高校で社会科の先生を1年間した後、小学校の先生になった関西の先生(経験年数4年)に、高校と小学校の授業や子どもとの関わりの違いについてお話を伺いました。(H28年、5月)
小学生と高校生は年齢が10歳くらい違いますが、似ているところも少なくないようです。
校種選びの1つの参考になればと思います。
初めに授業について教えて下さい。準備はどちらが大変だとかありますか?
専門性が求められる高校
高校では、自分の授業がない空き時間に授業準備ができます。小学校と比べて途中で電話や会議などがないので、落ち着いて準備に取り組めました。大学入試の参考書などを見ながら、まずは自分自身が教科書の内容を正しく理解してから授業を考えました。
小学校では、放課後に教科書指導書や周りの先生方の実践を聞いたりしながら授業を考えました。難しい内容ではないので準備が簡単に思えますが、実際に子どもがどのような思考やつまずきをするのかを予想することが、とても大切になります。「教師の自分ができるから、子どもも同じようにできるだろう」と考えてはいけません。
教科の専門性という意味では、高校の授業では、大学で学んできた自分の専門が存分に生かせると思います。小学校の授業にも専門の知識や考え方は必要ですが、それをそのまま授業に生かすのは少し難しい気がします。
授業中の様子はどうでしょうか?
小学生も高校生も楽しめる授業がしたい
高校で一番難しかったのは、生徒を授業にのせることでした。小学校では、音読で立ったり座ったりする活動を入れたり、写真や雑談をしても子どもの反応が良いのですが、高校生は小学生ほどではありませんでした。授業中の発言も、年齢が上がるにつれて少なくなってきます。周りが気になってくるのでしょうか、全体よりもグループでの話し合いの方が取り組みやすいようでした。
しかし、高校生も小学生も、学習内容に関する豆知識みたいなものにはとても興味がありました。例えば、日本史の縄文・弥生時代の動機付けの場面で「昔、大人になるためには、あることをしなければなりませんでした。それは何でしょう?」という問題を出すと、高校生でも「火に突っ込む」「野獣と戦う」など、自由な発想で楽しそうに発言していました。高校の授業づくりでも、小学校の先生向けのネタ本などを参考にしていました。勉強を楽しいと思ってもらいたいので、子どもが興味を持ちそうな引き出しをたくさん持っておきたいです。自分自身が教科書には載っていない裏話みたいなのが子どもの頃から好きだったので、そのような授業準備をしている時はとても楽しいです。
また、こちらの授業がつまらない時の反応も似ていて、子どもの顔を見れば分かります。どちらも、とても眠そうな顔になるからです。そうなると雑談でリフレッシュしたりしますが、全体の3分の1くらいが眠そうな状態になると焦りで冷や汗が出ることもありますね。
授業でクラスづくり
高校の授業ではクラスづくりの視点が小学校と比べて少なかったです。授業内容をしっかり定着させることを目標にしていたので、授業で生徒の人間関係をつくっていくというところまで目が行き届いていませんでした。
一方、小学校の授業では内容を正しく教えることはもちろんですが、私の場合は、それよりも「授業を通してクラスをつくっていく」という側面が強いように思います。例えば、漢字テストや都道府県テストをする時にクラスみんなで満点を目指したり、授業中には分からない問題を教え合ったりします。「勉強は自分だけではなく、クラスみんなで成長するためにやっているんだ」という思いを大事にしています。今思うと、高校でもそのような視点を大切にしたかったなと思います。
授業以外の子どもとの関わり方の違いについては、いかがでしょうか?
縦と横の関係
私は大卒の初任で高校に勤務したので、高校生とは年齢が近かったです。高校3年生となると大学の後輩と変わらない年齢なので、こちらとしても少し友だち感覚で関わっていた部分がありました。そうなると生徒も先生に対して友だち感覚で接してきます。親しみやすいということで、いろんな話をしてくれますが、授業のルールや最低限のマナーを守ることを徹底しないと、なぁなぁな関係になってしまうので気をつけないといけないと思います。
小学校では先生はクラス集団のリーダーという意識が強いので、縦の関係をはっきりさせています。もちろん子どもたちと一緒に遊ぶなどの横の関係も大事にしていますが、私の中では縦の関係をより大切にしています。特に年度初めは私がボスですね。(笑)
将来の話
高校では生徒から「先生はなんで学校の先生になったんですか?」と、働くことや社会について聞かれることがありました。私は、大学時代にボランティアやアルバイトで人に教えることの楽しさを感じたことや、学生時代と社会人になってのギャップを伝えたり、将来について深い話ができました。
小学校で子どもの夢として多いのは「ユーチューバーになりたい」「芸能人になってMC週に5,6本やりたい」「習い事でプロになりたい」など、自分の好きなことを楽しく仕事にしたいという思いが、高校生と比べて強いと思います。私も子どもの頃はそうでしたが、仕事と言うと自分の身の回りのものしか知らない子が多いです。子どもが今持っている夢を応援しつつ、他にも社会にはたくさんの仕事があるということも伝えていきたいなと思っています。
先生を目指している方にメッセージをお願いします
現在、小学校の先生をしていて一番楽しいのは、子どもやクラスの成長を一緒に喜べることです。4月に新しいクラスが始まり、そこから様々な困難や苦労を経験しながらも、少しずつ前に進んでいくことに、先生という仕事のやり甲斐を感じています。
校務や会議など事務的な仕事が多いのは確かですが、私は子どもの事を考えている時間が一番幸せです。校種に関わらず、子どもが好きだったり、子どもの成長を本気で考えられるということが、先生にとってすごく大切なことなんじゃないかなと思います。自分の中にある子どもに伝えたい思いを大事にして下さい。
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