげられる?」こう尋ねたら、「うん」「そうそう」などが自然と出そうです。

話し合いのとき、教師が「今はどちらの型なのか」ということを意識して共感・共有型の話し合い二者択一型の話し合いになるよう子どもたちをし向けていけばいいのかな、と思いました。

実践して気づいたこと

  • 「うんうん、そうそう」をすると、学級全体の聞く集中力が高まる。
  • 共感・共有型は、意見の吐き出しに適している。
  • 「うんうん、そうそう」は、子どもらしい笑い微笑みを引き出せる。
  • 聞ける見本になる子と話す見本になる子がいる。そんな子をほめまくる。
  • 「うんうん、そうそう」をやりすぎると討論の焦点がぼける。何でも認めてしまうので、深まっていかない。鋭く深めるなら二者択一型。
  • 共感・共有型から、二者択一型に絞っていけるとよい。一時間の流れを、共感・共有型→二者択一型に組めたらすごいな。
  • 二者択一の討論になったら、型をはずして自由に話をさせる。
  • 授業者が、今は「うんうん、そうそう」なのか討論なのか意識するとよい。授業者が意識していると、言い方も聞き方もそちらの方に向かっていく。
  • 「発言の前につけてみよう」というカードを机上にはると効果的。

発言の前につけてみよう
1. にている
2. つけたし
3. いい発表
4. まとめる
5. みんなに質問

深めるには二者択一型ですが、あの温かい授業の雰囲気を出すには共感・共有型が適しています。「うんうん、そうそう」は合いの手を入れなくてはならないので、集中力が高まるのがわかりました。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」「学級開きルール&アイデア事典」
(いずれも明治図書2015/2、発売予定)

5 編集後記

自分が小学生だった時のことを思い返すと、ここに紹介されている「やくそく」のような誘導があると考えもまとめやすく、発言もしやすかったような気がします。本文にあるような、子どもたちが話し合いに集中する雰囲気もとてもいいなと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 安井愛弓美)

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