経験年数3年の小学校の先生に、学校の先生になろうと思ったきっかけや校種選びの迷い、実際に教師になってぶつかった壁や仕事のやり甲斐などについてお話を伺いました。
先生は何をする仕事なのか、先生が大切にしている思いが伝わってきます。
先生になろうと思ったきっかけはありますか?
私に自信をくれた先生
私は小学生の頃から、友だちにドッキリをしかけたり、人を笑わせたりすることが好きでした。授業中もふざけて周りに迷惑をかけてしまうこともありました。もちろん先生は厳しく叱ります。しかし、その時はすぐにやめますが、何日かたつと、また同じように叱られます。
そんな私は、「自分は、勉強はしっかりやっているが、たまにふざけてしまう」という前向きな自己認識でしたが、周りからは「いつもふざけて怒られているやんちゃな子」とみられていました。一緒にふざけていた友だちと合わせて「三馬鹿トリオ」などと呼ばれたことありました。
周りからそのように見られていた私が小学5年生の修了式の日、担任の先生はクラスの全員に手紙を書いてくださりました。私が頂いた手紙の中に、次のような内容の言葉がありました。
「あなたはよくふざけているけど、ちゃんと授業内容を理解して、教科書の問題もしっかり解けていました。実は真面目な子なんだと分かり、先生はビックリしていました。」
その手紙を読んだ時、「僕がやることはちゃんとやっていること、先生は分かってくれてないと思っていたけど、しっかりみてくれてたんだ」と、自分の頑張りや表には出さない面を認めてもらえたことがとても嬉しかったです。
私に「学校の先生はこんなにも人を勇気づけられるのだ」と思わせたこの出来事が、教育の道を志そうと思った初めのきっかけです。その手紙は今でも大切に保管して、つらい時や節目に読み返し、自分の大きな支えになっています。
このエピソードは、採用試験の志望理由にも書きました。試験合格後に行われた教育長面接では「その先生は、本当に今でもあなたの支えになっているのですか?」と聞かれましたが、胸を張って「はい!」と答えました。
小学校や中高など、校種選びで迷ったことはありませんか?
とても迷いました。私は「学校の先生になって、人を勇気づけられるようになりたい」という思いで大学の教育学部に進みましたが、特に校種にこだわっていませんでした。
「小学校は全教科の授業ができて、子どもと関わる時間が長い」
「中高は自分の専門で授業ができて、部活動でも生徒と関わり成長のサポートができる」
など、それぞれに魅力があります。あれこれと迷う中で、大学では小中高の教員免許を取得しましたが、1つに決めるのはとても難しかったです。
大学3年で小学校、4年で中学の教育実習に行き、本当にそれぞれの良さがあるのだと実感しました。そして、この実感を踏まえて、「なぜ先生になりたいのか」「先生になって何がしたいのか」を考え続けました。
理屈ではいろんな理由がありますが、いつも頭に浮かんだのは先ほどお話した、小学校5年生の担任の先生でした。あの先生との出会いが自分を変えた、先生がいたから今の自分がある。この思いはこれからもずっとなくなりません。「こんなに鮮明に自分のなりたい先生のイメージがあるのだから、自分も小学校で恩師に近づけるようにがんばろう。」これが、私が小学校を志望した理由です。
その先生とは小学校を卒業してからも機会をつくってお話させて頂いていますが、お会いする度に「あの時はとても大変だったけど、こんなにしっかりした人になって、本当に嬉しいよ」と言ってくださります。先生から頂いた1つ1つの言葉を大切にしていきたいです。
実際に小学校の先生になって、いかがですか?
「子どもと一緒に学校を楽しみ、自信や勇気を与えられる先生になりたい」
そんな思いで小学校の先生になりましたが、1年目でうまくいったことがほとんど思い出せません。授業や児童指導、校務分掌など、目の前の仕事をこなすのが精一杯で、学習の見通しを持ったり、先生方と協力して組織のメンバーとして動くということがまったくできませんでした。先生の仕事が、思っていたよりも多様で、いろいろな能力が求められるのだと痛感しました。日々の忙しさに追われ、子どもをしっかりみることができず、授業も学級経営もめちゃくちゃな1年でした。
1年目の反省から、2年目からは、自分のできること・できないことを分けて、できることにしっかり取り組むことを心がけました。私は、学年の国語・算数・体育の担当(教科担任ではなく、学年の授業計画を立てる)になったので、まずはその教科をしっかり勉強して、子どもの力がつく楽しい授業に近づけるように努力しました。「何のために、どこに力を入れるのか」を自分の中にはっきり持てたことで、任されたことには責任を持って取り組み、他の先生にお願いするところは分担して頂き、仕事全体をスムーズに行うことができるようになりました。
子どもの力を引き出す
学習面では、その子が得意なことや好きなことを学習内容に関連させて授業を考えていきました。その授業がきっかけになり、家庭でも自主的に勉強したり、休み時間になっても課題に取り組んだりする姿をみると、とても嬉しいです。そして、一人一人が熱中していることをクラス全体で共有することで、「自分の頑張りが友だちの力になっている」「自分も頑張ろう」というプラスのエネルギーの輪が広がっていきました。
人間関係においては、「学校にいて安心する」「理由は分からないけど、なんだか居心地が良い」そんな風に思えるような学級経営を心がけました。
もちろん、うまくいかず悔しかったり、悲しかったりすることもたくさんあります。しかし、そんな時に誰を責めるでもなく、「子どもは私が想像もできない力を持っている。その力が発揮される引き金となれるよう、自分も学び続けていく」という思いを大切にしています。私自身が先生に成長を信じてもらえたように、私も子どもたちの可能性を信じ、一緒に実現していきたいです。
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