君は誰かのための太陽~命の大切さ、貴さを考える~(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載

されている教育実践法の一つをご紹介しています。

http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

命の大切さをさまざまな形で伝えている。学活の授業のあと、道徳でも取り上げた。

発問1:あなたが大切にしているものは何ですか。どんなものでもいいです。

・ハムスター
・飼っているカメ 
・ゲーム、カセット 
・お金
・マンガ   
・人形  
・剣玉 
・バッグ 
・ビーズ 
・家族
・友達
・命  
・地球  
・ペット

たくさんの物が出された。これを二つに分けることにした。

発問2:大切なものを二つに分けてみましょう。一つは黒でもう一つは赤で囲みます。どうやって二つに分けましたか。 

全員が〈命にかかわるもの〉と〈そうでないもの〉に分けた

理由は
・命は自分で守るものだし人がいないと生きていけないから。
・人形とかお金は買ったりもらったりできるけれど、命と家族は買ったりもらったりできないから。
・よく命はお金と代えられないというから、人や命は値段がつかない。物はどこでも売っていて何個もあるけれど命は一つしかない。
・ハムスターは一度買ったものでも、命があるから値段はつかないと思います。

発問3:世の中には値段のつくものとつかないものがあります。値段がつかないけれど大切なものは他にもまだありますか。どれも大切なものなのに値段がついていないのはなぜでしょう

・海    
・太陽    
・宇宙
・星    
・月     
・空気

などが出された。その理由について尋ねてみると

・でかすぎるしみんなのものだから。
・地球はみんなが住んでいるところ。あとは地球とか太陽にはお金がつけられない。
・月とか太陽は買おうと思う人がいても高すぎて買えないと思うし、買ったらバカみたいだから。

意見を大別すると〈みんなのものだから〉〈大きすぎて置けない〉 〈金額がつけられない〉〈買おうとする人なんていない〉であった。

発問4:最初に聞いた〈命とかかわるもの〉と同じ理由がもう一つあるのだけれど、どんな理由かわかりますか。

少し考えてから手があがった。
・ただ一つしかないものだから。
・世界に一つだけのものだから。

この言葉が出たところで少し話をした。

世の中には値段のつくものとつかないものがあります。例えば、空・海・太陽。値打ちがないからでしょうか。違うよね。ただ一つの物、たった一つだからです。一つだけのものには値段のつけようがないほど値打ちがあるんです。そんなものを「かけがえのないもの」と言います。命に値段がつけますか。つくわけがありません。もし人に値段がついていることがあったら間違いなくそれはニセモノです。君たちの命はこの世にたった一つしかありません

次にロシアの文豪のエピソードを紹介した。幼い娘をなくしたトルストイのもとを訪れた友人が「あなたには子どもがたくさんいるのだから、そう気を落とさないで下さい」と慰めた。

発問5:これを聞いてトルストイは喜んだでしょうか?

全員が〈喜ばない〉と答えた。
・他の子の命と死んだ子の命は代えられないから。

ここで先日、学活の授業で使ったお母さんからの手紙を配り、もう一度読むことにした。二度目であっても子どもたちは真剣な眼差しで手紙を読み返していた。「読んでもいい」という3人の子の手紙をみんなの前で読ませてもらった。他の子も自分と同じように大切にされていることが分かったようだ。

発問6:( )の中にはどんな言葉が入るでしょうか?

ここで「君は誰かのための太陽」という詩を読んで、空欄の(  )を埋める言葉を考えた。どれも素敵な言葉だった。

・生まれてきた  
・人、自分   
・元気、勇気
・跡継ぎ     
・自分、命

生徒の感想

・人と物は比べ物にならないことが分かった。それに命も大切。一人一人違う命を持っている。生まれないと思っていたけれど苦労してきたんだなぁと思った。生まれるということはすごいことだなと思った。

・自分も誰かの役に立っていると分かった。なんかハラハラドキドキして楽しかった。手紙を読んだのが2回目だったけれど泣けた。命はかけがえのないと分かった。

・「君は誰かのための太陽」で誰かのための光ということが分かった。命とかは値段がつかないんだなぁと思った。

・自分がお母さんたちにとってどんな存在か分かったような気がします。たった一人の自分だしたった一つの命だから、同じ物・人はいないからだと思いました。最後の詩はすごくいい詩だと思いました。お母さんが 私を産むように頑張ってくれてうれしかったです。

3 資料

トルストイの話

「大きなかぶ」や「イワンの馬鹿」で知られるロシアの文豪トルストイには、たくさんの子どもがいました。3女ワルワーラを早産でなくしたとき「あなたはまだほかにもお子さんがいらっしゃるのだから、お気を落とされぬように」とお悔やみに来た友人がなぐさめました。トルストイにはこのとき、7人の子どもがいたのです。
これを聞いたトルストイは「何をおっしゃるのです。どうしてワルワーラの命を他の子の命と取り替えることができるでしょうか。」と涙を流したと言います。トルストイには全部で13人の子どもがいて、6人の子どもが死んでしまいました。命はただ一つ。他の何とも誰とも取り替えることのできないのです。

「君は 誰かのための太陽」毛里 武

世の中には値段のつくものとつかないものがある。
例えば、空、海、太陽、夜空の星。
どれも値段がついていない。
値打ちがないからか?

そうじゃない。
それは、ただ一つのもの、かけがえのないもの。
命に値段がつくか?
君に値段がつけられるか?
つくわけがない。
かけがえのない人、ただ一人の人なんだ。

君は
誰かのための( 太陽 )
誰かのための( 光  )

君は
誰かに照らされて光り輝き
誰かのために輝いている。

4 プロフィール

静岡県教育サークル

1984年創立。

「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない

」これがサークルの主な柱です。

最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」

という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってよ

り価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

5 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

6 編集後記

「命」について考えるときは否応無しにある種の重圧を感じます。
重圧を感じるのは、決して楽しいことではないので、日常生活ではそれほど考えないようにしていることでしょう。道徳の時間がある意義は、普段考えないようにしていることに向き合うこと、それ自体に意味があるのではないでしょうか。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 細木和樹)

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